1.道徳科における評価の基本的な考え方
・単なる話し合いや読み物の登場人物の心情の読み取りに偏る授業はNG。
⇒問題解決的な学習など質の高い多様な指導方法を展開することが必要。
・児童生徒:自らの成長を実感し、意欲の向上につなげていくもの。
教師:目標や計画、指導方法の改善・充実に取り組むための資料。
・道徳科の評価は、「各教科の評定」や 「出欠の記録」等とは性格が異なる。
⇒調査書に記載せず、入学者選抜の合否判定には活用しない。
2.道徳科の特性と方向性
よりよく生きるための基盤となる道徳性を養うため、
(1)道徳的価値についての理解をもとに、
(2)自分を見つめて、
物事を多面的(様々な側面から)・多角的(様々な視点から)に考えたり、
(4)問題を解決したり、議論したりして、
(5)自分の生き方についての考えを深める学習を通して、
(6)道徳的な判断力、心情、やってみようという気持ちと態度を育てていくこと。
3.評価における工夫
ポートフォリオ評価:書きためた道徳ノートやワークシートから、児童生徒の学習状況や成長の様子を見取る。
エピソード評価:児童生徒の発言や様子を机間指導の中で書き留めていき、継続的に児童の学習状況や成長の様子を見取る。
⇒年間35時間の授業という長い期間で児童生徒の成長の様子を見取っていく。
4.道徳科の特質を踏まえ、評価にあたり
・数値による評価ではなく、記述式とすること。
・個々の内容項目ごとではなく、まとまりを踏まえた評価とすること。
・他の児童生徒との比較による評価はNG
⇒「児童生徒がいかに成長したか」を積極的に受け止めて認め、励ます個人内評価(※)として行うこと。
※個人内評価:児童生徒のよい点を褒めたり、さらなる改善が望まれる点を指摘したりするなど、児童生徒の発達の段階に応じ励ましていく評価のこと。
・学習活動において児童生徒がより多面的・多角的な見方へと発展しているか、道徳的価値の理解を自分自身との関わりの中で深めているかといった点を重視すること。
ex.
・自分と違う意見を理解しようとしているか。
・複数の道徳的価値の対立する場面を多面的・多角的に考えようとしているか。
・読み物教材の登場人物を自分に置き換えて具体的に理解しようとしているか。
・道徳的価値を実現することの難しさを自分事として捉え考えようとしているか。
といった点に注目して見取り、特に顕著と認められる具体的な状況を記述する。
参照文献:文部科学省,「特別の教科 道徳」の指導方法・評価等について(報告)
5.著者プロフィール
杉本 大昂(すぎもとひろたか)
1991年 静岡生まれ
立命館大学産業社会学部卒
京都教育大学大学院連合教職実践研究科首席修了
略 歴
・立命館大学在学中にNPO法人ROJEにて活動
「関西教育フォーラム2011」プロジェクトリーダー,EDUPEDIA 編集者
・京都教育大学大学院在学中に京都市内の小学校非常勤講師を経て現職。
現 在 岐阜県公立小学校 教諭
論 文
2013
・「なぜ文化階層の低い家庭の子どもは「学力」が伸びにくいか」
-立命館大学産業社会学部教育賞
2014
・ 「厳しい教育環境にある家庭」の子どもの「学力」をいかにして伸ばすか
-立命館大学産業社会学部優秀賞
・「いかにして『厳しい教育環境にある家庭』の子どもに言語活動の充実を図るか」
-日本教育メディア学会第21回年次大会発表論文集、pp.178-179
2015
・「初等社会科における『公民的資質の態度』育成をめざした授業実践」
-日本教育メディア学会第22回年次大会発表論文集、pp.96-97
2016
・「教育社会学からみた小学校社会科におけるメディア・リテラシーの育成をめざした授業実践 」
-日本教材文化研究財団メディア・リテラシー研究会『メディア・リテラシー教育の実践事例集の開発』,
調査研究シリーズ70,pp.61-66
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