発達の階段~発達の過程はどの子も同じ~②(岡篤先生)

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作成者:井上 渚沙 (Edupedia編集部)さん

1  はじめに

本記事は、岡篤先生のメルマガ「教師の基礎技術~子供理解~発達の段階~(654号~660号)」から引用・加筆させていただいたものです。
 漢字学習をすることが苦手な生徒さんはいらっしゃいませんか?そんな時どんな方法で漢字学習に取り組ませせているでしょう。今回は岡篤先生による、生徒に合わせた「超スモールステップ」の実践内容についてご紹介させていただきます。
 岡篤先生のメルマガはこちらを参照ください。→http://archive.mag2.com/0001346435/index.htm

2 実践内容

■発達の過程はどの子も同じだが

階段をイメージしてみて下さい。発達の過程はどの子も同じです。A君の場合、漢字という階段の一段目でつまずいていました。発達の過程はどの子も同じだとしても、その階段を上る力は子どもによって違います。
 階段を上る力のことを私は、「ステップ力」と呼ぶことにしています。そして、ステップ力=能力×意欲と考えています。

■能力と意欲

能力と意欲、この2つの言葉はどちらもよく目にします。しかし、実践の中で考えるとすると具体的にはよく分からない、あるいは人によって考え方が違う概念です。
 私の場合、特に「意欲」の方は、情緒の安定に近いイメージを持っています。計算の力はあるのに気分のムラが激しく、きちんと取り組む時とそうでない時がある子は、ステップ力が大きいとはいえません。「やればできる」は、「やらないからできない」という意味でもあります。

■階段を上がっているかどうか

発達の階段をイメージした場合、大切なことはこの階段を上っているか、上っていないか、ということです。では、上っていない場合どうするか。2通りあります。
階段を小さくする
ステップ力をつける 
このどちらかに取り組めば、いずれ階段を上る可能性が高まります。

■A君の場合

6年生でありながら、1年生の漢字を覚えることができなかったA君をこの発達の階段で考えてみます。今回は階段を漢字とします。ふつう、1年生のときに苦手であっても、1年生で習う漢字は学年が上がるにつれてできるようになってくるものです。画数が少なかったり、よく目にするという理由が考えられます。
 ところが、A君は6年生になるまで最初の階段も上っていませんでした。おそらく漢字に対する関心・意欲がほとんど無かったのでしょう。
 ふつう、1年生の漢字という1段目は、学年が上がるにつれて自然に上れるようになるものです。つまり、階段の高さが低いということです。画数や目にふれる頻度の問題でしょう。
 それでもこの階段を上っていなかったということは、漢字を覚える力自体も弱かったのでしょう。意欲も低かったのかもしれません。A君の漢字に関するステップ力は、とても低かったわけです。

■階段を低くする

ステップ力が小さければ、階段を低くすれば良いはずです。おそらく、これまでの担任も、漢字の練習をさせたり特別に声をかけたり様々な手立てを打ってきたはずです。つまり、階段を低くしてきたわけです。
ところが、A君のステップ力では、それでもまだ階段が高すぎたのです。そうこうしているうちに、学年が上がってしまい、他の子はどんどん上の階段に上ってしまいました。ますます意欲を失ったはずです。(発達の階段について)
*図

■一般的なスモールステップ

おそらく、どの学年の担任もA君への漢字の指導を丁寧にしてきたことと思います。特別に残してやらせたり、宿題を丁寧に見たり、声をかけて励ましたり、小テストの前に何度も練習させたり、問題の数を減らしたり、問題をそのまま教えてみたり……。
 これらは、スモールステップと言うことができるかもしれません。漢字を覚える力が平均的な子なら、こういった手立てで、できるようになる場合も少なくありません。

■小さい階段

スモールステップは、階段を上りやすいように補助の段をつけるというイメージです。平均的な子どもが補助無しで上ることのできる限界のところに、補助を置いて上る段を小さくしていくわけです。ときには、2段や3段に分けることもあるでしょう。逆に、力のある子(ステップ力の高い子)は、一気に1段飛ばし、2段飛ばしで駆け上がっていきます。

■どこまでも下げる

以前勤めていた学校で漢字テストを行ったとき、学年相応の問題ができない子が何人も出てきました。1学年分や2学年分下げても、まだ合格しない子もいます。「どこまで下げたらよいのだろうか」という声も出ました。私は、「その子ができるところまで、どこまでも下げて下さい」と答えています。
 漢字の取り組みではありますが、漢字の力をつけることは私のねらいの半分です。残りの半分は、取り組みによって自信や自己肯定感、達成感といったものを味わわせることです。そのためには、本人が納得する範囲で合格できるようにすることが大切です。学年にこだわらず、その子に合わせてどこまでも下げるという覚悟が必要です。

■生徒に合わせたスモールステップ

スモールステップという言葉があります。階段をそのままでは上がれない子どものために、低い補助の段を置くといったイメージです。
ところが、6年生のA君にカタカナを練習させるというのは、普通のスモールステップという言葉では、ちょっと違和感があります。6年生の漢字を練習させるときにスモールステップといえば次のようなことが思い浮かぶのではないでしょうか。
・問題数を減らす
・練習量を増やす
・個別指導する
・事前に同じ問題を練習させる
 とても、カタカナは出てこないはずです。

■視点の転換

ふつうのスモールステップは、教材(この場合は、6年生の漢字)を見て、補助の段を設定しています。もちろん、子どもがどの程度できるかは想定しています。それでも、やはり教材への視点が中心ではないでしょうか。A君の漢字の場合も同じでした。「6年生だから、6年の漢字を」から始まり、「6年生で無理だから5年生」となっていたわけです。
 しかし、なかなかA君ができるようにはなりませんでした。そこで、思い切ってカタカナまで下ろしたわけです。「子どもができるところまで、どこまでも下ろす」という決断です。教材中心から、子ども中心に意識を変えたともいえます。私は、これをスモールステップに対して、「超スモールステップ」と呼ぶことにしました。

■超スモールステップなら

一般的なスモールステップだけではなく、「超スモールステップ」という概念を持つと、子どもの指導がよりスムーズになります。学習面であっても、生活面であっても、教材や指導内容を分けるという視点だけでなく、子どもができることは何かという視点でも考えられるからです。

3  執筆者プロフィール

岡 篤(おか あつし)先生
 1964年生まれ。神戸市立小学校教諭。「学力の基礎をきたえどの子も伸ばす研究会(略称学力研)」会員。硬筆書写と漢字、俳句の実践に力を入れている。(2017年5月23日時点のものです)

 書籍のご紹介

『読み書き計算を豊かな学力へ』2000年

『書きの力を確実につける』2002年

『これならできる!漢字指導法』2002年

『教室俳句で言語活動を活性化する』2010年

4  編集後記

スモールステップといってもどこまで下げれば良いのだろう……という疑問があるかもしれませんが、やはり、生徒に合わせてどこまでもステップを下げる必要があるということですね。生徒にとって「学習」は、知識の獲得と同時に、自己肯定感を高めることにつながるということに注意しながら学習させることが必要なのだということを改めて感じました。
(EDUPEDIA編集部 井上渚沙)

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