漢字の効果的な指導法~応用編~

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目次

1 はじめに

本記事は、岡篤先生のメルマガ「教師の基礎技術~創造的にいこう17~「さかのぼりくり返し」を宿題で~536号~542号」から引用・加筆させていただいたものです。
「さかのぼりくり返し」をどのように活用し、発展させるかについて書かれています。漢字学習をより効率的なものとするための工夫を紹介しています。

また、関連記事としてこちらの記事もあわせてご覧ください。
漢字の効果的な指導法~基礎編~

岡篤先生のメルマガはこちらを参照ください。→http://archive.mag2.com/0001346435/index.htm

2 実践内容

「さかのぼりくり返し」の繰り返し

1年担任の時に、先輩教員から教えてもらった「さかのぼりくり返し」は、私の反復練習の基本的な考え方となりました。このときの反省は、漢字の数がたまってから始めたということです。正しい「さかのぼりくり返し」では最初の一文字から「山・川・水・木という漢字を習っているとしたら、順番に書かせ、次の日に火を習ったら火・山・川・水・木と書かせる」というやり方で練習させていたというのです。一文字、二文字からやっていれば、子ども達もほとんど負担感なく書けていたことでしょう。

宿題に応用

宿題もこの方法を使うことにしました。

  1. 漢字の練習帳に、まずその日に習った漢字を書かせます。
  2. 前の日に習った漢字、前々日に習った漢字と進んでいきます。
  3. 1ページがうまったらそこで終わりです。

これが基本的なパターンです。

応用しても原則は同じ

宿題では、漢字一文字だけではありません。市販の漢字ドリルを使っているので、そこに出ている熟語を書かせるようにしています。ドリルに句点がついていればそれも写させたり、いくつかある熟語の一つ目だけをかかせたりと多少の応用はあるものの原則は同じです。しかし、それだけとは限らないようです。

宿題になるとできない

習った字を最初に書いて、後は順番にさかのぼる。さかのぼりくり返しの方法は単純です。しかし、いざ宿題でやらせようとすると、そうはいきませんでした。授業中にノートの使い方や熟語の選び方なども丁寧に説明したのに、全然できていない子がたくさんいたのです。ただドリルを写しているなど、出された宿題のノートは私が思ったようにはなりませんでした。

宿題でもできるようになるために

何度も繰り返して言いましたが効果がなかったので工夫をしました。それは宿題にする前に、授業中にさかのぼりくり返しの練習をすることです。そして、どの子もできるようになったと判断してから宿題に出すようにしました。今では、低学年の場合2週間授業で練習するようにしています。

さかのぼりくり返しをさかのぼって教える

さかのぼりくり返しの原則は、少しずつできることを増やしていくところに良さがあります。その原則は様々なところに応用ができます。さかのぼりくり返しを教える際にも少しずつできることを増やしていくことでこの原則を応用できました。例えば最初は全てを教師が説明し、チェックします。次は、ほとんどを説明、チェックしますが、最後の少しだけ子どもに任せます。それを少しずつ、子どもにやらせる部分を増やしていくのです。新出漢字を少しずつ加えて、それまでの漢字も練習するようです。さかのぼりくり返しの発想は、あらゆる指導に応用できます。

小テストもさかのぼりくり返し

1年生の練習から始まったさかのぼりくり返しですが、宿題の方法として定着しました。小テストでも使えます。例えば、「正・字・文・虫・見」の5つを習っているとします。

小テストの問題

小テストの問題は、次のようになります。

  1. ただしいしせい
  2. じをかく
  3. ぶんしょう
  4. むし
  5. みる

この問題のできが悪ければ、練習してもう一度やることになります。ほとんどの子ができていれば、次に進みます。次に、山を教えたとします。さかのぼりくり返しでいくと、次のようになります。

  1. やまにのぼる
  2. ただしいしせい
  3. じをかく
  4. ぶんしょう
  5. みる

連動させる

できれば、毎日のように小テストをします。さかのぼりくり返しで小テストをしていれば、新出漢字と宿題と小テストが連動します。 そうなると、宿題をきちんとやれば、小テストは満点をとりやすくなります。また、小テスト自体もさかのぼりくり返しでやっているので、練習にもなっています。小テストの点がよくなれば、丸つけも楽です。毎日やっていれば、子ども達も慣れてきて、どの時間に、小テストの用紙を誰が配るかなども定着してきます。漢字指導の好循環が生まれます。その上で、ちょっとした工夫をすることで、さらに定着がよくなります。

