先生のための心理学~本当に自分がしたいことって?~

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目次

1 はじめに

この記事は、2019年7月20日に、Teachers Schoolで開催されたイベント「心理学をもとに自分軸の価値観を発掘しよう」におけるコーチングで活躍されている小幡磨紀先生のワークショップを取材したものです。
今回は、自分と向き合う手法についてお話を頂きました。

こんな方にオススメ

  • 自分のやりたいことができていないと感じる先生
  • 今、学校でやっていることが本当に意味があるのか疑問を感じている先生

2 価値観発見の心得

今回のワークショップでは、心理学とは、『目に見えない心を知るため、目に見える手法を使って心を解き明かすこと』と定義しました。以下の3つのルールに従いながら自分軸の価値観を探っていきます。
【ルール】
①答えは全部正解(間違いがない)
②答えなくても正解(分からないのも正解)
③相手の考えを受け止める

《受け入れると受け止めるの違い》

受け入れる:相手と意見が違ったときに、自分の意見をすべて同調させること。

受け止める:自分と意見が違っても、「そういう考えもあるんだ」と相手の考えを受け止めること。

3 自分を大切にするってどういうこと?

まずはじめに、以下の3つの問いについて1人1人考えました。
「自分を大切にできている、と言えるのはどんなときですか?」
「あなたを大切にしてくれる人は誰ですか?」
「その人はあなたをどのように大切にしてくれていますか?」

心理学的に「自分を大切にする」とは?

心理学的に「自分を大切にする」とは、以下の4つに分類されます。

①自分を裁かないこと

  • 自分の心や体の状態を認知して寄り添っている
  • 本当の感情をメタ認知している
  • 「〜だったんだね」と声をかけている。裁きすぎない。

メタ認知:自分自身を客観的に認知する能力)

自分以外の他人からの外からの声などがあると、自分の本当の感情がわからなくなってしまいます。例えば、怒りが湧いてきたとき、怒りというのは第2の感情であり、第2の感情の中に寂しさや怖さなどの第1の感情があります。その第1の感情に対して、「私は寂しかったんだね」などと怒りの感情に惑わされず本当の感情を感じることが大切です。また、そのような感情を抱いてしまった自分に対して決して自分を裁くことをしないことです。

②自分を受け入れること

  • うまくできたときもできなかったときもプロセスに関心を持って受け入れている(結果よりも成長過程にフォーカスする)

うまくいかなかったときに自分を責めるのではなく、プロセスの中でうまく行ったところにフォーカスすることが大切です。自分の失敗の中で、どこがうまく行ったのかを必死に探して、うまくいかなった自分、チャレンジした自分を受け入れてあげるということです。そのようにする事で、自分を裁かずに済みます。

③切り離して考えること

  • いらないものから離れている
  • 他人の問題を抱えていない
  • 必要以上のことを抱えていない
  • いらないものから離れる

例えば、親子関係では、子どもが忘れ物をすると、「学校に迷惑をかけてしまうのではないか」「親としての自分の評価が下がってしまうのではないか」など恐れを抱いてしまい、子どもの問題も全部自分の問題だと思ってしまう人がいます。このように自分の問題と子どもの問題を同じこととして考えてしまうと、いらないものから離れることができません。自分の問題、子どもの問題、生徒の問題を切り離して考えることが大切です。

④自分の内側と話し合い、応援していくこと

  • 自分が望んでいること、考えを自己表現できている
  • 相手に本心を伝えることができている
  • 大切にしたことに向かって行動している
  • 価値観を大切にしている
  • 自分との約束を守っている

自分の本心を自分でわかっていないと、相手に自分の本心を伝えることができません。その価値観がわからないときは、日常的な約束(例えば、女性ならば、毎朝髪の毛を巻いていくなど)をしっかり守ることで、その約束をしようと思ったときの自分の気持ちを大切にすることができます。

自分との約束を守っていくことで、そのときの自分を大切にして、自分の価値観が形成され、それを相手に自己表現することができます。

4 5つの人格とは?(エゴグラム/PACモデル)

エゴグラム
→エリック・バーンという心理学者が1950年代にアメリカで開発したもの。

私たちは誰もが大きく分けると5つの人格(自我状態)を持っています。この5つの人格の考え方をエゴグラム、PACモデルと言います。そしてその全ての人格に、光の面と影の面があります。人格が過剰すぎると影の部分が強まります。

  • Pは自分に対する親の部分
  • Aは社会生活を送る上で表に出てくる部分
  • Cは子どもの部分

人格を変えるには?

