「詩の世界」詩の群読発表会をしよう~解釈を群読に生かす~

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目次

1 はじめに

光村図書中学校1年「詩の世界」の授業実践です。群読の活動を中心に個人の詩の解釈をグループの解釈に練り上げ、発表会をする授業を構成しました。修辞法は既習のため、修辞については簡単な振り返りを行った上で、表現上の工夫が詩の味わいにどのような効果をもたらしているかに着目しました。

教材

教材の精選には高橋俊三(1990)が示した群読にふさわしい詩の基準を参考に選定しました。
1. 一人読みでは出すことのできないボリューム感、力動感、立体感のある作品になり得る
2. 文体のもつリズムや感動を、複数読みの強いインパクトで表現され得る
3. 品の主題が強調され、具体性、臨場性、現前性が音声で拡大表現され得る
4. 楽しく、おもしろく、印象深く聴衆に受けとられる音声表現になり得る

  • 不思議  金子 みすゞ
  • 昨日はどこにもありません  三好 達治
  • 木 田村隆一
  • 河童と蛙 草野 心平
  • 山の歓喜 河井 酔名
  • 朝のリレー 谷川 俊太郎
  • いのち 小海 永二
  • 先駆者の詩  山村 暮鳥
  • いま始まる新しいいま 川崎 洋

単元の目標

  • 詩の構成や表現技法に注意して読み深い理解をすることで、詩のイメージを表現するための群読台本作成に役立てることができる。 (読むこと ウ)
  • 詩の構成や表現技法への理解を通して、個人で選択した詩の解釈を深め、群読台本の作成に生かすことができる。(読むこと エ)
  • 比喩や反復などの表現技法について理解を深めることができる(伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項)

4.単元の評価基準

単元の指導計画

第一時 グループで好きな詩を選び、個人での詩の分析を行う

  • 9編の詩を読み込み好きだと感じる詩をグループで2編選択し音読する
  • 個人ワークシートで自分が担当する詩の解釈・分析をする

第二時 個人の解釈をもとにグループで詩を分析し群読台本を作成する

  • 同じ詩を選んだグループで解釈を交換し分析を深める
  • 解釈を伝えるための手法としての群読を理解する
  • グループ群読ワークシートに分析と分析に基づいた演出を台本に記入する

第三時 グループで群読台本を共有し発表会に向けて群読練習をする

  • グループ内で解釈と群読台本を共有する
  • 群読の読みの練習会をする

第四時 群読発表会をする

  • 他のグループの解釈と解釈をどう群読に反映したかを意識して聞き合い評価することで自分の考えを深める

6.本時(2/4)

(1)本時の目標
グループで交流し群読台本を作成する活動を通して自分自身の詩の解釈をより深めることができる。

2 ワークシートモデル

個人分析モデル(A4出力)

グループ群読台本モデル(A3出力)

参考スライド

3 生徒の振り返り

4 教科検討会での指摘

授業実施後、実践した授業について教科検討会で参観された国語科の専任の先生方より以下のようなご意見をいただきました。

単元に関して

分析的な観点が強い→深い学びの具現化

深い学びは総合的な観点が求められる、本実践ではその中でもとりわけ詩を分析的に考えることに重きが置かれていた。詩の独自の世界を読み解くことで意味生成を行うプロセスを含めた融合的な活動に発展できると良いだろう。

台本モデルの足掛けが高すぎた→モデルは「おもしろさ」や「食いつき」も備えるものを提示する

分析的な観点としてのモデルであったが、モデルが細かく切り分けられているがゆえに先に分析的な観点が強くなった。学習モデルは最初に提示する場合、簡単だけど感動できるものを用意できると良い。

「テーマ」や「コンセプト」など概念的語句を子どものところまで落とす

概念を表す言葉を理解するのは中学2年からと考えられている。1年生を指導する際には、抽象的な語句を使用する際は意識して生徒のレベルまで落ちるように意識すると良い。

分析の道筋がモデルにあらわれている→一方向以外の道筋も考慮に入れる

ワークシートで分析の道筋が構造的に示されていたが、必ずしも全ての生徒がその道筋をたどるわけではない。テーマに先にたどり着く生徒もいるだろう。分析を学ぶという点では、良いことであるのだが、そこを考慮することができるとなお良い。

モデルの提示→動画は音量など環境も整え代替手段を用意する

ワークシートでのモデルの提示に加えて実習生が萩原朔太郎「竹」で群読を行った動画を提示した。動画ではPCの設定準備不足で音量が不足した。モデルにひたらせるための環境設定をより準備すると良い。

個人の読みをグループの読みがつぶさないように

実践ではグループの編成人数や、発問や机間指導で個人の読みの尊重を徹底的に伝えた。しかし個人の良さを全てをグループの群読に反映することはできない、お互いの意見を比べて止揚させるような働きかけが必要である。

5 参考・引用文献

  • 家本芳郎. (2001). CD ブック 家本芳郎と楽しむ群読. 高文研.
  • 高橋俊三. (1990). 群読の授業—子どもたちと教室を活性化させる (授業への挑戦) . 明治図書.
  • 重水健介. (2013). みんなの群読脚本集. 高文研.
  • 重水健介. (2015). 教師のための群読ハンドブック. 高文研.
  • 谷川俊太郎. (2014). 詩を書くということ. PHP 研究所.
  • 木下順二. (1978). 古典を訳す. 福音館書店.
  • 野口芳宏, 木更津技法研. (2016). 詩歌の鑑賞授業の教科書 (授業づくりの教科書). さくら社.

使用したワークシート

群読グループワークシート.pdf

教材テキスト詩リスト.pdf

6 編集後記

教育学部附属中学校における教育本実習の実践内容です。国語科におけるアクティブラーニングの視点より主体的かつ対話的な活動を丁寧に準備し、その中で深い学びをつくることを自分の実践と専任の先生方の授業観察を通して学びました。まだ生徒の多くを深い学びまで深化させることができたかというと難しかったと思いますがどの生徒の学びが深まっているかを見立てる目を養うことが実践においても授業観察においても大事だと思います。EDUPEDIAに投稿することで良い振り返りの機会になりましたので今後教師になった時に、原点としてここに帰ってくることができればと思います。
授業づくりに際しては様々な先生方にご助言をいただきましたが、中でも寺井正憲教授、松戸伸行先生には格別のご指導を賜りました。この場を借りて深謝の意を表します。
(松尾 春来)

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