1年生に書き方の指導をするには(岡篤先生)

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作成者:福山 浩平 (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

本記事は、岡篤先生のメルマガ「教師の基礎技術~一年生は超スモールステップで~103号~108号」から引用・加筆させていただいたものです。
書き方を指導するうえで効果的な3つの事柄について紹介しています。
姿勢はもちろん、持ち方の指導でも様々な工夫が紹介されています。
岡篤先生のメルマガはこちらを参照ください。→http://archive.mag2.com/0001346435/index.htm

2 実践内容

良い姿勢の指導

指導がなければ、ふつう姿勢は悪いものです。特に1年生は、体力的にも心理的にも、正しい姿勢を維持しているということには慣れていない場合がほとんどです。それでも、最初のうちに姿勢について説明し、意識を持たせればある程度は姿勢を保とうという気持ちは1年生なりに生まれるものです。ところが、ときどき全く正しい姿勢が維持できない子がいます。そういう子は、10回、20回いったくらいでは、直りません。体も心も正しい姿勢を続けるだけの力がまだ育っていないと考える必要があるでしょう。私は、こういったときに、「半年かけて育てる」という目安を持っています。それくらいの覚悟と根気がないと、根本的な部分については、なかなか子どもを変えることは難しいでしょう。

■「腰骨を立てる」という感覚

森信三という教育学者の立腰教育という主張があります。「腰骨を立てる」という考えです。それは、なんとなく座ったときは、たいてい腰の上のあたりが後ろにやや曲がっています。それをぐっと前に押し出すような感覚で背骨を伸ばすとこの部分がまっすぐになります。この状態が「腰骨を立てる」ということと私は思っています。この姿勢になると、子どもの両肩に私が手を乗せて上から押しても姿勢は崩れません。猫背になっていれば前に崩れ、左に下がっていればぐにゃっと左に曲がってしまいます。それが、腰骨が立っていると、ぐっと重さを支えることができます。

■良い姿勢を継続させる経験

これができると私は全員で瞑想をするように指示します。腰骨を上記のように立て、両足裏を床につけ、手は膝に置き、目をつむらせます。ふだん集中できない子は、こういうときに、わざと笑ったり、他の子に話しかけて雰囲気を崩そうとします。しかし、それに取り合わず、静かに姿勢を維持するようにいいます。「集中していると遠くの音が聞こえるようになりますよ。」ということもあります。本当にそれまで気づかなかった、遠くで鳴いている鳥の声や別の階の教室の音が聞こえることに気づくはずです。初めは10秒もすると、すぐに足の裏が浮いてしまいます。それがくり返しているうちに、徐々に1分、2分と姿勢が維持できるようになります。もちろん、これが授業中の姿勢の改善と直結するわけではありません。しかし、よい姿勢を維持するという経験は有効なはずです。

持ち方の指導

鉛筆の持ち方という問題もあります。持ち方の指導は簡単ではありません。いや、正しい持ち方を教えるだけなら、難しくはありませんが、正しい持ち方を習慣にするところまでを考えると、とても困難な指導ということになります。1年生の教科書などには、正しい姿勢と持ち方の絵や写真がよくのっています。「こんなふうにしなさい。」では、もちろんだめです。自分の持ち方がどうなっているのかも分からない子がたくさんいます。大人だってそうです。具体的に、

  • 人差し指の先が鉛筆にふれるように
  • 中指が鉛筆の上に上がって人差し指と並ばないように。
  • 人差し指の第2関節がとがらないように。

といったようなことを示しながら、確認しながら進めていく必要があります。これで正しい持ち方ができたとしても、まだまだ先は長い道のりです。

■正しい持ち方の指導~素振り編~

次は、正しい持ち方で書く、という段階があります。仮に正しい持ち方ができたとしても、いざ字を書き出したら元の癖のある持ち方にもどってしまうというのは、ごく普通のことです。例えば、正しい持ち方を意識して書いたとしても、親指の第一関節が伸びたままという場合があります。これでは、不自然に鉛筆をずらしながら書くことになってしまいます。この段階の練習として、実際に字や線を書く前に、空中に鉛筆で書かせるという動作が有効です。

癖を変える意味

鉛筆の持ち方は、ほとんどの子に癖があります。ほとんどの子にとって課題ということになります。最近は基礎基本が言われるようになり、鉛筆の持ち方が話題になることも増えました。しかし実際に指導をして子どもの持ち方を変えた人が増えたというわけではありません。
担任以外の人があるクラスを見て、「このクラスは持ち方も全然出来ていない」といようなことを言っていると

  • 先生は、持ち方の指導をされていたんですか?
  • 子どもは変わりましたか?
  • 子どもは先生が言わないときでも正しい持ち方を続けていましたか?

