授業改善のヒント~言葉で授業を振り返る~(乙女発問・エイリアンetc)

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目次

1 はじめに

教育現場には様々な教育用語があります。
「立ち歩き」
「不登校」
「引きこもり」
「落ちこぼれ」
「居残り」

この中には、教育の課題を明らかにするために生まれ、課題解決に役に立つ言葉もあるでしょう。
 しかし、この言葉でのみ事実を捉えてしまうと、本当のことが見えなくなってしまう怖れもあります。

授業中に立ち歩いている子がいても、「子どもは落ち着きがないものだ」という認識が一般的な場合は、その行為はあまり気にならないでしょう。
 しかし、「立ち歩き」というネガティブワードが一般化すると、それは「授業規律を乱す行為」と捉えられてしまいます。

また、文部科学省は「不登校は誰にでも起こり得る」と意味づけをしていますが、現在の日本では、どうしてもネガティブな響きに聞こえてしまうのではないでしょうか。
(「不登校」「登校拒否」の言葉については下の記事が参考)
登校拒否と不登校の違い定義変遷の流れ【学校恐怖症】(不登校ナビ)

このような「レッテル貼り」は無意識である場合が少なくないため、意識的に自分の言葉を振り返らなければ気付かないことが多いでしょう。
 一方で、言葉には今までみえなかった問題をみせてくれる力もあります。

2 言葉で授業を振り返る

そこで、今回はこの力を活用して「授業改善のための言葉」を考えてみました。授業を振り返る際のヒントになれば幸いです。(写真はイメージです)

「活動あって学びなし」

初めは既に言われている名言。
アクティブ・ラーニングが言われるようになって、再びよく耳にするようになった言葉です。

学習活動が体験だけで終わり、そこから何を学んだのか分からない授業にならないように気を付けよう、というメッセージがあります。
派手な教材や学習者の動きのみを重視すれば深い学びになるのでないでしょう。

続いて、自作を紹介していきます。

「乙女発問(オトハツ)」

教師の発問に対して学習者へ「なんでも考えたこと自由に言っていいよ」と伝えるが、実際は教師の期待する答えだけを求める態度。
 求める答えが出ない場合、「他には?」や誘導尋問が行われ、結果的には自分の思い通りのシナリオに進む。

乙女はデートの際に「なんでもいいよ」と返すことがあるが、本当は「私の気持ち分かってね」というメッセージの場合があることから。

この発問傾向には、教師の恋愛観が関係しているのかも分かるかもしれない。。

「地蔵(お地蔵さん)」

授業中、静かに座って、板書をノートに写して、じっと目立たずに時を過ごす。一見、しっかりと話を聞いているようにみえるが、脳内は思考停止状態。
知識伝達型の授業ばかりでは地蔵が増える傾向にある。
ちゃんと聞いているのにテストの点が振るわないのは、ここに原因があるのかもしれない。

この状態が続くと「先生の話を聞くことが勉強」という学習観を育ててしまい、自ら学ぶ力を失う危険性がある。

日本の生徒は「儀礼的」に教師に従っているだけ( Newsweek)より

上の図は、先生との人間関係と授業中に話を聞く割合を示している。
日本は左下に位置し、つまり、教師の言うことを聞く生徒は多いが、教師と良好な関係にある生徒は少ない、ということになる。
データからすると、日本の中学校には地蔵が多いのかもしれない。

でも、お地蔵さんはかわいい。見るとなんだか癒されるお地蔵さん(NAVERまとめ)

「実はみそフル」

「地蔵」の反対語。「脳みそをフル回転させる」の略。
ただ座っているだけで何も考えていないように見えるが、実は脳内がスパークしている。学習成果は振り返り記述などに表れる。

授業では、教師が伝えた内容が100%そっくり学習者へ伝わるのではなく、学習者それぞれの価値観や既習事項との関連で変換されるものでもある。(構成主義)
 教師が伝えたことが全く理解されていなくても、それがきっかけで疑問を抱いたり、発見をしたりするのも、立派な学習だと言える。

教師は、学習者個々の脳内をよく観察し、学習者集団をコーディネートする力が求められる。

「先生がエイリアンに、、、」

発問や説明が難解、指示が曖昧など、学習者と先生の意思疎通が難しい状態。
知らない外国語の動画を見たり、難しい専門書を読んだりすると、エイリアンと対峙した時の子どもの気持ちが分かるかもしれない。

日本人だけが読めないフォント「Electroharmonix」の遊び方より)

「ドヤ残」

夜遅くまで教材研究をして、当日「ドヤ!」と提示した課題に対して、学習者がポカンとする状態。
教師の関心と、学習者の関心がずれた時に起こる。

「残」には「残念」と「残業」の2つの意味が込められている。初任の頃は本当に残が多かった。「残多」

ミスに気付いた後「先生、遅くまで準備を張り切ったけど、なんだか失敗したみたいだ(笑)」と言うか、または開いた口をおかまいなしに無理やり押し通すかで、1時間の雰囲気が決まる。

「ノリ叱咤」

先生が雑談をして雰囲気を和ませる。その後授業に戻ると、脱線の雰囲気が残ってザワザワしている。
そこで「いつまで話してるんだ!気持ちを切り替えろ!」と怒ること。

脱線や気分転換は使い方を間違えると日常化してしまう諸刃の剣。

「ラブファン導入」

導入が長い。
授業初め、学習への興味を喚起するための時間をどう使うか教師の力量が問われる。
あまりにも長いと、いつ本題に入るのか分からず学習者はそわそわし始める。

特に算数・数学で既習事項の確認が長引くことが多い。
教師が説明するより、「昨日の学習を周りと振り返ってください」と言った方が分かりやすいことがしばしば。

由来はB'z「LOVE PHANTM」
イントロが1分ほどあるが、荘厳なため期待感が膨らむ
歌もサビから始まり、カラオケで盛り上がる楽曲の1つ。
このような導入を目指したい。

3 おわりに

今回は自身のよくある状況をネーミングしてみましたが、似たような経験はありましたでしょうか。

教師や学習者の言動や思考を振り返り、スタイルや特徴を掴むことができれば、効果的な授業改善の方法が見つかるかもしれません。
 その際に、現象に言葉を与えることで、上手くいったことも失敗も他の人とも共有しやすくなると思います。

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