"小さなエンジニア"を作る教室とは? (米田貴先生)

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作成者:Ken Kamishima (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

本記事は、2018年6月15日(金)~16日(土)に大阪府で開催された「New Education Expo 2018」で行われたセミナーのうち、「高校におけるアクティブ・ラーニング実践~高大接続、実社会の人材作りを意識した授業改善事例~」の模様を編集・記事化したものです。

近年、教育現場ではホットな話題の1つである「アクティブ・ラーニング」の実践例や重要なポイントを、登壇者の一人である、神戸大学附属中等教育学校の米田貴先生に紹介していただきました。

2 米田貴先生による講演

小学校でのプログラミング教育の実施なども踏まえ、より社会への接続を意識した学びを実践することを心がけてきました。プログラミングを学ぶというより、プログラミングを活用して生徒が問題解決に取り組むための工夫を凝らしています。

①「小さなエンジニア」

以前、先生が示したプログラミングコードを生徒が写して、それに基づいて生徒が機械を動かす、という主旨の授業をしたことがあります。しかし、教室というのはクリエイティブな空間として存在するべきであり、その中における生徒達は「小さなエンジニア」です。先生が課題を示してクラス内の生徒全員にやってもらうよりも、生徒が「これを作りたい!」という内発的動機によって自分のペースで活動できる環境を作るべきなのです。 

②授業の流れ

実践の概要を説明します。授業のタイトルは、
「学校生活をもっと楽しく!『あったら楽しい』アイテム開発」です。

まずは身の回りにどのような問題があるかについて4~5人の班で討論し、レゴブロック、ペーパークラフト、micro:bit(マイクロビット、プログラミング教育用のマイコンピュータ)を使って、その問題を解決するためのアイテムを考えました。作品制作の後は、プレゼンと出資会形式での相互評価を行いました。

micro:bitは、イギリスの国営放送BBCが中心となって、イギリスの10~12歳に無償で配布されたことでも知られています。1セット2000円程度で、LEDや各種センサーなどが付属しており、ワニ口クリップをつないで簡単な電子回路を組むこともできます。セットが複数あればBluetoothでの通信もできたりと、様々な形で使用することができるので、この授業ではこれを活用しました。

授業全体としては10時間使いました。前半の5時間は、センサーの使い方や外部のモーターの組み込み方などの説明に使い、後半の4時間で作品制作、最後の1時間で製作したアイテムについて発表する、という流れです。発表は「出資会形式」で行ったのですが、これは架空の通貨を作り、面白いアイテムを製作した班に投資するというものです。

③実際の成果物について

実際の作品をいくつか紹介します。

「ダメよ!ねちゃダメマシーン」

 授業中に眠気が来てしまった時に何とかしたい、という考えから作られました。光センサーがついていて、寝てしまってセンサーの反応する部分が影になると、ピコピコハンマーが落ちてくるという仕掛けです。

「お掃除手伝いロボット」

 ワイヤレスで操作でき、バッテリーも搭載しています。前輪と後輪をそれぞれ操作するリモコンを動かすためにmicro:bitを使っており、傾きセンサーを活用することで前進、後退、カーブなども可能です。操作性の高さには舌を巻きました。

先生の指示で何かを作るという授業に比べ、この授業ではアイデアとして出てきたものが非常に多く、生徒達も真剣に授業へ参加しているように感じました。例えば、作品製作のためには配線が必要なのですが、「何かを作ろう」という内発的動機によって、生徒全員で話し合いながら、配線の構造を理解しようと熱心に授業に取り組んでいました。その熱意の強さは授業外でも現れていて、一部の生徒は昼休みになっても教室に戻らず話し合っている、という場面も見られました。

「自分たちでやりたい」と思って生徒が取り組んでいるときには、学びの深さや出来ることの範囲が、先生の想像を遥かに超えていくのだと実感しました。

④評価について

毎回の授業後に振り返りシートを書かせているのですが、授業を重ねるに連れて、作りたいもののアイデアが具体的かつ高度なものに変わっていくので面白いです。

評価についてですが、チームとしての評価は作品・プロモーションムービー・紙媒体のチラシ、個人としての評価は振り返りシート・チーム内相互評価・チーム外評価を組み合わせたものにしています。ただ、先生と生徒がどちらも納得する評価基準を設けられていないという問題点があるのが現状です。

⑤その他の実践

プログラミングの難しい点に、例えばVBA(Visual Basic for Applications、Microsoft Officeに搭載されているプログラミング言語)を使ってExcelを動かすときに、頭の中で「VBAがどう動くのか」「Excelがどう動くのか」というイメージが湧きにくいというものがあります。こういうときには「ピクトグラミング」というものを使っています。ピクトグラミングでは、動かす対象が「言語」や「数値」ではなく「人」なので、水泳部の子だったら水泳の動きをさせたいといったような、自分の想像しやすい動きを投影することで、プログラムの動きを容易にイメージできるというメリットがあります。

また、コンピューターサイエンスについてアクティブ・ラーニング形式で学べる教材として、「ヒューマンピクトグラムアンプラグド」というものが開発されています。2進数やアルゴリズムといった概念を、人型の教具を使って、何が起こっているのかが「見て分かる」教材を作っています。

3 「New Education Expo」について

New Education Expo」とは、毎年日本全国で開催される、教育関係者向けのセミナー&展示イベントです。学術機関・教育現場・官公庁・産業界等から教育界で活躍されている方々が講師として登壇し、教育に関する話題のテーマに関する講演を聴講することができます。

今年は、プログラミング教育教材やICT機器といった、最先端の技術を用いた教材の展示も行われ、140以上の企業が集まりました。

4 登壇者プロフィール

米田貴 先生

神戸大学附属中等教育学校。情報科・技術科。(2018年6月16日時点のものです)

5 編集後記

自発的な学習を促したい、というのは先生の常なる願いであると思いますが、実現しようとすると中々難しいのが現状です。ICTは上手く活用すれば、生徒達を勉強の面白さに気づかせ、時には大人を驚かせるような学びに発展させることがあるのかもしれません。

(編集・文責 EDUPEDIA編集部 上島憲)

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