上の図の、養育的親(NP)、支配的親(CP)、大人(A)、自然な子ども(FC)、従順な子供(AC)のどの部分が強いかによって人格が変わります。例えば、支配的親(CP)が強い人だとすると、自分に対して厳しくジャッジする人は、他人に対してもジャッジするため、パワハラをする上司になりやすいと言われています。

この5つのバランスを自分の中でコントロールしていくことで自分の人格は変わります。このことを知り、自分の内側と対話することで人格を変えることができます。

5人の人格と話し合うこと

自分自身を裁きすぎるのではなく、もう一人の自分と客観的な視点で愛を持って見守り、応援できること、5人の人格と話し合っていることが大切になります。

頭の中のイメージで椅子を5つ用意して、5人の人格に座ってもらいます。「自分がジャッジしやすい」と思ったらCP(自由な子ども)と話し合いを行います。「どんな風にしたら馴染めるかな」「どのようにしたら自由になれるかな」などと頭の中でシュミレーションを行います。

強化したい人格と話し合うこと

強化したい人格と話し合うことでその人格は伸びていきます。そうすることで5人の人格とのバランスがとれるようになり、自分が大切にしたいものに向かいやすくなります。

そのためまずは、強化したい人格と話し合うことをしましょう。これは自分の脳内のことなので、自分と喧嘩する日もあります。また、最高の感動を共有する日もありますが、自分の中の問題なので「本音で自分とぶつかり合ってもこの世は終わらないから大丈夫」と安心することができます。

どんな人格を強化して、どのようにに自分を大切にできるかを考えて、実現したい夢に向かって進んでいることを応援することが大切になってきます。

5 自分を大切にするポイントを知る

心が喜ぶ自分大切ワードとは?

まずはじめに、以下の質問について1人1人考えました。
「○○できてうれしいね」と人から言われて一番うれしい言葉(自分大切ワード)は何ですか?

【考える手順】
①相手に何かしてもらいたいことを考える
例)喜ばせたい、リラックスさせたい、共有したい、笑わせたい
②してもらいたいことを参考に、自分大切ワードを考える
例)笑わせたい⇒「たくさん笑える時間が過ごせてうれしいね」

自分が自分を大切にできたと思うポイントを抑えるということがこの質問の意図でした。自分大切ワードというのは、自分が人生で体験したいこととともに、人生の目的とも密接に関係しています。

顕在意識と潜在意識

潜在意識とは?

日常で色々なことを決めている顕在意識というのは、私たちの考えていることの5パーセントに過ぎません。95パーセントの潜在意識というのは無意識の部分で、自分の行動を促したり、妨げたりすることにとても関係しています。

5パーセントの顕在意識と、95パーセントの潜在意識の力の差というのは、およそ30000倍だと言われています。例えば、5パーセントの潜在意識の中で私はこういう道を歩んでいこうと考えていたとしても、95パーセントの潜在意識の中に、本当はやりたくない、本当はしてはいけないという気持ちがあると、その行動が上手くいかないということが多くなります。

先ほど普段考えないような質問をしたのですが、あの質問は95パーセントの潜在意識に働きかけたものでした。本当は何を大切に思っているのかということを潜在意識レベルで考えてもらいたかったのです。この自分大切ワードがまだ明確でなくても大丈夫です。「○○できてうれしいね」と言われてうれしい言葉を自分に問いかけることで明確になってきます。

また、この自分大切ワードを増やす経験を増やすために、「自分の内側と話し合う」ことを通して、潜在意識の中の自分を妨げる障害物を取り除く作業が必要になります。例えるなら、アクセルをふかす作業だけではなく、ブレーキを外す作業もやっていくことが大切ということになります。

6 プロフィール

小幡 磨紀(おばた まき)
コーチングスクールThe answer にて資格取得後、コーチとして活躍中。
(2019年7月31日 時点)

7 編集後記

心理学をもとに自分の心と対話するという体験を通して、自分の気持ちに耳を傾け、自分自身を応援することが大切だと感じました。
(取材・編集 / EDUPEDIA編集部 安藝 航、辻 千夏)

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