ヘルプマークに対してアクションを。「i-sign」を使って誰もが安心して暮らせる日常へ(品川女子学院 起業体験プログラム)

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作成者:粒來   (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

本記事は、品川女子学院高等部1・2年生が文化祭を通じて取り組む学習プログラムである「起業体験プログラム」で、「株式会社iknow!」という「企業」を校内で立ち上げた高等部2年生、取締役の4人へのインタビューを編集したものです。
(※プログラムの詳細はこちらをご覧ください→品川女子学院起業体験プログラム

「株式会社iknow!」の活動のほか、彼女たちがこのプログラムを通じて感じたことや今後の展望について伺いました。福祉活動に関心のある方はもちろん、起業体験に関心のある方や今まさに取り組みを始めようとしている先生方の参考になれば幸いです。

2 株式会社iknow!について

株式会社iknow!は企業理念を「少しの勇気と優しさから安心が広がる日常の手助け」としています。障がいを持たない全ての人がヘルプマークについての知識を深め、アクションを起こすことによって、障がいの有無に関わらず、安心して生活できる環境をつくる手助けをしたいと考えています。

 「iknow!」と「i-sign」に込めた想い

iは助けるという気持ちの「愛」、iknowでヘルプマークを「知っている」ということ、最後の!で障がいを持たない人が起こす「アクション」を表しています。

このマークは「i-sign」といって、「ヘルプマークを知っているよ、助けるよ」ということを表します。

iは社名と同じく助けるという気持ちの「愛」、signはそのままサインを表し、誰でも分かりやすい名前にしました。左側の赤い人の方が「ヘルプマークを持つ障がいのある方」を表していて、右側が「障がいを持たない全ての人」を表しています。ハートマークはヘルプマークと同様に助ける気持ちを表していて、品川女子学院のシンボルである白バラを加えて、あまり派手にならないようにしています。

このマークを付けていることで「何か手助けしましょうか」と言い出すのが難しいと感じる方でも声をかけやすくなるほか、障がいを持っている方も「この人はヘルプマークを知っている」という安心感を得ることで、助けを求めやすくなると考えています。そうしたところから、助けの輪が広がればいいなと思っています。

 文化祭で売り出した商品

 ポップソケッツ

校内で「ヘルプマーク」に関するアンケートをとった際、「ヘルプマークをどこで見たことがありますか」という項目で、電車内という回答が60%ありました。そこで、電車内でよく使われている「スマホ」に何か要素を足すことを考えました。

スマホケースでは機種の違いに対応できず、スマホリングはリングの部分で絵が隠れてしまい意味がなくなってしまいます。結果、マークが隠れずに、スマホを持つ人なら誰でも使うことのできる「ポップソケッツ」を選びました。

 トートバック

手帳型のスマホケースを持つ人でもこのマークを使えるように、また、電車でスマホを使わない場合や街中を歩くときにもマークが見えるようにするため、持つだけで周囲に分かる「トートバック」も商品化することにしました。

 広報活動

広報活動はこれから力を入れていこうと思っている部分です。

まずは、ヘルプマークを持っている方にi-signの存在を知ってもらわないと意味がありません。その第1段階として、近くの第三北品川病院にi-signの紹介ポスターを貼らせていただきました。大崎駅での掲載も現在交渉中です。

来年はオリンピックやパラリンピックも開催されます。そうしたグローバルなイベントも視野に入れて、日本語版と英語版、2種類のチラシを掲載しています。

 ※左:英語版、右:日本語版

3 活動を通して

 活動に参加したメンバーの意識の変化

もともと私たち自身もヘルプマークについてよく知りませんでした。電車内のポスターで見たことがあったくらいで、対象としている人やマークの持つ意味については、今回テーマに取り上げたことで初めて知りました。

そういった状態だったので、初めのころは「ヘルプマークを使っている人がいるのか?」と思っていたのですが、今では1日に1回はマークをつけている人を見かけるようになりました。使っている人はたくさんいるのに、私たちが気を配っていないだけなのだと思います。

実際にこうした活動をしていると、クラスのみんながマークに対して親近感を持つようになり、クラスの中でも「今日ヘルプマーク見たよ」という会話が生まれるときが今でもあります。助けを求めているような人がいたら積極的に声をかけたり、iknow!の活動を周囲の人に広めているクラスメイトもいるようです。

