「走れメロス」太宰治―メロス・ディオニス・セリヌンティウスの人物像を読み解く

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作成者: EDUPEDIA編集部さん

1 はじめに

この記事では、中学2年生の国語で学習する太宰治「走れメロス」の授業を行う際に役立つヒントを掲載しています。
「走れメロス」は、登場人物の心情の変化を通して、正義、信頼、挫折、葛藤などをじかに感じ取ることのできる名作です。
参考資料へのリンクも掲載していますので、お役に立てましたら幸いです。

2 「走れメロス」の内容

「走れメロス」のあらすじ

起承転結で考える

第1場面(起)
街で人を信じることのできない暴君の話を聞いたメロスは激怒し、王の城に一人で乗り込んでいく。王から処刑を言い渡されたメロスは、妹の結婚式のために3日間の猶予を願い、友人を人質として置いていく。
第2場面(承)
村に帰ったメロスは、花婿に結婚式を翌日にしてもらえるよう説得する。無事、結婚式を見届けたメロスは、再び王のもとへと出発する。
第3場面(転)
メロスは再び街へ帰るために走り出すが、途中、さまざまな困難がメロスの行く手を阻む。
第4場面(結)
友を信じて走り切ったメロスは、ぎりぎりのところで間に合い、友人の命を救う。その様子を見た王は、この世に信実のあることを認め、改心する。

3 「走れメロス」の授業実践のヒント

「走れメロス」読解のポイント

「走れメロス」は、言わずと知れた太宰治の名作です。中学生にとっては、教科書の物語の中でもインパクトに残りやすいものでしょう。
「走れメロス」の読解のポイントは、主人公のメロスを中心として、暴君ディオニス、友人セリヌンティウスの三者の人間模様を深く読み解くことです。
以下、場面ごとに、メロス・ディオニス・セリヌンティウスの人物像を追いながら、読解例を示していきます。

場面ごとの読解の例

第1場面(起)

メロスの人物像
冒頭の「メロスは激怒した」に象徴されるように、ここで表現されているメロスの感情は怒りです。また、相手が王であろうとも間違いを正そうとする正義感も持ち合わせています。一方、後先を考えずに行動に移してしまう単純さもあります。
ディオニスの人物像
ディオニスは、罪のない人を殺す暴君として描かれていますが、その裏には強い不信感が存在しています。ただ、「おまえには、わしの孤独がわからぬ。」「わしだって、平和を望んでいるのだが。」といったセリフの内容からも、王自身も現実の状況に思い悩んでおり、葛藤していることが見え隠れします。
セリヌンティウスの人物像
ここでのセリヌンティウスには、メロスの事情を受け入れ、処刑されるかもしれないにもかかわらず、メロスを信頼することのできる強さを感じ取ることができます。

冒頭でのこの3人の人物像をしっかり押さえつつ、物語の結末での3人の人物像と対比できるようにすることが、読解のポイントになります。

第2場面(承)

メロスの弱さに着目
村に帰り妹の結婚式を行う場面では、メロスの弱さが垣間見えます。例えば、以下の記述に着目します。

(例)「メロスは、一生このままここにいたい、と思った。」
  「少しでも永くこの家に愚図愚図とどまっていたかった。」
 一方で、再出発を決めた時のメロスには、信じるとはどういうことなのかを身をもって王に伝えようという強い決意がうかがえます。以下の記述が印象的です。
 (例)「私は、今宵、殺される。殺される為に走るのだ。」

この第2場面では、第1場面では現れることのなかったメロスの弱さが垣間見えます。ここで弱さを描写することで、第3場面でのメロスの葛藤をより現実味を持って表現することができているとも言えるでしょう。

第3場面(転)

メロスの葛藤
ここでは、川の濁流や山賊の襲撃に遭いながらも、なんとか自分の意志で切り抜けていくメロスが、とうとう体力の限界に達して倒れる場面が描かれます。

 そして、友への信頼や友情と、自分の弱さとの葛藤が一気に描写されます。

ここで考えてみたいこと

メロスを救った泉の意味
倒れ込んだメロスを救ったのは、足元に流れ出ていた泉でした。メロスは、この泉の存在にふと気がつくわけですが、この泉がなければメロスは走ることができなかったという意味で、泉は非常に重要な役割を果たしています。

太宰は、なぜ偶然そこにあったかのように「泉」を出現させたのでしょうか。多様な解釈ができる部分ですので、子どもたちに議論させてみるのもよいでしょう。次期学習指導要領にもあるような、対話的で深い学びへの工夫ができる箇所だと考えられます。

第4場面(結)

メロスが走る目的
息を吹き返したメロスは、ほとんど限界に近い状態でありながらも王のもとへ急ぎます。ここでメロスは、自らが走る目的に変化が生じていることを自覚します。

 (例)「間に合う、間に合わぬは問題でないのだ。人の命も問題でないのだ。私は、なんだか、もっと恐ろしく大きいものの為に走っているのだ。」

「もっと恐ろしく大きいもの」とは?
子どもたちにこの意味を考えてもらうのもよいでしょう。この場面のメロスは、疲労困憊したときとは打って変わって力強く描写されています。ここには、メロスの人間としての成長が描かれているとも読み取れます。 メロスはほかでもない、自分自身のために走っていると考えることもできるでしょう。

 もちろん、他の解釈も可能ですので、子どもたちと議論してみてもよいでしょう。

ディオニスの改心
メロスの到着を見届けたディオニスは、信実のあることを認め、自分もその仲間に入れてほしいと懇願します。冒頭で暗示されていたように、王もまた一人の人間であり、暴君のようにふるまっていても、内心では孤独と戦い、そして平和を望んでいたことがあらわになっています。
セリヌンティウスの弱さと信頼
メロスを待っていたセリヌンティウスもまた、冒頭では描かれなかった人間としての弱さを吐露しています。そして、その弱さをメロスに告白することで、より強い信頼関係を結んでいます。
新しい信頼関係へ
このように3者とも、それぞれの立場で自分の弱さと向き合い葛藤していたことがわかります。そして、最も大事なのは、最後にはお互いにその弱さを認め合い、新たな、より強い信頼関係へ変化していることです。

 中学2年生という多感な時期において、人間関係の変化に悩む子どもたちもいる中で、お互いの弱さを認め合い信頼関係とは何かを考えさせるきっかけにもすることができるでしょう。

最後にひと工夫

物語の最後は、メロスが周囲に裸体を晒していたことに気づき、赤面するという場面になっています。物語としてはその前段で終結しているにもかかわらず、こうしたユーモアを挟み、激怒の始まりと赤面の終わりとが対置されています。ここに、太宰治の文学の味わいを感じ取る授業展開もよいのではないでしょうか。

4 参考資料(各項目からリンク先へ)

NHK for school / 10min.ボックス 走れメロス(太宰治)

上記サイトでは、「走れメロス」の内容が10分間でわかりやすくまとめられています。

また 参考教材もあります。

あらら本店:『走れメロス』作者が伝えたかったことは何か?あらすじから解説まで!

小助氏による読書ブログです。「走れメロス」について多様な視点から考察されていますので、授業展開により深みを持たせたいときに参考になると思います。

広島県立教育センター:国語 学習指導案

広島県立学習センターが公開している学習指導案です。
中段の第2学年の中に、「走れメロス」があります。

大阪教育大学 国語学講義受講生による国語読解問題集

「走れメロス」を用いた例題を解くことができます。特に基礎的な問題の作成についてのヒントになると思います。

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