中央大学のサークル「Vote at Chuo!!」による主権者教育授業~高校での授業実践~

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作成者:山田 駿亮 (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

2018年2月9日(金)に、中央大学高等学校にて、中央大学のサークル「Vote at Chuo!!」が行った主権者教育(模擬選挙)の授業実践の取材レポートです。

この記事は、「Vote at Chuo!!」の紹介授業実践の内容報告「Vote at Chuo!!」代表者へのインタビューで構成されています。

2 「Vote at Chuo!!」紹介

Vote at Chuo!!は、「中大生3万人が当たり前に考えて投票に行く文化を創る」という理念のもと、若者が政治に興味を持ってもらえるよう、啓発活動をしている中央大学のサークルです。現在では、選挙権が18歳に引き下げられたこともあり、高校生を対象とした授業プログラム(模擬選挙)の実施を行っています。このサークルには現在、中央大学の学生23名が在籍しています。
 今回の授業実践の責任者は中央大学法学部2年・田邉貴大さん、Vote at Chuo!!の代表は中央大学法学部2年・杉浦佳純さんです。(いずれも2018年2月時点の学年です。)

▲左:田邉貴大さん、右:杉浦佳純さん

3 授業実践内容

対象:中央大学高等学校 第2学年(4クラス、176名)

場所:中央大学高等学校 体育館

時間:15:00~16:00

提供:Vote at Chuo!!のメンバー、外部スタッフ(大学生)

<授業の流れ>

①趣旨説明

②候補者演説

③グループディスカッション

④投票

⑤開票

⑥結果発表

⑦アンケート記入

①趣旨説明(ねらい)

2017年夏に、選挙権年齢が18歳に引き下げられて初めての国政選挙となる「参議院議員選挙」がありました。一方で、政治や選挙に対して、「なんか難しそう」「かたい」「面倒くさい」と感じている人は高校生のみならず、大学生にも多いと思います。そんな高校生と大学生に対して、政治や選挙に触れるきっかけとなる場を作りたい!という思いで本授業を企画しました。短い時間ではありますが、まずは何よりも「楽しんで」もらいたいです。
 今回は「少子化をくい止めるためにはどうしたらよいか」というテーマに対する3人の立候補者の演説を聞いた後、テーマに沿ってグループディスカッションを行い、模擬投票を行います。

②候補者演説

候補者1:小林ななみ「育児休暇を取りやすく」
→主張:企業と政府が連携して育児復帰支援を実施する。
    中小企業における育休復帰・経営支援のノウハウを持つ「育児プランナー」の数を増やすなど、
    職場復帰の不安を解消する。

候補者2:風間紫緒「学費を下げて経済的負担を減らし、子供を産みやすく」
→主張:無利子の奨学金を設置し、子育ての将来的な不安をなくす。

候補者3:尾関直人「少子化対策税の設置」
→主張:子供がいない家庭に課税し、子供が生まれたらキャッシュバックをする。
    集まったお金で不妊治療や出産費用の補助を出す。

③グループディスカッション

 1班6人程度のグループをクラスごとに6班つくります。
 1班につき1人の大学生が司会者(ファシリテーター)として入りました。

ここでは、ある班のディスカッションの様子について、見ていきましょう。
 生徒はA~Fの6名(A~Cが女子、D~Fが男子)です。

<現段階で誰に投票したいか発表する>
風間派
:私立高校なので学費が高く、大学進学の際の費用も不安だから。
小林派
:直近の未来を安定させられると思う。
:一番平和的な案だと思う。
尾関派
:税金を課すと、結婚するプレッシャーをかけられる。
:税金を課すと、子供を産もうとするのではないか。
:結婚していなくても、子供を産まなくても、お金の面で少子化対策に貢献できるから。

<話し合い>

:お金で少子化対策を行おうとするのは、おかしいんじゃないかな?
DEF:……(何も言えず)
司会:せっかくなので、候補者の方から直接、話を聞いてみましょうか。

<候補者と直接対話をする>
 グループディスカッションでは、生徒たちが候補者と直接対話する時間を設けています。候補者とのやりとりから、政策の説得性だけでなく、人間性や熱意もみることができます。選挙では、政策を眺めるだけではなかなか投票行動に結びつかないことが実感できたのではないかと思います。

<風間候補がアピール>
学費を下げて経済的負担を軽くすれば、金銭面に悩まず子供をつくれます!

:風間さんにしようかな…

<尾関候補がアピール>
財源が確保できるという面で、一番現実的なプランです!

<小林候補がアピール>
尾関候補が主張している独身税を導入したら、結婚はしたくない・子供は欲しくない人達の人権を侵害していませんか?

司会:どうでしょうか、3人の候補の話を聞いて、意見は変わりましたか?
この後、後ろに設置されている記載台の方に行き、投票してもらいます。
なお、3人とも自分の意見と合わないという場合は、白票という選択肢もあります。
ところで、みなさんは18歳になったら、投票に行こうと思いますか?

