教科書の構成と発問ー小5社会 自動車工業を例に(谷和樹先生)

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作成者:高木 敏行 (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

本記事は、2017年10月7日(土)に石川県女性センターで行われた「第3回 谷和樹&石坂陽 ブレイクスルーセミナー」(主催:NPO法人いしかわ子ども未来ネット)を取材し、編集させていただいたものです。教科書に載っている写真資料の授業での扱い方がテーマです。なお本セミナーでは東京書籍「新しい社会 5下」10~11ページを使用しています。教科書をご覧になりながらお読みいただくことをお勧めします。

2 講演内容

写真から考えたことを列挙させる

これから社会科の5年生の教科書(「はじめに」に記載のページ)を例にお話しします。パッと見て写真やグラフ、地図に目が行きますね。どの資料から入っても授業を組み立てることは可能です。今回は仮に左ページ上の2枚の写真(モーターショーの写真と街の道路を走る多くの自動車の写真)を切り口として授業を進めていくこととします。

資料の見方をはっきり示す

このような進め方で授業をする場合、どんな発問が考えられますか? 

「この写真を見て気付いたこと、分かったこと、思ったことをできるだけたくさんノートに箇条書きにしなさい」

という発問が基本ですね。しかし、この発問の仕方では今回の場合まだ曖昧です。「この写真」とは左右どちらの写真のことを指しているのでしょうか? 左ページ上と言っても2枚写真が並んでいます。見方を明確にしないと子どもたちの意見はブレます。私の場合は、

「教科書10ページの上に2枚の写真が並んでいますよね。この写真2枚両方を見て、気付いたこと、分かったこと、思ったことをできるだけたくさんノートに箇条書きにしなさい」

と言います。

一方、2枚の写真を使ったもう一つの問い方があります。

「左の写真をA、右の写真をBとします。AとBを比べて気付いたこと、分かったこと、思ったことをできるだけたくさんノートに箇条書きにしなさい」

 
しかし、ここでは比べるということは問題ではありません。比べてもここでの学習上意味がないからです。学習目標に基づいて発問する必要があります。 

教科書の構成の意味を考える

では、2枚の写真をもとにどんな意見が子どもから出てくればいいと思いますか? 
教科書執筆者がこのように教科書を組み立てた意図を考えてみましょう。彼らは社会科教育のプロ集団ですから、何の理由もなく写真を置いたりはしません。資料と本文は密接につながっています。例えば日本の自動車の普及率、生産台数についての本文中の記述は左にあるグラフに対応しています。同様に、本文中の「自動車は、わたしたちの生活を大きく変えました」という記述を子どもたちにイメージさせるために写真が使われているのです。したがって、「自動車によってわたしたちの生活が〇〇のように変わった」という自分の生活に結び付いた意見が出てこなければいけません。

こうした意見が自然に出てこない場合は、教師が追加で発問する必要があります

「私たちの生活が変わってきたことについて写真から気付いたこと、分かったこと、思ったことをを書き足しなさい」

と言わないと、この教科書を授業したことにはなりません。よって2つの写真を比べることにも意味はありません。そして、子ども自身で資料と本文の関係を読み取ることができるようになるように鍛えていくことが大切です。

3 講師紹介

谷 和樹(たに かずき) 玉川大学教職大学院教授。TOSS会員(中央事務局、TOSS授業技量検定代表、TOSS和(川崎市)代表)。(2017年10月7日現在のものです)

4 講師著書紹介


5 編集後記

「何を生徒に学習してほしいのか」という視点は、授業を組み立てる上で最も重要な軸なのではないでしょうか。谷先生は、かつて学級の「意見の強さ」が弱いと指摘されてショックを受け、以降「意見の強さ」とは何か、と考え続けてきたそうです。この話を聞いて私は、教員や生徒が「学習目標」という視点をあまり持っていないと、教師の発問や子どもの意見が深まらず、学習の効果も薄くなってしまうのだろう、と思いました。教材の力を最大限に引き出すためにも、学習目標を見据えて授業を組み立てていくことが大切なのではないでしょうか。
(取材・編集:EDUPEDIA編集部 高木敏行)

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