不登校の生徒にどのように接したらいいの? (フリースクールRiz代表インタビュー)

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目次

1 はじめに

本記事は、2019年3月16日に、中高生向けフリースクールRiz代表の中村玲菜(ニックネーム:たかれん)さんにインタビューを行った記事です。たかれんさんご自身のいじめ・不登校の経験や、先生方が不登校の生徒と接する際のポイントなどをお聞きしました。

フリースクールRizの詳細については、こちらをご覧ください。

2 インタビュー

 —まず初めに、たかれんさんご自身も不登校を経験していたとのことですが……?

学校に行かなかった原因はいじめでした。家庭内の雰囲気は良くなく、親に相談できず、友達や先生にも相談しづらい状況でした。

 —当時の先生は、生徒であるたかれんさんに対してどのように接していましたか?

いじめについて一度先生に相談したときのエピソードをお話します。

私は、クラスで私に対する悪口が聞こえてきたときにはその内容をメモして、後から先生に個人名を挙げて全て事細かに伝えました。

先生は次の日の放課後にその生徒たちを呼び出して、「中村がこんなことを言っていたぞ、やめろ」と伝えたのです。それ以降いじめはむしろ陰湿になっていき、「先生でも状況を変えられないのならどうしようもないなぁ」と思ってしまいました。先生が家庭訪問に来ることもありましたが、最低限の会話だけで済まして個人的な会話までは至りませんでした。

 —先生に対する信頼感がなくなってしまったのですね。仮に先生はどのように接してくれていたらよかったと思いますか?

私も教員を目指して勉強していた時期があるので先生一人でできることは限られているということは痛感していますが、廊下で声をかけてくれるといったことをしてくれるだけでもそのときの私の気持ちは変わったんじゃないかなと思いますね。

しかし、あの先生だったらいっそそっとしておいてくれた方がよかったかもしれない、とも思います。
それに比べ、転校先の先生はとてもいい先生でした。その先生だったら、世間話をするだけでもプラスに捉えることができました。事が起こってからどう対処するかも大切ですが、学校に来なくなる前に関係を築くことの方がより大切だと思います。

 —「転校先の先生」というのはどんな先生だったのですか?

「この先生は私のことをちゃんと見てくれている」と思える先生でした。初めて、先生・親・私の3人で会った時に、一番最初に親ではなく私に挨拶をしてくれました。不安なことなども細かく話を聞いてくれて、私に合いそうな子や部活を紹介してくれたりもしました。

そして、そのような対応は決して「特別扱い」ではありませんでした。私がいけないことをしたときは、他の生徒と同じように何がだめでどうしたらいいかを教えてくれる先生でした。「私も一人の生徒なんだな」と思うことができ、他の生徒と「平等」に接してくれることが嬉しかったです。

転校する前は「学校に行ってない子」という扱いだったので、その点が大きく違ったなと思います。

 —フリースクールを運営していて学校の先生と接する機会はありますか?

フリースクールに通っていた生徒で、転校した生徒がいたときに、親御さん伝手で学校の先生とご連絡する機会がありました。転校先の担任の先生がその生徒の様子を事前に教えてほしいと親御さんにお願いしたそうなのですが、親御さんが見ている家での様子より、フリースクールで活動している様子のほうがより伝わる、とのことでフリースクールでの様子を親御さんの代わりにお伝えに行きました。継続的に先生方ともやり取りをして、今の子どもにどんなサポートが必要なのかを共有しています。実際に学校へ伺い、Rizの活動やRiz内での様子などについてご説明することもあります。

まだ先生方にとってフリースクールが馴染みあるものではなく敵対視されることが多いですが、これからはフリースクールをより身近に感じてもらいたいと思っています。

 —学校に行けない生徒に対して、学校の先生はどのように接してほしいとお考えですか?

学校の先生は「学校に来る生徒」を相手にするので、正直フリースクールを勧めることは難しいんじゃないかと思います。

学校に戻るのは嫌だけど、高校や大学に進学したいと思っている不登校の子は多いです。進路を提示するときに、フリースクールに限らず様々な選択肢があることを、大人として子どもに教えてあげてほしいです。

 —最後に、学校の先生方にメッセージをお願いします。

「一人で解決しようとしなくてもいい」ということですかね。

生徒が学校で「ちょっと嫌だな」と思うことがあったときに、先生がいち早く一人の生徒の変化に気づくことは難易度が高いと思います。生徒に接することだけではなく保護者対応や雑務もある状況下で、先生が生徒一人一人に目を向けることは大変なことだと思います。

しかし、「学校に行きにくい」と感じた生徒が、担任の先生には話せないけど保健室の先生には話せる、というように、距離が離れているからこそ相談できる関係もあると思います。学校内で役割分担ができるとより子どもたちに心地よい環境を提供することができると思います。

また、フリースクールの存在もあることで配慮が必要な生徒には1対1で対応することができます。もちろん集団になじんでいたい生徒がいたり、学校でしかできない思い出もあったりするので、単純に生徒たちが合うところを選択すればいいと思っています。

フリースクールは、学校と一緒で「教育を提供する場所」に変わりありません。フリースクールを「小さな学校」として認識してくれると嬉しいです。

3 プロフィール紹介

中村玲菜(Reina Nakamura)

1997年生まれ、フリースクール「Riz」代表。いじめや不登校の経験を受け、高校生の時に不登校の10代向けコミュニティサイトを設立。保護者への支援の必要性、リアルな場の重要性を感じ、2018年6月にフリースクール「Riz」を開設。現在もLINEやTwitterを利用して小中高生からの相談に乗り続け、不登校や家庭内不和に悩む子どもたちへの支援をおこなっている。
(2019年5月時点のものです)

4 編集後記

たかれんさんご自身のいじめや不登校という経験を、今度は支援者側の立場になって「生徒たちに寄り添う」という形でパワーに変えており、たかれんさんのような存在はとても貴重だなと感じました。このような若さでフリースクールを運営し、生徒たちの居場所づくりを行っているたかれんさんの姿を見て、励みになる教育関係者も多いのではないかと思います。
この記事を通して、フリースクールの存在を知る先生方が増え、生徒一人一人により適した教育を提供できることを願っています。
(取材・編集:EDUPEDIA編集部 横田和也・仁科美里・勘田真由)

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