子どもの貧困と教育〜学校の先生にできること〜

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作成者:竹本 理英さん

1 はじめに

本記事は子どもの貧困と教育行政の専門家である東洋大学教授の藤本典裕先生への取材をまとめたものです。学校事務職員の方々と共に長年子どもの貧困問題に取り組んできた藤本先生の立場から見た、子どもの貧困という問題への支援の方法について伺いました。

2 子どもの貧困とは

そもそも「貧困」とはどのように定義されているのでしょうか。「貧困」は大きく言うと「絶対的貧困」「相対的貧困」の二つに分けられます。日本で近年深刻な社会問題として認識されつつある子どもの貧困はこの二つのうち「相対的貧困」に分類されます。その日食べる物にも困っている人々を指す「絶対的貧困」とは違い、「相対的貧困」は家庭の所得が国の中央値の2分の1未満の世帯の人々を指します。現在の日本では子どもたちの6、7人に1人が相対的貧困の状況下にあると言われています。貧困家庭には経済的な理由で学校や塾に通えなかったり、毎日家計を支えるために夜遅くまでアルバイトをしていたりする子ども達が多くいるのが現状です。

  就学援助制度とは

就学援助制度とは、公立の小中学校に通う生徒で経済的な理由で修学費用を払うことができない世帯に対し、学用品費や給食費などを援助する制度のことです。貧困世帯にいる子どもたちへの就学援助は国や都道府県からの補助金を元に、主に市区町村によって行われています。就学援助には全国共通の認定基準がないため、個々の自治体の財政力や教育に対する意識に応じて教育にかける予算は大きく変化し、就学援助率にも地域差ができてしまっているのが現状です。特に財政の厳しい自治体では就学援助の基準が年々引き下げられ、援助を受けられる子ども達の数は減少しています。また、多くの自治体が就学援助基準の基礎としている生活保護基準そのものが引き下げられていることもこれらの問題を悪化させる大きな要因となっています。子どもの教育の権利を守るために、一刻も早い行政の教育にかける予算の見直しが必要です。

3 見えない貧困に目を向けるには

普段毎朝学校に来て、授業を受け、友達と話し、何事もなく下校する子ども達と何気なく接しているだけでは、学校の先生方が子どもの貧困に気づくことはほとんど不可能です。子ども達は自分の家庭が経済的に問題を抱えていることを決して見せようとはしません。そのため、日々の子ども達の様子を注意深く観察することがとても大切です。経済的な事情から不規則な生活をしていたり、不安を抱えていたりする子ども達は身体にも変化が表れます。遅刻が多くなった、居眠りが多くなった、怪我が多くなった、など日常のふとした行動に注意を払うことで、子ども達が抱えている状況が自然と見えてくるかもしれません。

4 学校の先生にできること

教育費の支払いなどは全て学校の事務職員によって管理されていることが多く、学校の先生が貧困家庭の子ども達の現状に気付きづらい、ということが近年問題となっています。公立の小中学校では授業料や教科書費用の負担はないとはいっても、学用品費、修学旅行費、クラブ活動費など、家計への負担は決して少なくありません。全ての児童•生徒が家庭の事情にかかわらず十分な教育を受けられるようにするためには、学校の先生が常に、お金をかけずにより良い教育を届けることを第一に考え、事務職員とも密にコミュニケーションをとり、少しでも保護者への負担を減らす努力をすることが重要です。

学校でできる支援は限られている中で、学校の先生は子ども達を取り巻く環境に注意を払い、最大限一人一人にあった教育を提供するよう努めなければなりません。学校で対等に話ができる大人が一人いるだけでも、子どもは大きな安心感を得ることができます。子どもが悩みを抱えていれば、その子一人の問題にせずに、子どもの気持ちに寄り添い、教師間でも話を共有することがとても大切です。

5 先生へのメッセージ

毎日忙しい中で、授業の準備をし、子どもと接し方に気を遣い、様々な努力をされていると思いますが、一つのクラスの中に経済的な困難を抱えている子ども達が少なからずいるということを常に心に留めていて欲しいと思います。彼らは自分の家庭の状況を話したり、辛さを見せたりはしないかもしれないけれども、それぞれが日々悩みを抱えていて、中には話し相手を求めている子ども達も沢山います。学校の先生という立場から、貧困の問題を直接解決することは難しいけれども、子どもたちの日々の言動を見つめて彼らに寄り添う努力をし、社会福祉や行政と連携して支援を必要としている子ども達をサポートすることで、学校の先生は子ども達がより楽しい学校生活を送る上で重要な役割を果たすことができるのではないかと思います。

6 実践者プロフィール

藤本典裕(ふじもとのりひろ)
東洋大学教授 専門分野:教育学、教育行政学
著書に「学校から見える子どもの貧困」(共編書)など

7 編集後記

藤本先生に取材をさせて頂く中で、子どもの貧困の見えづらさ、経済的に困難な家庭にいる子ども達を支援することの難しさを改めて実感しました。先生方の問題意識なしでは、この問題は解決することはできません。私たち一人一人が子どもの貧困に目を向け、自分ができることを考え、実践することが、子どもの貧困解消への大きな一歩になるのではないかと思います。
(編集・文責 EDUPEDIA 編集部 竹本理英)

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