「トロッコ」芥川龍之介―主人公の気持ちの読み取りと根拠

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作成者: EDUPEDIA編集部さん

1 はじめに

この記事では、中学1年生の国語で学習する芥川龍之介「トロッコ」の授業を行う際に役立つヒントを掲載しています。
特に、主人公である良平の気持ちの変化を読み取ることを中心として、中学1年生という発達段階に合わせた読解と工夫についても考えます。
参考資料へのリンクも掲載していますので、お役に立てましたら幸いです。

2 「トロッコ」の内容

「トロッコ」のあらすじ

起承転結で考える

第1場面(起)
8歳の良平は、村はずれの工場にあるトロッコに乗ってみたいと思い、一度だけ、こっそりと乗ってみるが土工に叱られる。
第2場面(承)
二人の若い土工を手伝うという口実で一緒にトロッコに乗るが、村から遠いところまで来てしまう。
第3場面(転)
かなり遠くまで来たところで土工から帰るように言われ、だんだん夜が近づいてくる不安を抱きながら、懸命に走って帰る。
第4場面(結)
26歳になった良平は、今でも、何の理由もなくこのトロッコの体験を思い出すことがある。

3 「トロッコ」の授業実践のヒント

小説への導入

「トロッコ」は、芥川龍之介による小説で、古くから国語の教科書に採用されている名作です。しかし、現代の子どもたちにとって、トロッコ自体がなじみのないものになってきています。
そこで、小説の内容に入る前に、トロッコの写真や動画などを見せて、子どもたちが物語をイメージしやすくするのもよいでしょう。

時間的な余裕がある場合には、あらかじめ子どもたちにトロッコについての調べ学習をさせておくのも効果的でしょう。

場面ごとの読解の例

第1場面(起)

良平のトロッコへの思い

 はじめの場面では、トロッコに対する良平の憧れの気持ちをしっかり読みとらせましょう。
  特に、以下のような記述に着目します。
 (例)「せめては一度でも土工と一しょに、トロッコへ乗りたいと思う事もある。」
  「良平はその時乗れないまでも、押す事さえ出来たらと思うのである。」

弟たちとトロッコに乗ったとき

 ここでは、良平の短時間での気持ちの変化に着目させましょう。
  具体的には、慎重・恐れ・驚きなどから喜び・楽しさ・満足などへの変化です。
  以下のような記述に着目しましょう。
  (例)「三人の子供は恐る恐る、一番端にあるトロッコを押した」
   「良平はこの音にひやりとした」
   「しかし二度目の車輪の音は、もう彼を驚かさなかった」
   「良平は殆ど有頂天になった」

第2場面(承)

ここでは、良平が徐々に不安を強めていくことを、良平の気持ちに加えて情景からも読み取っていきましょう。

良平の心のセリフに着目する

ここでは、良平の心のセリフの変化から、徐々に不安を強めていく様子を読み取っていきましょう。
 以下のようなセリフに着目します。
 (例)「何時までも押していて好い?」
  「行きに押す所が多ければ、帰りに又乗る所が多い」
  「もう帰ってくれれば好い」
  

情景に着目する

良平が見ている風景からも、気持ちが読み取れることに着目しましょう。
 例えば、トロッコを押し始めた時には「蜜柑畑に、黄色い実がいくつも日を受けている」という明るい風景の描写になっています。
 一方、不安を覚え始めると「竹藪」「雑木林」「落葉」「広広と薄ら寒い海」など、暗い風景へと変わっていきます。
 時間の経過も感じながら、同時に深くなっていく良平の不安をうまく読み取らせるようにしましょう。

第3場面(転)

ここでは、良平の涙をキーワードにしながら気持ちを理解していきましょう。
 例えば、以下の記述に着目します。
 (例)「良平は殆ど泣きそうになった。が、泣いても仕方がないと思った」
  「村外れの工事場が見えた時、良平は一思いに泣きたくなった。しかしその時もべそはかいたが、
   とうとう泣かずに駈け続けた。」
  「彼の家の門口へ駈けこんだ時、良平はとうとう大声に、わっと泣き出さずにはいられなかった。」
・走り始めたころの良平には、逆境にありながらなんとか踏ん張って自力で帰宅しようというたくましさが垣間見られます。
・一方、帰宅した良平は、無事にたどり着いたことの安堵感から大泣きし、心細さが一気にこみあげています。
この良平の気持ちを比較しながら、大人の世界に一歩近づいたことによる強さと、まだまだ子どもであることの弱さを対比してみると理解しやすいでしょう。

ここでひと工夫

「トロッコ」の物語に絡めながら、子どもたち自身が経験した「小さな挑戦」を考えさせてみるのもよいでしょう。この小説は、良平が大人の世界へ一歩足を踏み入れた体験談としても読むことができます。
大人への成長の入り口に立つ、中学一年生の子どもたち自身の体験と重ね合わせることで、より小説の世界観を共有できるでしょう。
体験談を発表するときには、グループワークやペアワークなど、少人数で行うと、大勢の前で発表するのが苦手な生徒にも発言の機会を与えられるので効果的です。

第4場面(結)

ここでは、以下の比喩表現に着目しましょう。
「塵労に疲れた彼の前には今でもやはりその時のように、薄暗い藪や坂のある路が、細細と一すじ断続している」
ここには、26歳になった良平が、人生の逆境にあることが暗示されています。
ここを導入しながら、「大人になった良平が、なぜトロッコの体験を思い出すことがあるのか」を考えさせましょう。
例えば、
・あのとき逆境を乗り切った自分を思い出し、今の自分を励ましている
・大泣きした自分を思い出して、自分の弱さを思い出しながら、自分の安心できる場所を探している
など、比喩表現の特質を生かして、いろいろな解釈が可能になると思います。
時間的な余裕があれば、子どもたちに議論させてみるのもよいでしょう。

4 参考資料(各項目からリンク先へ)

NHK for school / 10min.ボックス トロッコ(芥川龍之介)

上記サイトでは、「トロッコ」の内容が10分間でわかりやすくまとめられています。
また、 参考資料のページもあります。

平井祐樹氏による「トロッコ(芥川龍之介)」有名文学作品解説シリーズ2

あらら本店:小説『トロッコ』芥川龍之介・あらすじ・解説・感想

小助氏による読書ブログです。「トロッコ」について多様な視点から考察されていますので、授業展開により深みを持たせたいときに参考になると思います。

大阪教育大学 国語学講義受講生による国語読解問題集「トロッコ」

「トロッコ」を用いた例題を解くことができます。特に基礎的な問題の作成についてのヒントになると思います。

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