スポーツの価値を基盤とした授業とは 第3回~岡山県立倉敷南高等学校の実践例~

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目次

1 はじめに

こちらは、2018年2月3日に国立スポーツ科学センターで開催された、公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構(JADA)主催の「スポーツの価値を基盤とした授業づくりワークショップ(スポーツ庁委託事業)」を取材、編集したものです。

当日は桐蔭横浜大学の佐藤豊教授の基調講演から始まりました。その後、福岡県立早良高等学校、岡山県立倉敷南高等学校、神奈川県立市ケ尾高等学校、山形県立山形中央高等学校、そして山形県庁(高校総体(インターハイ)における高校生活動)の担当者から、スポーツの価値を基盤とした授業づくりと実践例の報告がありました。午後からは、スポーツの価値を基盤とした授業づくりのワークショップをグループワークで行いました。

本記事では倉敷南高等学校が行った、生徒が自分の所属する部活動を紹介する「部活動ミュージアム」という取り組みについてご紹介します。倉敷南高等学校からは、臼井先生が発表をされました。

2 授業の方針

臼井先生(倉敷南高等学校教諭):倉敷南高校は、岡山県の南側にある倉敷市の普通科進学校で、創立44年という比較的新しい学校です。本校では「地元を愛すること」「学力をつけること」「楽しく充実した学校生活を送ること」を3つの柱としています。

この柱をもとに、保健体育では、生徒が主体的に動くということを基盤に授業をしています。「倉南 king of athlete」という3種競技の競技会では、生徒たちが自ら審判をしながら授業を運営していく形をとっています。また保健では自分の興味のある新聞記事を取り上げて考察し、それらをみんなと共有するといった授業を行います。他にも心肺蘇生体験など、生徒たちが知識を詰め込むだけではなく、体験をしながらいろんな力を身に付けられるような工夫もしています。

3 部活動ミュージアムとは

臼井先生:部活動ミュージアムとは、オープンスクールという場を利用して高校の部活動を見る機会の少ない中学生に少しでも分かりやすいように自分たちの部活をPRしようと、昨年発足したものです。今年はただPRするだけではなく、自分たちの活動の意義や価値にしっかり向き合おうという目的意識をもって行いました。また、来年には今年の活動をさらに深めて、自分たちの活動を具体化し実行に移していくという計画を立てています。

教室は運動部のブースと文化部のブースに分けて、部活ごとにパネルを作って紹介しました。ユニフォームや賞状を飾ったり、1年間通しての活動を模造紙にまとめるなど、部活ごとに中学生が楽しめてなおかつ分かりやすい掲示を目指して工夫を凝らす様子が見られました。

4 今年度の部活動ミュージアム

臼井先生:今年度の部活動ミュージアムでは部活動をPRするだけでなく、「部活動とはそもそも何か」あるいは「スポーツの魅力は何か」というような意義や価値を考える年にしました。例えば陸上部では、自分たちでテーマを絞りながらミーティングで陸上競技について深く考える時間を設けていました。

部活動ミュージアムを終えた後、生徒からとったアンケートでは「来年度はもう少し大きな写真を活用したい」「ビデオ紹介等を入れながら、もっと自分たちの活動を分かりやすく伝えたい」といった意見がありました。そこから発展して、学校のHPの方でも部活動の紹介を載せられないかと考えています。

5 部活動におけるスポーツの価値

臼井先生:こうしたアンケートをふまえ、本校にある18の部のキャプテンが集まるキャプテン会議において、部活動におけるスポーツの価値を以下の通り「仲間」「挑戦」「人間性」のキーワードが出てきました。

仲間
同じ目標に向かって、何が自分にできるか、何をしてもらいたいかを明確化することが励みになる。そうしてかけがえのない仲間をつくることができる。

挑戦
自分への挑戦。目標に向かって自分の殻を破ることができるようになる。

人間性
社会に出ていくために必要な礼儀作法等はもちろん、周囲を見る力や集団の中で自分はどうあるべきかを考える力を身に付けることができる。

6 今後について

臼井先生:こうした取り組みを経て、今各部で来年度に向けての目標設定をしています。目標は、アンケートで生徒たちに書いてもらった今の自分に足りない、あるいは今のチームに足りない部分から設定していきます。

今後はそれを達成するための具体的な方針や、各部の中での新たなルール決めをしていき、3月までにはそれぞれ部の中で意思疎通を図っていこうと思っています。

7 まとめ

臼井先生:本校では、今回の活動を通して、生徒は自分たちがしているスポーツの魅力を再認識し、自分たちの行う活動の魅力を改めて問うきっかけをつかむことができました。生徒からは、自分たちの種目に関するいろんな映像をみたり本を読んだりしながら探究することによって、誇りをもてるようになったといった声もあがっていました。

「部活動ミュージアム」は学校をあげて行っているため、他の部の雰囲気や活動についてよく知ることができます。そうした知識のもと、生徒たちは互いに励まし合ったり、いい意味で競い合ったりするようになりました

部活動では、指導者も生徒も試合に勝つために努力します。もちろん勝つことを目標にしていいのですが、その目標を達成するために自分たちはどんな努力をしてきたか、という部分が一番大事なのではないでしょうか。生徒たちの中には今、多くの失敗をしながらもチーム全員で高まっていこうという雰囲気が少しずつ見え始めましたし、我々も部活動の中で少しでもスポーツの魅力等を教えていきながら、生徒たちが明るく、活発に活動していける様、指導していきたいと考えています。

8 編集後記

部活動をしたことのある人は多くても、自分の活動についてこれほど深く考えた経験を持つ人は少ないのではないでしょうか。スポーツに限らず、行動の目的や価値を考えることは大変意義あることだと思いました。(取材・編集:EDUPEDIA編集部 粒來)

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