法務教官に聞く! 少年院ってどんな場所?(watcha Nagoya講演録①へいなかさん)

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作成者:加藤 舞 (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

2019年3月27日(水)に名古屋市内で催されたイベント「watcha Nagoya」における少年院法務教官へいなかさんの講演録です。塀の中である男子長期少年院での教育実践から得た見識についてお話しされています。

「watcha」についてはこちら

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<「watcha Nagoya」関連記事>
「watcha Nagoya」講演録②チームけテぶれ

2 講演録

私からはあくまでも教育実践の一例を提示するのみですので、「貴方は貴方の答を見つけてください」。

私は子どもの人生を色鮮やかな絵にしたいと思っており、子どもを取り巻く大人が彼らの人生を彩って欲しいと思っているからです。

だから貴方は貴方の色で、子どもたちに教育を行ってください。

その子の人生はあなたの人生ではない

さて、質問です。

あなたのまわりに非行少年はいますか?

会場参加者:(ほとんど手は挙がらない。)

あなたのクラスに問題児はいますか?

会場参加者:(半分ぐらい手を挙げる。)

手を挙げた方、まずはその子のために奮闘している自分をこころの中で労ってあげてください。そして労うための手段としてセルフハグをやってみてください。最後に「おまえはよくがんばっているぞ」を3回唱えてください。この手法は、親に抱きしめられたことがない子に効果があり、少年院で私もよく使う手法です。

トークタイム

さて、ここからは皆さん同士で話し合ってもらうトークタイムとします。この2つのテーマについて、皆さん自身の経験を話し合ってください。

私のクラスの問題児

今の悩み、苦しみ、葛藤

会場参加者1:宿題をやってこない……。注意したら教師の揚げ足ばかりとる……。そういった子たちへの対応をどうしたらよいかわからず、精神的にきついときがあります。

会場参加者2:私は塾の経営をしているのですが、同じことで悩んでいるのでとてもわかります。なんでやってこないの! ってもどかしいですよね。
……

愚痴っているはずなのにいつの間にか皆さん自然と笑顔になりましたね、すっきりされましたか?

学校の先生方は真面目なので子どもの一挙一動を全て自分の責任だと捉えがちですが、そうではありません。

ここで私が皆さんにお伝えしたいことは、「その子の人生はあなたの人生ではない」ということです。最近メディアでよく、「教師の一言がきっかけで自殺した」と言われていますが、そんなことはありえません。最後の一言がたまたま教師の一言だっただけですから。

非行に関する誤った理解

「家がない子、お金がない子が非行に走る」という誤解

家がなく、お金がなければ非行は必然なのでしょうか?
 絶対違います。

東日本大震災の際、家もお金もなくなるという状況の子が続出したわけですが、それを理由とした子どもの犯罪率は上がっていません。もし震災を受けた子が非行に走れば多くの人が犯罪者になりますよね。

「非行は親の責任である」という誤解

非行は親の責任なのでしょうか?

これも違います。

非行少年が更生するために必要なもの

では非行少年が更生するために何が必要だと思いますか?

会場参加者:寄り添うこと、居場所、斜めの人間関係などがよく言われていますが……。

確かにそういった答えもあると思います。私自身の答えは非行少年の価値観を揺さぶることです。

少年院には「あたりまえ」ができない子がきます。具体例としては、17歳で九九ができない、アルファベットがわからないなどです。万引きや、ブランドものを身に付けることがかっこいいことであるという誤った固定観念を持っていたり、承認欲求を満たすために非行をしていたり、皆さんの多くが想像される「非行少年」の像とは異なります。

自由とは何かを非行少年に問いかける

自由ってなんだと思いますか?

この質問は少年院における1日の反省の時間で呼びかけます。この質問を投げかけると非行少年の多くは、「縛られないこと」と回答します。

非行少年が特に嫌うものは校則、常識などです。そのために、自由でありたいならルールを無くすという考えに彼らは至りがちですが、それは違います。

本当の自由は自分がどれだけ努力をして技術を身に付けたかどうかです。この問答を行うことで、自分が自分を縛っていたことに気づいてくれます。このような無意識に凝り固まって自分を縛っていた先入観や価値観を揺らすのが大切です。そしてこのようなことを行っているのが少年院なのです。

3 Twitterからの質問

発達障害もしくはその傾向にある子はいますか?

年々増えています。私は心理学を専門としていたわけではないのでそれを見極める武器がないのですが、そもそも私は発達障害かどうかを見ていません。ではどうしているかというと、私は何を増やしたり減らしたりすればその子どもになるのか、を考えて接しています。

例えば、片耳が聞こえていない子はその耳をこちらに向けて聴こうとしますよね。自分自身に何が欠けていたらその子の行動に繋がるのか。どんな認識が足りていなかったらその子の行動に繋がるのかを考えています。

へいなかさんが今まで見てきたこの中で1番大変だった子どもは?

対処のしようがないと思ったことはほとんどありません。私は子どもに対応する際、人の3倍以上試行錯誤を繰り返すからです。数を打てば当たるといったような感覚です。ただ、直接自分が関わることのできない管轄外の子どもに対しては困ります。直接自分で十分な時間指導をすることができないからです。

子どもたちはどうしたら少年院を出ることができるのですか?

少年院の子どもは基本的に長期でも一年以下しかいません。1か月に1回成績をつけるのですが、課題に応じた成績を満たせば少年院を出ることができます。そのため刑務所と違い、不定期刑なのが普通です。

裏で非行を行っていてもわからないような普段目につかない子どもに対してどのようなアプローチをされていますか?

少年院では学校における教室と住む場所とが同じです。常に行動観察のプロである法務教官がいるので、違和感を発見できます。暴言(「やってらんねぇよ」など)を言った子にも、素直なことを言えたと褒めることもあり、それぐらい日常的に子どもたちと接しているのです。

法務教官同士が連携するための方法として、何かオススメのことはありますか?

2つあります。

1つ目は、時代に逆行した方法ではありますが、飲み会だと思います。衣食住は人間の生活の基本ですが、他人とシェアできるのは食のみです。法務教官とはいえ自分が担当している子どもを四六時中見ることはできないので、同僚同士でご飯を食べている際の情報共有が欠かせないと思います。

2つ目は、他の先生のいいところを子どもの前で言うことです。自分の同僚のことを私は信頼していると子どもに対して言うなど、他の先生方に対するブランディングは重要です。

4 登壇者のプロフィール


某少年院に勤務する現役法務教官。
民間企業やアルバイトの経験を活かし,再非行防止に留まらず,「社会で活躍できる人材になるには」という視点で非行少年と向き合っている。
2018年春からTwitterで発信を開始。日本で唯一の発信する法務教官。
へいなかさんのTwitterはこちら(@Heino_naka)

5 関連記事紹介

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6 編集後記

少年院という場所は多くの人にとっては身近な場所ではなく、どのような場所なのか、そこに入所する子どもたちはどのような子たちなのか、知らない人も多いと思います。今回、学校の先生向けの教育実践と絡めて話された少年院での経験談は、法務教官以外の職種においても有効だと思いました。

最後に、突然のお願いにもかかわらず取材を快諾してくださったwatchaの皆さま、ありがとうございました。
(取材:EDUPEDIA編集部 加藤、樋上 編集:EDUPEDIA編集部 加藤)

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