LDとADHDのある中学2年生に対する「特性を理解する」指導事例(インクルDB)

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作成者:福山 浩平 (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

本記事は、「インクルDB(インクルーシブ教育システム構築支援データベース)」の実践事例データベースの内容を引用・加筆させていただいたものです。今回は、「通級による指導において、特性に応じた学び方の指導を行うことによって自信がもてるようになった、学習障害と注意欠陥多動性障害のある中学2年生の事例」 に掲載されている事例をご紹介します。

※EDUPEDIAには、特別支援に関する記事が他にも多数ございます。ぜひ併せてお読みください。
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新学期、支援の必要な子に出会ったときに考えたいこと —小学校・通常の学級で取り組むスタートダッシュの支援—(田中亮先生)

事例の概要

通常の学級に在籍し、学習障害(LD)と注意欠陥多動性障害(ADHD)を併せ有するA生徒(中学2年生)に対し、通級による指導で主に国語科の内容を取り扱いながら、特性に応じた学び方の指導を行いました。通常の学級における教科の指導においても合理的配慮を行ったことで、本人が学習に対し自信が持てるようになった事例です。

2 本事例における生徒の実態

A生徒は、注意欠陥多動性障害(ADHD)と学習障害(LD)とを併せ持つと診断された、B中学校に通う2年生です。一斉指導では十分な学習効果を得にくいことから、通級による指導を週2時間受けています。学力は平均より下のレベルです。特に言葉の理解や操作に困難さが見られます。漢字の読み書きに苦手意識があり、難しい漢字が出てくると板書を写すことや読むことを諦めてしまう場合があります。 しかし、聴覚的な短期記憶は優れており、古文の暗唱テストでは1回で合格しています。 自己の得意な能力を学習に活かすことで自信も徐々についています。

3 本事例に関する基礎的環境整備

  • B中学校の通級による指導では、生徒の実態や特性に応じて各教科の内容を取り扱いながら、個別指導や少人数指導を行うとともに、ソーシャルスキルトレーニング(SST)などの社会性を身に付けるための指導を行っています。
  • 合理的配慮協力員や特別支援教育巡回アドバイザーを招き、指導や助言を受けたり、通級指導の担当教員との情報交換を行ったりすることで指導や支援体制の充実を図っています。
  • 学級担任と通級指導の担当教員が家庭訪問を行い、保護者と本人を交えて面談することで本人の意向を確認し、個別の教育支援計画や個別の指導計画を作成しています。その成果を、将来の進路を見据えながら、中学校における指導でも活かせるよう工夫しています。
  • B中学校には、特別支援教育支援員が2名配置されており、主に学習支援を中心に指導や支援を行っています。また、B中学校の4名の教員が、特別支援学校免許法認定講習を受講し、特別支援学校教諭免許状を取得しています。

4 保護者との合意形成のプロセス

  1. 学級担任や教科担任による実態把握や、合理的配慮協力員による授業参観を行った後、学級担任がA生徒に通級による指導についての説明を行い、A生徒から同意を得ました。
  2. 夏休み期間中に三者面談を実施し、学習面でのA生徒の困難さと、学習環境を整えることでA生徒の成長や自立を支援できる旨を保護者に伝えました。
  3. 就学支援に関するガイダンスを行い、A生徒が諸検査を受け、医療機関を受診した後に、保護者への聞き取り調査を行いました。
  4. 特別支援教育コーディネーターがB中学校のあるC市教育委員会の担当職員と連携をとり、A生徒に対する支援を行うことを校内支援委員会で決定しました。
  5. A生徒には保護者同席のもと、専門医の診断書と諸検査の判定結果を伝え、通級による指導を受けることへの同意書を提出してもらいました。

5 生徒への合理的配慮の実際

■A生徒の授業全般における配慮や工夫

  1. 見通しを持たせるため、授業のはじめに本時の授業の流れを提示しています。
  2. 疑問や不安に思っていることはそのままにしないようにさせています。
  3. 疑問や不安なことを全体の場で取り上げて指導しており、授業内で教えきることができない場合は別に時間を設けて指導しています。
  4. A生徒が学習した内容を確認するための時間を設定しています。

学習課題を与える際には問題数を少なくし、A生徒が負担に感じないようにすると同時に、課題をクリアする達成感を味わうことができるよう配慮しています。

■A生徒のノート(板書)や配布プリントへの工夫

  1. A生徒が読みやすくするため明朝体を避け、大事な部分は文字サイズを変えています。
  2. 授業の流れが分かるように工夫します。
  3. 図表等を多く用いたり、ICT機器を活用し映像や写真を提示したりすることで、A生徒が視覚的に分かりやすいようにしています。
  4. A生徒の書く分量を減らすように工夫しています。
  5. 読むことに困難をきたさないように、漢字にルビを振っています。

6 本事例の成果と課題

○成果

A生徒は、以前よりも積極的に学習に取り組むようになりました。A生徒の特性を考慮して、通常の学級担任と通級指導の担当教員が連携し、授業における指導内容や方法の工夫・改善に取り組んだことがA生徒の苦手意識の克服と自信につながったと考えられます。

○課題

思春期の中学生がどのようなことに不安や困難さを感じているのかを把握し、個別の教育支援計画や個別の指導計画の見直しや改善を行う必要があると考えられます。また、保護者や関係する教職員、関係機関、地域人材との連携を強化していく必要があります。さらに、A生徒の学習上の困難さを軽減させるため、タブレット端末等のICT機器の充実も課題と考えられます。

7 出典


インクルDB(インクルーシブ教育システム構築支援データベース)
http://inclusive.nise.go.jp/?page_id=13

独立行政法人国立特別支援教育総合研究所が運用するインクルDB(インクルーシブ教育システム構築支援データベース)は、子どもの実態から、どのような基礎的環境整備や合理的配慮が有効かについて、参考となる事例を紹介しています。また、研修会等での事例検討にも活用できます。

インクルDBは、各学校の先生方だけでなく、保護者の方をはじめ、広く一般の方にもご利用いただくことができます。ぜひ、ご活用ください。

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9 編集後記

学習障害(LD)と注意欠陥多動性障害(ADHD)を併せ有する中学2年生の生徒に対しての合理的配慮の実例を紹介しました。
同じような課題を抱える生徒への合理的配慮にお悩みの先生方のお役に立てれば幸いです。

(編集:EDUPEDIA編集部 福山浩平)

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