1 はじめに
2019年2月1日(金)、所沢市立三ケ島中学校で三ケ島アートプロジェクトⅢ「所沢市学び創造アクティブプラン学校クリエイト研究委託校発表会」が行われました。
本記事はその中で行われた、美術鑑賞を活かした中学2年生国語の『君は「最後の晩餐」を知っているか』の授業を紹介しています。
発表会全体に関してはこちらをご確認ください。
また、同発表会にて行われた対話型鑑賞の取り組みに関してはこちらをご覧ください。
2 『君は「最後の晩餐」を知っているか』に関する取り組みの紹介
『君は「最後の晩餐」を知っているか』は光村図書の中学校2年の国語教科書に掲載されている美術に関する評論の文章で、「最後の晩餐」に込められたレオナルド・ダ・ヴィンチの科学的な工夫を紹介しています。
今回の取り組みでは、授業を通して筆者の主張を理解するとともに、筆者や他者の意見を自分の考えと比べて再考し、根拠を基に結論を導き、まとめる力をつけたいとしています。
3 『君は「最後の晩餐」を知っているか』の簡単な単元計画(全6時)
今回の研究授業で取材したのは第6時の授業ですが、それまでの授業の流れを簡単にご紹介します。
また、単元の授業を行う前に、生徒たちは美術の授業で実際に「最後の晩餐」を鑑賞しています。その際、生徒たちは
- この絵を見て気づいたことをたくさん記入しよう!
- この絵はどういう場面を描いたんだろう?
- この絵が描かれたストーリーを自由に書いてみよう!
という項目を設けたワークシートを完成させています。
4 『君は「最後の晩餐」を知っているか』の授業の流れ
研究授業で行われた第6時の授業の流れをご紹介します。
導入(5分)
前回の授業でまとめた筆者の主張を振り返ります。
また、評論の目的として筆者の考えを理解することと、自分で考えることがあると再確認し、今回の授業では後者を目的にしていると伝えます。
班での話し合い(30分)
前述の美術の鑑賞の際のワークシートを生徒たちに返却し、それをもとになぜ「最後の晩餐」が長い間素晴らしい作品と評されているのかを、3〜4人のグループに分かれて考えます。
班ごとに1枚下記のワークシートが配られ、それに沿って話し合いが行われました。
まずは、美術で「最後の晩餐」を見た際に記入していた「絵を見て気づいたこと」を班でお互いに発表し、印象に残った共通点を探ります。
そうして出てきた共通点に対して、なぜそれが印象に残ったのか、そこに作者の意図はあるのかということを話し合い、「最後の晩餐」が素晴らしいとされてきた理由を考えます。
それを踏まえ、最終的には班ごとに「最後の晩餐」はどのような作品なのか、という評価を考えます。
美術の鑑賞での感想を話し合いの土台として用いることで、少々難しいグループ活動でも、生徒たちは自分の意見を自然に持つことができ、また意見を発表するハードルが下がっているように感じました。
また、話し合い活動の間、先生はタイムキープを行いながら、それぞれのグループを回って話し合いのサポートを行っていました。
少しふざけた意見を言う生徒に対しても、それを否定するのではなく、「なぜそう思うの?」と具体的な理由を丁寧に聞くことで、生徒の感じたことを明確にしていたのが印象的でした。
クラスでの発表(15分)
それぞれの班で考えた「最後の晩餐」の評価を、黒板に貼って発表します。
ワークシートに発表のフレームワークを示していることで、発表のハードルは下がっているように感じました。また、先生から逐一肯定的なフィードバックが与えられ、発表しやすい雰囲気が作られていました。
5 編集後記
各々が自由に、かつ自然に何らかの感想を抱くことのできる美術作品は、互いの意見を尊重すると同時に、自分の意見の具体的な根拠を探していく話し合い活動を行う上で格好の題材であると感じました。
三ヶ島中学校の取り組みにより、読むだけにとどまらない1歩先の国語教育における、美術鑑賞の可能性が示されています。(取材・編集 EDUPEDIA編集部 藤井和恵・横田和也)
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