1 はじめに
この記事は、2019年12月9日に外手小学校で行われた矢島ノブ雄先生による講演「いじめとはどういうものかを考える」を取材し、内容を編集したものです。矢島先生は、お笑いコンビ「オシエルズ」として活動しながら、人を笑わせること(楽しませること)において欠かせない「心理的安全性」の重要性を伝えるため、学校などでワークショップを行っています。
この講演では、矢島先生が正しい「笑い」とは何か、「笑い」と「ふざけ」について考える授業をしてくださりました。矢島先生に「場づくり」についてインタビューした、こちらの記事も併せてご覧ください。
ユーモアの力で「子どもが手を挙げられる」場をつくる!(矢島ノブ雄先生インタビュー①)
授業実践が上手くいかない原因は「場づくり」にあるかも…?(矢島ノブ雄先生インタビュー②)
2 お笑い教室 講演内容
○ 導入
校長先生:今日は、お笑い芸人の矢島ノブ雄さんをお招きしました。私は「笑い」にはいろいろなものがあると思っています。みんなが本当に楽しい「笑い」、一部の人が楽しいけど誰かが傷つく「笑い」、人を貶める「笑い」。今、自分が笑っているのはどのような「笑い」なのかを考えてほしいです。最近インターネットやテレビではあまり上品ではない「笑い」がたくさんあります。自分の笑っている「笑い」が人を傷つけていないか、自分で考えられるようになってほしいと思います。それでは矢島先生、今日はよろしくお願いいたします。
矢島先生(以下敬称略):よろしくお願いいたします!みなさん、こんにちは!!
生徒:こんにちはー!
矢島:それではみなさんでせーので「お笑い教室!」といいましょう、せーの!
生徒:お笑い教室ー!
矢島:どうぞよろしくお願いいたします!まずは自己紹介からしたいと思います。僕は矢島と言います。……(この後、写真を見せながら芸歴、好きな芸人さんの話などが繰り広げられる)
○ 即興コント
矢島:今日はお笑い授業をお届けに来ました。今日は皆さんの前でネタをやらせてください。さっき書いてもらった紙を集めます。(講演前に生徒が好きなワードを書いた紙を集める)
矢島:今日は、みんなに役や場所を全部決めてもらって思いつきでコントをするので、セリフが思い浮かばなかったら、みんなに書いてもらった言葉をそのままセリフにしてコントを続けます。
矢島:それではいきます。僕は今どこにいるでしょうか?アイデアがある子は手をあげてください。
生徒A:小学校の体育館!
矢島:では、小学校の体育館にしましょう。ここでコントをしながら一個一個セリフをもらって今からコントをしたいと思います。どうぞよろしくお願いします!
(生徒拍手)
矢島:僕は小学3年生、矢島ノブ雄です。今日はこの小学校の体育館でサッカーをします!サッカー疲れたなぁ、これサッカーボールと思ってたけどサッカーボールじゃない!これ(紙に書いてあるキーワードを見て)「カメロボ」だ!僕は今までサッカーボールだと思ってカメロボを蹴っていました!(その後も生徒が大爆笑の中、紙のキーワードからコントを展開していく)
○ 絵を使ったゲーム
矢島:今日は普通にコントをやっているのではなくて、みんなが書いてくれたセリフが僕らを素敵な世界へ連れてってくれました!さあ、次は皆さんと一緒にゲームをする時間です。では、今からゲームを始めますよ!今からお見せする絵は何に見えますか!
生徒:女の人!カエル!おばあちゃん!
矢島:じゃあ手をあげてくださいね、おばあちゃんに見えた人!
(4割ほど手をあげる)
矢島:じゃあ若い女の人に見える人!
(5割ほど手をあげる)
矢島:みんなはそう見えてるのか!では、おばあちゃんに見えてる人は、どうしておばあちゃんに見えていますか?おばあちゃんは、どこですか?若い女の人に見えてる人はここが首飾りに見えてますよね。おばあちゃんに見えてる人はここは鼻です。だんだんおばあちゃんに見えてきましたか?