子どもの状態で判断

さかのぼりくり返しは一つのシステムです。そのシステムをどのように使うは教師の判断で、判断の材料は、子どもの実態です。例えば、ある日次のような小テストをしたとします。

  1. ただしいしせい
  2. じをかく
  3. ぶんしょう
  4. むし
  5. みる

結果が順調であれば、次には「山」の問題を追加し、以下のようになります。

  1. やまにのぼる
  2. ただしいしせい
  3. じをかく
  4. ぶんしょう
  5. みる

ここで担任にしかできない判断が求められます。もし、テストの点が悪ければ「やまにのぼる」を追加しないで、もう一度「ただしいしせい」から始まる問題をするというやり方もあります。その場合、新出漢字や宿題の進め方も調整した方がより効果は高まるでしょう。

問題の出し方を工夫

「みる」という問題があまりできていないので、問題に入れておきたいという場合もあるでしょう。そんなときは、「むし」は「むしをみる」という問題に変えます。漢字の力をつけるには、続けて問題にしておいた方がよいということです。

担任のみができること

この問題は、「5回問題に出したら大丈夫」とか「満点が9割を超えたら進めます」といったものではありません。ある程度の目安として「ほとんどの子が満点をとる」ということはあります。しかし、「ほとんど」に入らない子が誰で、どんな状態かを理解しているのは、担任しかいません。つまり、担任のみができる「さじ加減」というものです。

高学年になると

漢字指導は新卒以来ずっと自分の課題としてきました。このさかのぼりくり返しで宿題や小テストをすると、定着率は着実によくなりました。ただしそれは低学年、あるいは中学年までです。高学年になると、いくらくり返しの仕方を工夫してもどうも思うほどの効果が現れません。

その学年までの漢字も課題

なぜ伸び悩むのかを考え、改めて子どもの様子を見ると気付いたことがありました。漢字が苦手で小テストの点数もなかなか上がらない子は、当該学年の漢字ができないのはもちろんですが、それまでの学年の漢字もできていないのです。そのために、小テストで熟語や文の問題を出すと間違える字が増えてなかなかできるようにならないという面もありました。

二つの策

そんな中で、二つのことを考えました。
一つ目は、自分だけが漢字指導をがんばっても高学年では効率が悪い。
二つ目は、漢字が苦手な子には、熟語や文でテストをすることはかなりハードルの高いことである。
この二つです。
一つ目は、学校ぐるみの漢字指導につながりました。
二つ目は、一字テストという形式にいきつきました。
一字テスト形式は3年生を担任したときに試行錯誤しながらたどりつきました。

さかのぼりくり返しで課題発見

さかのぼりくり返しは、私の漢字指導の主要なパーツの一つとなっています。どの学年を担任しても、基本的にはさかのぼりくり返しを行います。特別支援学級でも、この方法は効果的でした。そして、さかのぼりくり返しで取り組んでも成果が出にくいとなったときに、次の課題が見えたわけです。

学校全体で対処する

個人での努力では限界があると痛感した上で、学校ぐるみの取り組みを考え始めました。学校ぐるみの提案では色々と反対や批判をされる場合もあります。しかし、「さかのぼりくり返し」というキーワードは、学校ぐるみの提案にまでつながったのです。

3 執筆者プロフィール

岡 篤(おか あつし)先生
1964年生まれ。神戸市立小学校教諭。「学力の基礎をきたえどの子も伸ばす研究会(略称学力研)」会員。硬筆書写と漢字、俳句の実践に力を入れている。(2017年6月28日時点のものです)

4 書籍のご紹介

『読み書き計算を豊かな学力へ』2000年

『書きの力を確実につける』2002年

『これならできる!漢字指導法』2002年

『字源・さかのぼりくり返しの漢字指導法』2008年

『教室俳句で言語活動を活性化する』2010年

5 編集後記

漢字学習をより効率的に行うための手段が紹介されていました。宿題で「さかのぼりくり返し」を行う場合の工夫する点について例を交えて紹介されていました。
漢字学習は基礎として必ず行うものだと思うのでどのようにして行うかの参考になれば幸いです。

(文責・編集 EDUPEDIA編集部 福山浩平)

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