主体的な学びを育む問いづくりセミナー~第3回 ハテナソンの作り方~(ハテナソン共創ラボ 佐藤賢一氏)

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目次

1 はじめに

この記事は、2019年3月30日に広島市で開催された第10回問い立てラボ「主体的な学びを育む問いづくりセミナー」~問いをもつ喜び、問いから始まる学び場に~の様子を取材し、編集したものです。
 イベント当日は、NPO法人ハテナソン共創ラボ理事長の佐藤賢一氏による、問いづくりのワークショップとセミナーが行われました。

第3回では、教師の立場でハテナソンを企画する方法について佐藤氏が説明していたセミナー部分をご紹介します。
 
他の記事はこちら↓
 
~第1回 ハテナソンとは?~
~第2回 ハテナソンを体験してみよう~

2 ハテナソンの作り方

いま皆さんに体験していただいた学びの場やQFTの設計の手順について、この企画シートに沿って説明します。
 
①授業科目/事業名
②学習目標

①に授業科目や講座名を書き込み、②にその単元レベルや年間レベルでの学習目標を書き込みます。
 
③ハテナソンの位置づけ

この授業の中でハテナソンをどのような位置づけにするか、つまり事前学習なのか、学びの進捗をはかるものなのか、学びの成果を測るためのものなのかということをイメージして、問いづくりがどのような場面で活かせそうかということを書き込みます。
 
④質問の焦点

「質問の焦点」は、文章や短いフレーズ、あるいは国連の公式文書など、学ぼうとする内容に関わりがあり、それ自体が質問でない限りは何でも素材として活用できます。1枚の写真で質問を作ってもらうこともあれば、今回のようにロゴデザインと文字情報を対象にすることもあります。また動画を見てもらうこともありますし、数学の授業であれば公式を見て問いを立ててもらっても良いかもしれません。

これには様々な事例があるので、こちらのサイトなども参考にされると良いと思います。
 
⑤優先順位付けの基準/想定される質問

ここでは生徒から挙がりそうな質問をあらかじめシミュレーションしておき、それをどの程度コントロールするかを考えます。生徒の立場になって考えるのはなかなか難しいですが、ワークが生徒たちにとって深い学びを促すようなものになるかどうかということが見えてくるのではないかと思います。

さらに出てきた質問を優先順位付けするにあたって、たとえば「中間試験期末試験の対策としての学びに役立つ問いはなにか」「一週間後に提出してもらうレポートのテーマとしてふさわしい問いは何か」といった基準を提示すると、生徒は良い意味で誘導され、問いを絞り込んで質問の優先順位をつけることができます。
 
⑥質問の使い道

こちらは先ほどの基準と背中合わせの関係です。作った問いはレポートの課題に使うのか、試験問題のシミュレーションとして使うのか、1年2年がかりで取り組む探究課題なのか、ということを書き込みます。問いが作られる現場は目的も様々なので、その出口を教師側が想定して準備しておく必要があります。これは質問を出発点に学びを作っていく際に非常に大事になります。
 
⑦振り返り

最後の「振り返り」の欄は、QFTが終わった後に生徒にいくつか質問を投げかけて定着を図ったりメタ認知を涵養してもらったりするものです。どのような質問を投げかければそれが可能になるかを考えて書き込みます。これは先ほどの体験ワークや、こちらの本を参考にしていただければと思います。
 

このように、このワークシートの空欄を行き来しながら、生徒たち自身が問いを作って掘り下げていくような授業をデザインしていきます。

振り返りの質問の作成まで終わったら、最後に全体の流れを考えます。つまり机の配置や語りかけの方法、時間配分など、ファシリテーションのデザインを考えるということです。個人ワーク、ペアワーク、グループワーク、あるいは全体で情報を共有するためのジグソー法やハイライト法など、様々な手法を用いることができます。

コンテンツやプロセスはプログラムを効果的なものにするために重要な要素です。これらがはっきりしてきたら、生徒の立場になってどのような動き方がスムーズか、あるいは良い意味での違和感を醸し出すか、ということを考えていただけると良いと思います。

また、たとえば生徒を突然当てるようなことをすると、生徒にとって安心できない環境を作ってしまうことになります。そうするとなかなか質問が出ない状況を脱出することができず上手くいかなくなる可能性もあります。
 

あとはこのようなチェックリストを使って、大きな学習目標をみんなで達成していくにあたってこの問いづくりが役立ちそうかどうか、というそもそもの部分を確認します。

どんなメソッドでも、どれを選べば一番効果的かということはやってみなければ分かりません。ただそれではプロとして困るので、ある程度自分たちの経験をもとにしたり周りの同僚の力を借りて、本当にこれで良さそうかということをしつこく検証しながら進めていく必要があるのではないかと思います。

私がQFTを実践してきて分かったことは、実践者にとって優れたメソッドのように見えていても、上滑りすることはあるということです。それを防止するために、生徒同士の関係づくりや好奇心の喚起など、前後の文脈づくりが重要になります。

そのようなところから地ならしをしていかないとせっかくのメソッドが活きませんし、逆に言えば地ならしをすることで、QFTだけではなく様々なワークが生き生きしてくるのではないかと思います。

3 参考図書の紹介

4 プロフィール

佐藤賢一氏
京都産業大学総合生命科学部 生命システム学科 教授      
専門分野:生命科学

5 他の記事

 
~第1回 ハテナソンとは?~
~第2回 ハテナソンを体験してみよう~

6 編集後記

ハテナソンを実践するための手順や考え方をかなり詳しく知ることができ、今すぐどこかで実践してみたい気分です。探究の授業等だけではなく、使い道は無限に広がっているのではないかと思います。

(取材・編集:EDUPEDIA編集部 平原由羽)

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