作文に集中させるための対応(岡篤先生)

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目次

1 はじめに

本記事は、岡篤先生のメルマガ「 教師の基礎技術~指導と対応~ 348号~353号」から引用・加筆させていただいたものです。

岡先生が、作文の進まない子どもへの指導を通して、作業が進まない原因を明確化し、対応を行われたことにより、作業効率が改善された事例をご紹介します。

岡篤先生のメルマガはこちらを参照ください。→http://archive.mag2.com/0001346435/index.htm

2 実践内容

■校外学習の新聞作り

前回の特別支援学級担任のときのことです。1人の男の子の作文指導をしていました。作文というより、正確には新聞の記事です。校外学習に入ったときのことを新聞にまとめる学習です。

彼は書けないことはないのですが、なかなか進みません。すぐに集中が途切れて、ぼんやりしたり他のことを話し出す。書くことが決まらない癖に、こちらが写真やパンフレットを見せながら「これはどう?」などと薦めても、「それは、だめ。」「書かない。」などと簡単に断るのです。

■1つ目の原因

1つ目は、他の子の行動が気になって意識がそちらにいってしまう、ということでした。そして、自分の課題に気持ちをもどすことがなかなかできないという特性がそれをますます助長しているという面がありました。普通よりも、気がそれやすく、一度それるとなかなか元にもどりにくいという特徴が彼にはありました。他の子が図工の作品を作っているのを見て、その子にしゃべりかけました。もう1人の特別支援担当が図工の指導をしているので、私は彼につきっきりで作文指導をしています。それなのに、急に違う話をし出すのです。いくら「集中しろ」「他のことは気にするな」といっても、彼にとっては大変難しいことです。いずれ、できるようになることを目指すべきかもしれません。

■1つ目の原因に対する対応

彼が他のことに気を取られずに集中できるようになるのを待っていては、当面の新聞作りにはとても間に合いません。幸い、特別支援学級には部屋が2つあります。他の子が別のことをする場合には、もう1つの部屋を使うことにしました。

それまでも、その部屋を使うことはありました。それでも、「集中できないという特徴があるから、部屋を別にする」という明確な意識が私にはありませんでした。だから、部屋を別にするときもあれば、しないときもあるという中途半端なことをしていたわけです。

■2つ目の原因

2つ目は、ひらがなが定着していないことです。1つ目は、周りが気になることでした。ときどき、さっとひらがなが思うい浮かばないことがあります。それを思い出しているうちに他のことが目に付いたり、余計なことをしゃべりだしたりしているという面もありました。いつも書けないなら当然書けるように練習させることを考えたでしょう。作文も口頭で言わせた後、私が書いてそれを写させるということも試したはずです。しかし、彼の場合、自分で考えてスムーズに書くことができるときもあるので、つい、ひらがなで詰まっているときはその場で教えて終わりということになってしまっていました。

■2つ目の原因に対する対応

本来は、ひらがながスムーズに出てくるようにならなくては困ります。そのための練習も考える必要があります。しかし、当面の新聞作りという課題を考えると、ひらがな一覧を常に机の上に出しておけばよいだけです。

これも、私の意識がはっきりしていなかったため、その子はひらがな一覧の下敷きを持っているし、特別支援学級にも何枚もその表があるのに、きちんと使えていなかったということです。

■3つ目の原因

新聞作りがスムーズに進まない理由の最後は、「書きたいことしか書きたくない」ということでした。、彼の場合は、一応話は聞くものの、自分が書きたいと思った物でない場合は、あっさりと「書かない」「それはだめだ」と拒絶してしまいます。かといって、自分が書きたい物が明確になっているかというと、そうでもないので、なかなか進みないというわけです。

■3つ目の原因に対する対応

「書きたいと思っていることは何か?」ということを表情や返事などから探ることにしてみたのです。そして、反応があったことについて詳しくやりとりし、そこで「じゃあ、これを書こう」といえば、素直に書き始めたのです。こちらが意図的に、書きたいことを探るようなやりとりをすれば、比較的スムーズに書き進むということがわかりました。

■対応成功

3つの原因が明確になり、その対策もきちんと決めて、次の新聞作りの時間に臨みました。すると、拍子抜けするほどスムーズに記事が進んでいきます。原因への対応が成功したわけです。しかし、新聞作りはスムーズに進むようになりましたが、改めて考えてみるとこの間、彼の力がついたわけではないことに気づきます。環境を整えたり、こちらからの働きかけの方法を変えたりしたことによって、新聞作りがスムーズに進むようになったわけです。もちろん、全員の課題である新聞ができたことは重要です。さらに、このペースで新聞が今後もできることで少しずつ書く力がついていくことは期待できます。

3 執筆者プロフィール

岡 篤(おか あつし)先生
 1964年生まれ。神戸市立小学校教諭。「学力の基礎をきたえどの子も伸ばす研究会(略称学力研)」会員。硬筆書写と漢字、俳句の実践に力を入れている。

4 書籍のご紹介

『読み書き計算を豊かな学力へ』2000年

『書きの力を確実につける』2002年

『これならできる!漢字指導法』2002年

『字源・さかのぼりくり返しの漢字指導法』2008年

『教室俳句で言語活動を活性化する』2010年

5 編集後記 

当記事中では作文指導での事例でしたが、子どもに指導を行う際、できないあるいは不得手である原因を明確化すると子ども自身の能力の問題だけではなく、周辺環境などの要素が影響を与えている場合が存在することがこの記事からわかります。授業における指導に限らず、日頃から子どもの特性に気をかけながらアプローチを行うことが子どもの可能性を最大限に引き出すのではないかと感じました。
(文責・編集 EDUPEDIA編集部 長瀬加奈子)

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