生徒との関係性から見る授業力向上のコツ

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目次

1 はじめに

この記事は、2019年9月16日に授業向上の会の飯村大輔先生に授業のコツについて取材し編集したものです。生徒の心のつかみ方や生徒に授業への興味を持ってもらう方法について伺いました。授業向上の会とは、先生向けに広く役立つスキルを提供することを目的に、月に1回セミナーを開催している団体です。

こんな方にオススメ

  • 生徒との関係に悩んでいる先生
  • 授業に自信がない先生

2 生徒と先生の関係性

生徒の心をつかむにはどうすればよいですか?

先生の年齢によってできることが変わってきます。若い先生は勢いとフレッシュさで生徒の心をつかむことができます。しかし、年配の先生はそうはいきません。年配の先生は言葉で生徒の心をつかまなければなりません。先生が生徒を気にかけているということが伝わる言葉、生徒を認める言葉をかけてあげるとよいです。例えば、生徒ができたことを褒めてあげる、頑張っていることを労ってあげるなどです。これらは、意識と行動が伴えば年齢関係なく誰でも実行できることです。

授業内容で生徒から信頼を得るにはどうすればよいですか?

信頼を得る方法は、対象となる生徒の学力層や精神年齢によって変化します。授業の楽しさわかりやすさという点で言うと、生徒が低年齢なほど楽しい授業が好まれ、高年齢なほどわかりやすい授業が好まれる傾向があります。極端な例で言えば、進学校の授業でギャグばかり言っていても生徒からの信頼は得られませんし、小学校で明解であるだけの授業をしても同様です。楽しさとわかりやすさ、どちらも大切な要素ではありますが、対象となる生徒によって重要な要素が変わるので、それらのウエイトを工夫する必要があります。

3 先生に必要な想像力

先生に必要とされる力は何ですか?

一つに想像力があります。授業中の生徒の気持ちにアンテナを張り巡らせ、イメージする力がとても大切です。例えば、退屈ではないか、問題が難しくないか、話の内容のレベルが高すぎないかなどです。生徒の表情・動作・反応に気づけると、機転を利かせて別の話題を振ったり、演習を組み込んだりすることができます。こうすることで、効果的な授業展開ができるので、生徒が飽きることがないですし、実力がつきやすいです。自分がゆっくり話したいからゆっくり話す、このテーマが好きだから熱く語るなど独りよがりな授業をすると、生徒との心の距離が離れ、授業が上手くいかなくなります。ここに足りないものは、生徒が何を求めているかを感知するための想像力なのです。

どのような場面で想像力が役立ちますか?

想像力を身につけると、より幅広い層の生徒にわかりやすく教えることができます。教えるときは当然先生の方がレベルが上なので、生徒のレベルまで目線を下げて心の距離を近づけなければなりません。このとき、自分が経験していないレベルを想像することと生徒に共感することが必要となります。また、上のレベルの子より下のレベルの子に教えるときの方が難しくなります。なぜなら、下のレベルの子の方が先生との心の距離が遠いからです。したがって、より下のレベルまで想像力を働かせることができる先生ほど、幅広い層の生徒にわかりやすく教えることができるのです。

想像力はどのように身につけていけばよいですか?

経験はある程度必要です。経験を積んでいくうちに、自分が発した言葉への生徒の反応を見て「こういう言葉を投げかけると生徒が喜ぶのだな」ということがわかってきます。感受性が豊かで共感力が高く、生徒の気持ちを察する力が強いと、経験値が低くても想像力を働かせることができますが、多くの先生にとってそれは難しいです。

4 生徒に授業を楽しんでもらう方法

生徒に学問的興味を持ってもらうためにはどうすればよいですか?

比較的実行しやすい方法は、例え話と成功体験です。

まず例え話についてです。例え話は、勉強する内容が生徒にとっていかに身近であるかをわかってもらうために用います。新しい単元に入るとき、大多数の生徒は授業内容に興味を持っていません。例え話によって勉強内容に興味を持ってもらえれば授業を面白いと思ってもらいやすくなります。私は三権分立の授業で大工と設計士の例を用いました。立法府は設計士が設計図を作るところ、行政府は大工が設計図を基に家を建てるところ、というように説明したのです。

次に成功体験についてです。どんなに勉強が嫌いな生徒でも、自分で問題を解けたときはとても感動し、次も少しやってみようという気持ちになります。この感動が勉強に興味を持つきっかけになります。これをいかに授業内で仕掛けるかが大事です。

教室には様々な層の生徒がいると思いますが、全ての生徒に成功体験をしてもらうにはどうすればよいですか?

授業の対象人数が多くレベルが分かれそうなときは、生徒のレベルに合わせて課題を変えていくのも一つの方法です。平均的な問題であると、クラスの2割くらいの生徒は早く終わってしまうでしょう。そこで生徒が何もしない空白の時間を作らせないことが必要なので、事前準備が大切になります。最初の課題が終わったら次の課題へ、というように、早く終わった生徒を応用問題に誘導できるように準備しておくと、手が空いてしまう状態の生徒を出さずに進行しやすいです。

生徒が間違えた答えを発表したときのフォローはどのようにすればよいですか?

私は授業後に個別でフォローすることが多いです。「今回はこんな感じで間違えてしまったけど、ここをこういう風にやっていけばできるようになるよ。」などと声を掛けてあげます。後を追っていくことも大事で、その生徒ができるようになったら全力で褒めてあげます。すると生徒は「やっぱり勉強していてよかったな」と思ってくれます。このようにして間違えた経験を成功体験に変えていくのです。

5 プロフィール

飯村大輔先生
某学習塾の教室長。教室運営全般の仕事や講師の教育・育成を行っている。
授業向上の会の一員として先生向けにセミナーを開催している。
(2019年9月16日時点のものです。)
▽飯村大輔先生のTwitterはこちら
@jyugyoukakumei (こちらでタイムリーに情報発信を行っています。)

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7 編集後記

私は、取材の前日に先生が開催されているセミナーにも参加させていただきました。セミナーと取材を通して、飯村先生が大切にされているのは、生徒と先生の関係以前に人と人との関係であるように感じました。授業と言っても基本的には生徒と先生との関わり合い。授業力を向上させるためには、結局は生徒とよい人間関係を持つことが大切なのではないかと思いました。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 小林奈菜)

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