といったことを聞くと、

  • 習慣は変わらなかったけど、目があったら持ち方をさっと直すようにはなった。
  • 担任の時は、これほど持ち方が悪くなかったからそんなに言う必要がなかった。

といった返事がほとんどです。つまり、指導しきった人はほとんどいません。
「正しい持ち方を教えた。」
「くり返し、言った。」
「いろいろ工夫して指導した。」
ということだけでも、たいへんで価値があることと考えます。しかし「正しい持ち方をするように習慣を変えた」といえるようになるのは、はるかに、大変な道のりです。

■正しい持ち方で書けるように

「正しい持ち方を教える」だけでは、持ち方の癖を直すことにはなりません。まずは、正しい持ち方で実際に書くことができるか、抵抗が少なくなっているか、ということを観察する必要があります。すると、じっと持っているときは正しく持てているのに、動かした途端に元の癖のある動きに戻ったり、不自然なぎこちない動きになったりする子がいることに気がつきました。

持ち方の指導~親指の動き編~

そこで、子ども達が鉛筆を動かしている様子をビデオで撮影してみることにしました。せっかく正しい持ち方をして、やる気もあるのに、うまく動かせないという子に注目して再生しました。すぐに気がついたのは、この子は、親指の第一関節が伸びたままになっているということでした。だから、鉛筆がスムーズに動くはずはなく、ぎこちない動きになってしまっていたのです。それでも、「正しい持ち方をしよう。」という気持ちはあるので、無理に鉛筆を転がすように動かしているのでした。

■個々に応じた指導

この子には、直接「○○さん、親指曲げたら、うまく動くよ。」と指導をしました。また、特別な練習も考えました。何も持たせずに、人差し指先の左側に、親指の先をつけた状態(半円を作るようなイメージ)を作らせます。そして、机の上に人差し指の先で字を書かせるのです。人差し指と親指を「絶対、はなさないように」というと自然と親指の第一関節を曲げて動かしていました。しばらくは、「親指、曲げて。」という指摘を続けましたが、1ヶ月もすると言う必要がなくなりました。

持ち方を直す気がない子への指導

持ち方の難しいところは、鉛筆を持つ時間が書写の時間だけではないということです。いくら教師が目を光らせているときだけ正しい持ち方をしても、それよりも遙かに多くの時間が子どもの意志に任されるわけです。そのとき、正しい持ち方が習慣になっているか、「正しい持ち方をしよう」という気持ちがなければ、元の持ち方になってしまいます。さて、そうなると子どもをいかにその気にさせるかということが他の実践以上に重要になってきます。

■正しく持たざるをえない、正しく持ちたくなる方法

どれだけ教えても、練習させても、こちらかの働きかけだけではどうしようもない子がいることを感じました。そこで最初に思いついたのは、小学生の娘が曇っている窓ガラスに字を書いている様子を見たときです。こういうとき、当然人差し指の先で書きます。この人差し指の先で書く感覚は正しい持ち方につながるのではないでしょうか。自分でも色々試してみると、人差し指の先の左側に親指の先をそえるようにして、窓ガラスに書くとそれだけでもかなり正しい持ち方に近づくことに気づきました。これに、親指の第一関節を動かすことを意識させればかなりのことができそうです。

■万年筆を使う指導法

万年筆をクラスの子ども達に買い与えるわけにもいかないので100円ショップで10本買って、教室で使わせてみることにしました。もちろん、さんざんもったいぶって、「持ち方がちゃんと出来ない子には貸せません。」と強調しました。

■万年筆を使いたいから!

教師が持ち方をいうときだけ、しぶしぶ正しい持ち方に変えるものの、気持ちのうえでは「めんどくさい」と感じている子は、そのままでは絶対に元のくせはなおりません。そんな子がどうしたら、「正しい持ち方をしたい」「正しい持ち方をせざるをえない」ということになるかを考え、万年筆を使わせることにしました。「持ち方が悪い人は、先をこわすので、貸せません。」と宣言しました。その上で、「どんなものかをわかるために、今日だけ特別に全員に貸します。」といい、渡しました。すぐに、「これ、インク無い!」という声が何人か出ました。ペン先を逆にして持っていたり、立てすぎていたりしたためにインクが出ないのです。その日からときどき、正しい持ち方が常にできている子に万年筆を貸しました。それまでは、こちらがいったときだけいやいや持ち方を変えていた子も、「先生がいったときだけじゃ、できたことにならないよ。」というと、自分で意識して、直そうという姿勢が見られました。 

■筆ペンを使った指導

その後、筆ペンも導入しました。元々、俳句や視写などを筆ペンで書かせると子どもは興味を持って集中し、作品としても味わいが出ることは感じていました。1年生には難しいだろうと思い込んでいましたが万年筆を使わせたことで、「同じ発想で筆ペンも使わせてみよう。」と思いました。「万年筆より、難しいです。」と、またさんざんもったいぶって試し書きをさせると、これも大喜びです。中に、力を入れて書く子がいました。筆の先がばらばらになり、取れてしまいました。本人も周りの子も息をのんで私の顔を見ています。しかし、これも、ある程度は予想していました。「今日は、試しに使ったので、仕方ありません。ただ、持ち方が悪い人には貸せないことはわかりましたね。」と強調しました。もちろん、最後には全員に使わせるつもりでした。たぬきの糸車のまとめとして、自分の好きな文を筆ペンで視写し、イラストも加えて作品にしました。鉛筆やマジックとは違った良さが出ました。

3 執筆者プロフィール

岡 篤(おか あつし)先生
1964年生まれ。神戸市立小学校教諭。「学力の基礎をきたえどの子も伸ばす研究会(略称学力研)」会員。硬筆書写と漢字、俳句の実践に力を入れている。(2017年5月3日時点のものです)

4 書籍のご紹介

『読み書き計算を豊かな学力へ』2000年

『書きの力を確実につける』2002年

『これならできる!漢字指導法』2002年

『字源・さかのぼりくり返しの漢字指導法』2008年

『教室俳句で言語活動を活性化する』2010年

5 編集後記 

実際に自分も万年筆や筆ペンを使ってみたいという気持ちがとてもありました。
子どもはそのようなものを使いたがると思うので是非実践してみてはいかがでしょうか。

(文責・編集 EDUPEDIA編集部 福山浩平)

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