:私は誕生日が4月なので、次に選挙があったら、たぶん行くと思います。

司会:そうですね。行くこと自体に意味があると思うので、ぜひ選挙権を行使できる年齢になったら、投票所に足を運んでみてください。

④投票

文京区の選挙管理委員会から、実際の選挙で使用されている記載台と投票箱をお借りして、模擬投票を行いました。学生の指示が丁寧だったため、スムーズに投票が進んでいました。

⑤開票

開票作業も大学生数名が担当しました。2つある投票箱の票を候補者ごとに分け、分けた票を3人で候補者ごとに数え、最後に開票リーダーに数えた票数を報告し、集計していました。

⑥結果発表

小林ななみ候補:82

風間紫緒候補:39

尾関直人候補:51

白票:2

よって、小林ななみ候補が当選となりました。

⑦アンケート記入

最後にホームルームクラスに戻り、今回の授業の感想を高校生に書いてもらっていました。

「投票自体は簡単なことが分かったので、これなら行ってみようと思った」「自分たちも政治にかかわる一人なのだと再認識した」「投票に行くとき、今回のおかげで困ることはないと思う」といった肯定的な意見もあれば、「誰を選んでも同じだったと思う」「少子化対策として考えが甘いのでは」といった批判的な意見もあったようです。

投票への敷居を低くすることは大切ですから、その点は成功していると言えそうです。一方で、「誰を選んだとしても同じ」というのは、選挙のたびによく耳にする言葉です。実際の選挙では、選挙区に出馬する候補者が「魅力を感じない人ばかり」という可能性があります。その際にどのような行動をとるべきなのか。生徒たちが模擬投票を通して、投票行動だけでなく、普段から政治に目を向けられるような仕掛けがあると、主権者教育としてより良いものになっていきそうです。
 全体的には、60分という短い時間の中で、グループディスカッションや投開票がスムーズに進み、生徒たちも安心して学びを深めることができたのではないかと思います。

4 Vote at Chuo!!代表・杉浦佳純さん インタビュー

Q. Vote at Chuo!!はどのような経緯で創設がなされたのでしょうか。

私は3代目の代表なので、初代代表の古野香織さんから聞いていることをお話します。
 もともとは、中央大学に投票所を設置することを目標に活動していましたが、残念ながら、キャンパスがちょうど市境付近にあるなどの理由で、実現しませんでした。そこで、まずは大学生が政治に関心を持ち、投票に行く気持ちになるような啓発活動を始めることにしました。そのための方法として、大学生が模擬選挙の運営を行うことで、政治に関心が持てるようになるのではないかと考えました。主権者教育の授業は、高校生のみならず、大学生に対する啓発にもなっているのです。授業はVote at Chuo!!のメンバー以外の方にもお手伝い頂いており、高校生からも刺激を受けています。

Q. これまでの主なVote at Chuo!!の取り組みを教えてください。

八王子市明るい選挙推進協会の方々との啓発活動や、八王子市選挙管理委員会との勉強会、大学内期日前投票所の設置についてのシンポジウム開催などを行ってきました。
 また、都立武蔵野北高等学校や中央大学の附属高校で主権者教育の授業を実施しています。
 最近では、2017年10月に行われた衆議院選挙の際には、不在者投票の代行を行いました。中央大学の学生は一人暮らしが多いです。住民票を移していないと、地元の自治体へ不在者投票という形になりますが、かなり手続きが煩雑で、投票をしない人が多いのです。そこで、不在者投票をお手伝いする取り組みをしました。封筒や切手などもサークル費で用意しました。その結果、50人ほどの方に来ていただくことができ、感無量でした。SNSで「Vote at Chuo!!がなかったら投票していなかった」と投稿してくれた方もいて、本当にやって良かったなと思います。

Q. 今日の授業の手応えはいかがでしたか。

生徒一人ひとりが意見を明確に話すことができており、驚きました。班の人数が6~7人と多かったことで、生徒同士で意見の言い合いがあり、良かったと思います。政治に興味を持って、活発に議論してくれたので嬉しいです。

Q. 今後は、どのような活動を展開していきたいとお考えですか。

主権者教育の授業を、中央大学の付属校のみで実施するのはもったいないと思っているので、いろいろな学校の先生方に広報していきたいです。主権者教育を実践できる一番の主体は学校の先生方だと思っています。私たち大学生ができることには限界がありますから、社会科の先生、さらには学校全体で主権者教育に積極的に関わってほしいと考えています。そのために私たちも全力でサポートします。

Vote at Chuo!!が実施する主権者教育授業についてのお問い合わせは、

Vote at Chuo!!ホームページ voteatchuo.16mb.com/

もしくはVote at Chuo!!メールアドレス vote.at.chuo@gmail.com

まで。

5 編集後記

高校生のグループの中に大学生がファシリテーターとして入り、一緒にディスカッションをするのが印象的な模擬選挙の授業実践でした。高校生だけでなく、実施する側の大学生自身もたくさんの学びを得ることができる、という考え方が面白いと思いました。主権者教育を学校全体で取り組めば、子どもたちだけでなく、先生自身、あるいは保護者の方々にまで、投票行動を促すことができる可能性を感じました。なお、本記事に記載されている情報は、すべて2018年2月時点のものです。
(取材・編集 EDUPEDIA編集部 山田駿亮)

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