(その後何枚かの絵を見せる)
○ 話すことの難しさを考える
矢島:今からすーごく大事なことをいいます。いちばん静かにしてください。
矢島:人間は人と話をするとき相手の様子を目で見ます。そして人の話を耳で聞きます。そして何を話してくれたのか、心で感じます。そしていちばん最後、心で思ったことを頭で考えてもう一回話します。だから、人と話すときは4つのものを使います。目と耳と心と頭です。
矢島:みんな、両手出してみて。片方の手で三角を書いてみて。1、2、3。1、2、3。じゃあもう片方の手で四角を書いてみて。1、2、3、4。1、2、3、4。じゃあこれ一緒にやろう。行くよ!せーの!1、2、3。1、2、3…
(生徒はできなくて困惑)
矢島:難しいって思った人手をあげてください。人間は1つのことはすぐできるけど、2つ以上のことを一度にやるのは難しいんです。でも、人と話をする時って何個を使ってるんですか?4つだよね。人と話をするってことは、とっても難しいということです。失敗して当然です。
○ 「笑い」からいじめを考える
矢島:僕は小学校のときにいじめを受けていました。太っていたからです。その時にみんなからつけられたあだ名はブタとかゴリラとか肉です。「毎月29日はお前の日」と言われていました。
(生徒たちが笑う)
矢島:今そうやって笑った人!僕が小学校4年生の時にそれを言われてどれほど傷ついてたか知っていますか?それを知っていて笑ってるんですか?それを笑うってひどくないですか?
矢島:だから、人をからかったり、人の失敗や人の欠点を笑ったり、そうやって今の話を聞いてゲラゲラ笑ったりする人は、人の気持ちを考えましょう。太っている人をデブってからかったり、天然パーマの人をもじゃもじゃって言ったり。
(何人かの生徒が笑う)
矢島:ほらまた笑いが起きた!でも言われてる人は傷ついてるんだよ?それをみんなはどれぐらい知っていますか?
○ 「笑い」と「ふざけ」の違い
矢島:笑いは人と人とをつなげる大事なものです。でも、人を傷つける笑いは「笑い」ではありません。「ふざけ」です。大事なことをいちばん最後に言います。人のために使う言葉は「笑い」、自分のためだけに使う言葉は「ふざけ」です。だから、周りに迷惑をかける笑いは「ふざけ」です。これをいちばん最後に覚えて帰ってください。
矢島:僕もそういう笑いが嫌で、今こうやってお笑い芸人をやりながら、正しい笑いとそうでない笑いを教えています。そして今日、人を傷つける笑いを全くしないで、みんなのアイデアをいっぱいつなげて最高の素敵な舞台ができました。この温かい笑いをみんな大事にしてください。もう笑いで人を傷つけたりしませんか?
生徒:はーい!
矢島:そう!それが分かれば今日の授業は100点です!どうも、ありがとうございました!
3 プロフィール
矢島ノブ雄(やじま のぶお)
1987年生まれ。東京都墨田区出身。
創価大学大学院文学研究科・教育学専攻教育学専修博士後期課程単位取得退学。
大学時代、学生のお笑い大会で全国優勝を経験。お笑いコンビ「オシエルズ」として活動しながら、笑いを用いた「いじめ」解決のための講演・ワークショップを全国で行っている。公益財団法人日本ユースリーダー協会「第11回 若者力大賞」では芸人として初のユースリーダー賞を受賞した。日本即興コメディ協会 代表。FUNBEST代表。埼玉医科大学短期大学非常勤講師。(2020年1月25日時点のものです。)
4 関連情報
○関連書籍
矢島伸男著「イラスト版子どものユーモア・スキル: 学校生活が楽しくなる笑いのコミュニケーション」
○TV FUNBEST
○オシエルズ第14回単独公演「聴こえる」
日時:2020年7月26日(日)
・無観客配信 14:00〜15:30
・通常公演 16:30開場/17:00開演(40席まで)
ご予約はこちら。こちら
会場→しもきた空間リバティ
料金→無観客配信2,000円/通常公演2,500円
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○大河内祥晴さん講演「子どもたちの心の叫びや思い」(関西教育フォーラム2016)
6 編集後記
SNSでの誹謗中傷が問題視されている今だからこそ、多くの先生方に読んでいただき、授業に生かしていただけたら幸いです。
(編集:EDUPEDIA編集部 戸部葵・安藝航 文責:安藝航)
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