都立高校「防災学」授業実践ノート第2回~オリエンテーションとアイスブレイク~

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作成者: Kenya Miyazakiさん

1 概要

『都立高校「防災学」授業実践ノート』は、筆者が都立高校定時制課程で受け持つ総合科目「防災学」授業の実践で気付いたことや学んだこと、指導案や教材などをまとめています。これまでの記事は下記をご覧ください。第2回以降ではノートの要点を完結にまとめた『今回の防災"共育"ポイント』を冒頭に記述します。全文は読んでられない!要点だけ知りたい!という方はご活用ください。

  1. 第1回~生徒との防災"共育"を目指して~
  2. 第2回~オリエンテーションとアイスブレイク~
  3. 第3回~自然災害の理解①地震と津波、穴埋めシート作り~(準備中)

2 今回の防災"共育"ポイント

  • 生徒が学びを振り返るための「ノート」を配布
  • オリエンテーションで授業内容、ワークで目的を説明
  • 生徒のアイスブレイクの前に、講師自身のアイスブレイクが必要だった

3 生徒と初対面、の前に...

今回の授業にあたって必要な資機材の一部は学校側にお願いして購入していただいています。予算などは公にすべきことではありませんので差し控えますが、第1回でご紹介した内容は滞りなくできる準備は整いました。授業前に、講師にあたっての事務手続きや、教材の保管場所などをチェックしました。

防災士の資格をお持ちの先生にTT(チーム・ティーチング)で入っていただき、出席管理や学内事務についてご協力いただいています。職務上、どうしても授業に対応できない場合もあるので、TTの仕組みがあって安心しました。


(教室からは東京タワーがよく見えます)

4 いよいよ初回授業!人数は...?

履修登録者は25名ですが、定時制課程で1単位ということもあり、常時出席できる生徒は限られるようでした。40名くらいの教室で三分の一くらい、でしょうか。不慣れな立場としては、生徒の顔と名前が一致しやすい人数で助かりました。自己紹介をして、防災学の授業内容について紹介した後に「じぶん防災ノート」を配布しました。

5 「じぶん防災ノート」とは

「じぶん防災ノート」は、社会福祉士の実習中に作成していた「実習ノート」をヒントにしたテキスト兼学習記録用ノートです。フラットファイルに予めテキスト資料やワークシート(後述)を挟み込んで配布し、生徒は授業の各回で配布したプリントをファイルに追加していきます。ファイルは長期間に渡って出し入れしたり、持ち歩いても壊れにくいものを選びました。

「じぶん防災ノート」には予め記名してもらい、必要に応じて提出してもらったり、フィードバックを行ったりができるようにします。最初は毎授業でしっかりフィードバックを行おうと思っていたのですが...どうやらそう簡単にはいかないようです(詳しくは第3回以降で)。

事前テキスト&ワークシート

じぶん防災ノートに予め挟み込んでおいた資料は以下の3つです。今回の授業を引き受けるにあたって、生徒に科学的な知見と経験に基づく知識や技能を伝えていく一方で『他の地域、学校、先生でも"これくらいならできるかも"と思えること』『必要な資料や教材がすぐに手に入ること』も大切にしています。

表現として適切かどうかは分かりませんが...「可もなく不可もなく、すごくはないけど、大事なポイントは押さえてある」という内容で進めていきたいと考えています。なお、下記は都立高校での授業を想定しているので東京都教育委員会発出の資料を使っていますが、他校で実践される場合はそれぞれの教育委員会の副読本や自治体の資料などをご活用いただければと思います。

6 オリエンテーションと生徒の自己紹介

オリエンテーションではレジュメを配布し、各項目について説明を行ったのですが、まずは自分が自己紹介をすることと、生徒にも自己紹介をしてもらいました。

「防災学をどうして履修したのか教えてください」という質問に対しては「災害が頻繁に起きていて心配だから」、「学んでおいたほうがよいと思ったから」、「前期に関係する授業を受けたが、もっと学びたいと思ったから」といった理由もあれば「単位のため」、「他にとれる授業がなかったから」といった理由もありました。

後者の理由も立派な動機です。特段、防災に関心はないけれど...という生徒にもきちんと理解してもらえる、少しでも積極的になってもらえるようにしなければ!と思う原動力になります。