 準備段階での経験

障がいというデリケートなテーマを扱っているため、気を遣う場面が多くありました。障がいを持っていないからこそ、どんな発言で嫌な気持ちにさせてしまうかが分からなかったため、当事者の方への質問内容を工夫したり、「障がい」の「がい」を漢字ではなくひらがな表記にしたりするなど、一つ一つ丁寧に気を配りながら活動を進めるように心がけていました。

学校の先生のつながりでお話を伺うことになった、福祉系のNPO活動をしている方からは「自分たちの自己満足の活動で終わらないためにも、実際にヘルプマークを使っている人の生の声を聞いた方がいい」というアドバイスをいただきました。そこでその方にご紹介いただき、当事者の方のお話をクラス全員で聞く機会を設けました。直接お話を聞いたことで、私たちがどういった点に気をつけて活動をしていくべきかが分かりました。ヘルプマークを3,4年つけていても声をかけられたことがあまりないという実態など、当事者だからこそ気づくヘルプマークを取り巻く環境について学ぶことができました。

こうした準備を経て迎えた文化祭当日では、お客さんがスマホに付けたまま動画を撮るのに使ってくれていたり、バックを持って歩いている様子を見たりすることができ、とても嬉しくなりました。文化祭が終わった後も使ってくださっている方を見かけたり、他のクラスの子がトートバックを弁当箱入れとして持ってくれていることもあります。

 文化祭までの活動を終えてみて

企業を運営する上で重要なきまりや倫理観についても学ぶことが多くありました。この活動を通して、商品を扱う上で莫大なお金やたくさんの人を動かすことで、重い責任を伴うものだということを実感しました。

言葉の使い方や短い時間の中でいかに大事な部分を訴えかけるかといった「人に伝える力」がついたと思います。この起業体験プログラムでは、出資金プレゼンの順位によって出資金額が決定します。まず、クラス内の取締役で内容を吟味してクラスの前でプレゼンをしたのですが、「ここがわかりにくいよ」「このスライドわかりにくいよ」などたくさんのダメ出しをもらいました。そこからどんどん改良していき、最終的に10クラス中2位という結果になりました。

また、初めの頃のインタビューではとても緊張して、相手が話している間に次話すことをずっと考えているくらい余裕がなかったのですが、何度か繰り返すうちに自然と話せるようにもなりました。この経験が活かされたのは、文化祭当日で行なった「聴覚障がいを体験できるVR」企画です。9月の初旬に渋谷で開催されていた「超福祉展」というイベントでVRを体験した際にVRを文化祭で使いたいと思い、断られても仕方がないと思いつつ急遽交渉をしたら、快く貸していただけたんです。こうした、いろんなことにチャレンジする力やコミュニケーション能力が上がったなと思います。

 ※超福祉展でのVR体験の様子

4 今後の展望

起業体験プログラムとしては文化祭で活動終了、となっているのですが、せっかくマークを作ったので、来年までは事業を続けたいと思っています。ちょうど2020年に控えたパラリンピックの関係者の方が品川女子学院の親御さんにいらっしゃったこともあり、現在はパラリンピックのボランティアメンバーにこうした活動を広める取り組みを計画しています。

文化祭では、赤字という結果に終わっています。この結果を失敗としないため、それ以上の成功を遂げたいと思っています。この企画には私たちもプライドを持っているので、誇りを持ちながらこれから活動していきたいです。

同時に、ヘルプマークやi-signの認知度も上げていきたいです。少しづつ段階を踏んで、最終的には障がいを持つ人も持たない人も関係なく安心して暮らせるようになったらいいなと思っています。

助けてほしい側がアピールするだけでは意味がありません。助ける側も主体的になっていくと、企業理念通りの日常になるのではないかと思います。

 

5 プロフィール

 株式会社iknow!

品川女子学院の2019年度起業体験プログラムにて発足した企業。
「少しの優しさと勇気から安心が広がる日常の手助け」を企業理念とし、ヘルプマークや「i-sign」を広める活動を展開している。(2019年12月5日時点のものです)

6 編集後記

ikonw!取締役のみなさんが、強い意志と誇りを持って互いに助け合いながら活動をしている様子から、私たち自身も何か行動する勇気をもらえるような、終始想いの伝わってくるインタビューでした。また、生徒の活動のために学校の先生や保護者の方々が全面的にサポートをしていたことも分かり、そうした支えがあるからこそ生徒たちはのびのびと活動を行うことができるのだと思いました。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 辻、粒來)

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