アクティブ・ラーニング(協調学習)で21世紀型能力を育む~知識構成型ジグソー法~(飯塚市立飯塚小学校)

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目次

1 はじめに

平成29年1月27日(金)に福岡県飯塚市立飯塚小学校にて『「21世紀能力」を育む授業の創造~ICTを活用したアクティブ・ラーニング(協調学習)の工夫を通して~』というテーマのもと、公開研究発表会が行われました。本記事では、6年生担任の桑岡貴志先生による知識構成型ジグソー法を用いた協調学習の授業実践を紹介します。

*飯塚小学校は、東京大学 大学発教育支援コンソーシアム推進機構(CoREF)と連携し、「新しい学びプロジェクト」という「協調学習」を引き起こす授業づくりのための研究連携事業を推進しています。
 知識構成型ジグソー法やCoREFの詳細は、こちらを参照して下さい。

2 授業案

3 本時の展開

1、〈個人(事前)〉

本時の課題に対する自分の考えを書きます。学習の最後に書く自分の考えと比べることで学びの変化や深まりを自覚できるようにします。

課題「飯塚市はなぜ、いろいろな教育の取組を導入しようとしているのか」

2、〈エキスパート活動〉

資料をもとに、課題の答えを出すための飯塚市の取組について考えます。同じ資料を読み合うグループを作り、その資料に書かれた内容や意味を話し合い、グループで理解を深めます。

エキスパート活動の資料

本時は下のA、B、Cの3つの資料に分かれて、自分の担当資料について話し合い、理解を深めます。(各項目「 」内はエキスパート活動で期待する解の要素)

A:情報化 ○電子黒板・タブレット導入

「情報社会に対応する力を身に付ける」「世界に早く追いつく」

B:グローバル化 ○オンライン英会話 ○サニーベール市への海外派遣 

「英語の力を身に付ける」 「外国人とのコミュニケーション」

C:21世紀型能力 ○知識構成型ジグソー法による協調学習

「他の人と新たな考えをつくる」 「他の人と話し合うことや、協力して答えを考える力を身に付ける」

活動の様子

子どもたちは資料が書かれたラミネートシートを使用し、気付いたことなどを書き込んだり消したりしながら頭を寄せ合って話し合いました。

個人メモ

エキスパート活動での話し合いの最後に、次のジグソー活動で他のメンバーにグループで考えたことを説明するため、考えを個人ワークシートに記入します。

移動

*ジグソー学習のため、自分の班へ移動します。

3、〈ジグソー活動〉

課題に対する答えを話し合い、班でまとめます。違う資料を読んだ人が一人ずついる新しいグループに組み替え、エキスパート活動でわかってきた内容を説明し合います。他のメンバーから他の資料についての説明を聞き、自分が担当した資料との関連を考える中で、理解を深めていきます。


(A,B,Cの資料を持ち寄り話し合う)

6班の話し合い

3つの視点の共通点や相違点を考える手立てとしてYチャートを用いています。

(それぞれがエキスパート活動で考えたことを書き出し説明する)

(それぞれの考えの共通点を話し合い、答えの中心を「新しい社会に通用するように」と決める)

(それぞれの考えのテーマを設定する)写真赤枠

(クロストークへ備え、グループ内で発表練習する)

「3つの資料に共通するキーワードを考えよう」

「全部が将来につながっている。将来困らないため。将来の日本を良くするため。将来に必要な人を育てるため」

「発表しやすくするために、それぞれのグループの主題(テーマ)を書いていこう」

このような話し合いを通して、個別の知識の関連付けや構造化が進んでいきました。対話による深い学びの実現だと言えます。

4、〈クロストーク〉

各班の考えを聴き合います。お互いの答えと根拠を検討し、その違いを通して、一人ひとりが自分なりのまとめ方を吟味するチャンスが得られ、一人ひとりが納得する過程が生まれます。

初めの班の発表で「新しい社会に通用」というキーワードが出てきます。その後、関連している考えの班が「世界で生きていく」「将来のため」と考えを広げ、「適応から創造へ」と考えをまとめていきます。
 このクロストークでも、自分だけでは気付かなかった新しい知識の関連に気付く場になります。

5、〈個人(事後)〉

本時の課題に対する自分の考えをもう一度書きます。3つの活動を通して、課題に対する考えの変化や授業の感想をまとめます。

ワークシートには次のような記述がありました。

・問いへの答え

「世界との交流や機械などを使って意見を出し合えること。そして、グループワークで伝えることのできる力を身に付けて、世界・将来社会で生きていける力を付けて、もっとより良い町にしてほしいという意味もあると思う」

・学習の感想

「新しい社会で生きていけるように、人の考えを聞くだけでなく、自分の考えを人に教えたりもしたい」

「世界の文化を知るためには、先生一人だけでなく、個人で学習した方がより身に付く」

子どもたちは飯塚市の教育の取組の意味を考えることで、社会や将来といった大きな話だけでなく、自分の考えを人に伝える姿勢や自ら知識を獲得する態度といった「日々、どのように学びに向かうか」についても考えを深めた様子がみとれます。

板書

補助資料

4 インタビュー

協調学習の実践について、石井幸子校長と授業者の桑岡先生にお話を伺うことができました。

——協調学習の特長を教えてください。

石井校長
 ジグソー法は、子ども同士の関わりにより学びが深まる学習方法です。1時間の授業で、「エキスパート活動・ジグソー活動・クロストーク」の3つの場面で、友達と一緒に考えます。それぞれの場面で自分の考えを伝え、友達の考えを聞くことができるので、エキスパートでの思考がジグソーで深まり、クロストークでさらに深まるといった学習展開になっています。

また、学習の深まりだけでなく、初めは分からなかったけれど友達との対話を通して段々と自分の考えを持つことができるといった、個々のペースで理解を進めていけることも特長です。

——協調学習の授業をしていて難しいと感じること、良かったと思うことを教えて下さい。

桑岡先生
 課題の設定と、それを深めるための資料の用意が難しかったです。題材を通してどんな力を付けるのか、3つの資料をどのように統合すれば考えが深まるのか、これらをいつも考えながら授業をつくっています。

良かった点は、普段の授業でも子ども同士が「分からない」「これってどういうこと?」と聴き合える雰囲気になったことです。また、進んで高いレベルに挑戦しようという意欲の高まりもみられます。こちらの課題設定と適切な資料提示により、少しずつそのような子が増えています。

——協調学習をしていて嬉しい時はありますか。

桑岡先生
 最も嬉しいのは、子どもからこちらの予想を越えた考え方が出てきた時です。提示する課題や資料によっては、子どもたちは私の想像以上の力を発揮し、大人を越えていく感覚があります。

また、子どもと大人の考え方の違いに触れられることも楽しみの1つです。知識を伝えるのは先生でなくても出来ます。授業では「先生も一緒に考える。みんなと新しい考えを生み出していきたい」という気持ちを大事にしています。

5 関連資料

飯塚市・飯塚小学校の記事

21世紀の社会と教育を考える~入試、働き方、職業が変わる~(平成28年度 飯塚市学力向上フォーラム)

校長・教育委員会の学校改革~隂山メソッドの取組~

東京大学 大学発教育支援コンソーシアム推進機構(CoREF)の記事

知識構成型ジグソー法によるアクティブラーニングの実践

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