「理由は何であれ、登録してくれて、出席してくれてありがとう!不慣れなこともあってみんなに迷惑をかけてしまうこともあるかもしれないけれど、防災についてしっかり伝えられるように頑張ります。」と伝えました。

レジュメでは大事な考え方だと思って「防災のフレーム」についても記述しましたが、説明する時間と余裕がありませんでした...。いずれ触れたいと思います。

7 導入ワーク:映像資料「助け合う防災教育」を視聴する

導入のワークとして、映像資料を視聴してポイントを記述してもらいました。使用した資料は東京都教育委員会が製作し、筆者が企画・シナリオなどを担当させていただいた「助け合う防災教育~学校・家庭・地域のつながりをつくる~」です。詳しく(というほど詳しくもないですが)は下記のページで紹介されています。

映像資料の提供等については文末の筆者所属団体ホームページからのお問い合わせでも対応できますので、お気軽にご相談ください。

「釜石のできごと」と教育訓練

映像資料では、釜石市立釜石東中学校の事例を紹介しています。映像教材の作成にあたり、当時の先生や生徒と縁がありましたので、直接インタビューをすることができました。具体的な事例紹介や当時の生徒のコメントを通じて一番伝えたかったことは「防災について学ぶこと、訓練に真剣に取り組むこと」は意味があるという点です。

君たちが学ぶことには意味がある。いつか役立つ時が来る。災害が起きることは変えられなくても、結果は必ず変えられる。そんなメッセージを伝えたくてこのワークを行いました。

8 アイスブレイク~大切なもの探し~

次に、防災学の目的についてより理解しやすくなるように、また生徒同士がスムーズに話し合いなどができるようにと、アイスブレイク・ワークショップを行いました。

アイスブレイク...を断念、その理由は

オリエンテーションや自己紹介まで進めてみての教室の空気、雰囲気から「いきなりこの内容でやるのは厳しいかもなぁ...」と感じて、ワークシートの内容を変更して各自で考えてもらうようにしました。

生徒の態度や反応には、責任も問題もありません。生徒を信じて任せることもできたはずです。断念した最大の理由は授業という場に対して、講師自身のアイスブレイクができていなかったことです。

いわゆる「アクティブ・ラーニング」につながるようなワークショップは、高校生を対象に何度も実践してきました。ただ、少人数の授業という型式は今までのどんな経験とも異なる雰囲気、空気を持った場でした。定時制課程における少人数授業という独特の雰囲気・空気の中でいかに対話や主体的な学びを促す授業にするか。生徒から教えてもらった大事な『共育』ポイントです。

「高校授業の講師」としての絶対的な経験値不足が原因で、結果として生徒のアイスブレイクはできませんでした。生徒ひとりひとりが、ワークシートに向き合っている数分間、せめてこの個人ワークを最大限活かせるようなメッセージを伝えようと考えました。

9 「防災学」の"真の目的"を伝える

ワークシートでは生徒ひとりひとりに、自分の生活にとって大切な人、もの、ことを考えてもらいました。それは、筆者自身が防災学の、もっと言えば防災の"真の目的"につなげて欲しいという想いからです。

「"防災学"は、ここにいるみんなのために、授業をとってくれたみんなのためにあります。学校のためでも、社会のためでもありません。"防災学"の防災が守ろうとしているのは、皆さん自身とその大切な人、もの、ことです。だから、今書いてくれたワークシートはこの授業が終わる日までずっと持っていてください。防災学の"真の目的"は他でもなく、皆さんひとりひとりを、皆さんが大切にしている何かを守ることです。そのためのガイドをするのが、僕の仕事です。」

回収したワークシートには、家族のこと、スマホのこと、お金のこと、ひとりひとり違うもの、違う理由が書いてありました。彼・彼女たちのために何ができるかを考え、伝えていこう。

いろいろな意味で「授業者(講師)」としての気持ちを引き締める、初回の授業となりました。

次回は「自然災害の理解①地震と津波~穴埋めシート作り~」です。

10 実践報告者プロフィール

宮﨑賢哉/社会福祉士・ボランティアコーディネーター。一般社団法人防災教育普及協会事務局長<外部リンク>災害救援ボランティア推進委員会主任<外部リンク>などを兼務。2017年10月より都立高校定時制課程で総合科目「防災学」講師を担当。「防災教育実践50選」をもっと活用する4つのポイント』などを執筆。

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