小学校1年生からできる俳句実践~カルタを用いた指導法③~(岡篤先生)

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目次

1 はじめに

本記事は、岡篤先生のメルマガ「教師の基礎技術 858号~862号 創造的にいこう!~俳句実践~」から引用・加筆させていただいたものです。
 弊サイトの記事
小学校1年生からできる俳句実践~カルタを用いた指導法①~(岡篤先生)
小学校1年生からできる俳句実践~カルタを用いた指導法②~(岡篤先生)
で、俳句に親しむために「俳聖カルタ」というカルタを用いた指導が効果的であるということをご紹介しました。今回は、そんなカルタを用いた実践での注意点や指導法を追記しています。
  岡篤先生のメルマガはこちらを参照ください。→http://archive.mag2.com/0001346435/index.htm

2 実践内容

■中七からのカルタ

カルタを取るのが遅いのは、聞く力が弱いという以外に、

  • 俳句を思い出すのが遅い
  • 上五の言葉から、中七を思い出すことが難しい

といったことが原因の場合もあります。近くに行ってゆっくり読み上げても、カルタの俳句を思い出せないので取れないのです。
 ちなみに私が使っている俳聖カルタの取り札は中七からになっています。つまり、「古池や蛙飛び込む水の音」という俳句の取り札は「蛙飛び込む水の音」となっています。もちろん、取り札も「古池や」から始まるカルタもあり、その方が簡単です。しかし、子ども達が自然に五七五を頭の中で反芻し、そのリズム感を体得することを狙っているため、私はあえて中七からの取り札にこだわっています。

■1年生の発達差

ただしこのカルタは、覚えることや思い出すことが苦手な子にはより難しいカルタということになります。特に、1年生で使う場合は、配慮が必要です。
 1年生は、教科書的な学習の差はまだ小さいといえます。しかし、発達の差は逆に大きいといえます。なんといっても、4月生まれと3月生まれの差は、人生の6分の1に当たるわけです。それに個人差も加わります。カルタをやっていると、その差の大きさを痛切に感じます。
 2年生以上の場合、多くはゆっくりくり返していればいずれできるようになっていくことがほとんどですが、1年生の場合はそうとは限りません。上述のことがあるからです。しかし、五七五のリズムを体得することで、1年生でも、あるいは1年生だからこそよい俳句を作ることも可能です。それを分かっているだけにあきらめるのはもったいないと思ってしまいます。

■どうしてもついてこられない子に

普通の励ましや、読み札を先に見せる、しばらく待つ時間をとる、取り札のある辺りを指さす、といった支援を続けてもなかなか伸びてこない子もいます。その子に同じことを続けていても、大きな変化は期待できません。普通のカルタのやり方では難しすぎて、練習になっていないからです。階段の段が大きすぎて上がることができず、同じ場所にとどまっているとでも表現したらよいでしょうか。 
 少しずつでもゆっくりでも、小さな階段を上がっているなら、それを続けることで伸びていくでしょう。その見通しがない場合、「特訓コース」を設定します。特訓といっても、実際には他の子よりも易しいことをします。
 普通に続けていては力がつかないと思われる子どもがいた場合、特別な手立ては必要です。ただし、特別なことをする場合、本人たちが劣等感を持たないようにすることも大切です。そこで、その子たちを集めて、「みんなはまだカルタが苦手だね。でも、先生はここの人たちにもがんばってカルタを得意になってほしいと思っています。そのために、みんなとは別の練習をしたいと思います。『特訓』です。やる?」という声かけをします。この「特訓」の響きは悪くないようでたいてい「やる、やる!」となります。
 また、「あの子たちだけずるい」とならないように、クラス全体にもこう説明します。「前に集まった子たちは、今はまだカルタが苦手な子です。前で練習して、うまくなったらまたみんなのところでいっしょにやることにします。その方が、みんなもライバルが強くなってますますおもしろくなるでしょう?応援してあげてください」

■特訓コースの内容

特訓コースの子たちは、中七からの取り札ではなく、上五からの読み札(つまり全部書いてある読み札)を使います。ここに集めた子たちは、単にカルタを取るのが遅いだけではありません。

  • 俳句を覚えるのが苦手
  • 俳句を思い出すのが苦手
  • 上五を聞いて中七を思い出すのが苦手

といったことも重なっています。そのため、ふつうに練習しているだけではほとんど取れず、うまくならないのです。
 読み札を取り札として使うことで、これらのことが解消します。しかし逆にいえば、上五を聞いて中七を思い出すことで五七五のリズムを体にしみこませるという本来のねらいは放棄することになってしまいます。そこは、前進のための後退です。ここでも、教師のさじ加減が求められることになります。

☆続きはこちらの記事からお読みいただけます。

3 執筆者プロフィール

岡 篤(おか あつし)先生
 1964年生まれ。神戸市立小学校教諭。「学力の基礎をきたえどの子も伸ばす研究会(略称学力研)」会員。硬筆書写と漢字、俳句の実践に力を入れている。(2017年7月3日時点のものです)

4 書籍のご紹介

『読み書き計算を豊かな学力へ』2000年

『書きの力を確実につける』2002年

『これならできる!漢字指導法』2002年

『字源・さかのぼりくり返しの漢字指導法』2008年

『教室俳句で言語活動を活性化する』2010年

5 編集後記

今回の記事では、カルタが苦手な子に対する指導法を紹介しました。特別な指導をする際に、本人にいかに劣等感を抱かせず、周りの人にいかにずるいと思わせないような声かけができるかが重要ということです。ぜひご活用ください。
(文責・編集 EDUPEDIA編集部 津田)

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