AI先生キュビナの生みの親! 神野さんと考える「これからの学校教育と未来を生き抜く力とは」【コロナと向き合う】

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作成者:Kiyokawa Miku (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

本記事は、2020年4月25日(土)に開催されたオンラインイベント「AI先生キュビナの生みの親! 神野さんと考える『これからの学校教育と未来を生き抜く力とは』」(認定NPO法人Teach For Japan主催)の内容を編集したものです。

新型コロナウイルスの感染拡大は教育現場にも大きな影響を与えました。休校措置は解除されましたが、第二波が到来し、いつまた臨時休校になるかも分かりません。EDUPEDIAでは、必要な情報が教育関係者に届くように、【コロナと向き合う】特集をはじめました。

休校措置に伴い、これまで当たり前とされてきた「学校に行ってみんなで教室で学ぶ」という形が崩れたことにより、教育のあり方のアップデートはもう待ったなしとなりました。

イベントでは、はじめに神野さんがAI型タブレット教材Qubenaについての講演し、その後、神野さんに加えて、主催団体の認定NPO法人Teach For Japanの中原さん、池田さん、参加者による質疑応答が繰り広げられました。

本記事では、そのような状況の中で開催されたイベントで話されたこれからの学校教育のあり方や、これからの時代を生き抜くために必要な力について中心にまとめています。

2 Qubena誕生の背景

Qubenaを作ったきっかけ

私は、2010年にシリコンバレーで起業し、それが教育業界に飛び込むきっかけになりました。シリコンバレーから帰ったあとに学習塾を開きました。当時の塾では、「子どもたちに未来のことを伝えたい」と思い、週1時間その時間を取っていました。しかし、塾では現実的には勉強や部活に追われ、そのような時間を取ることはできませんでした。受験勉強で忙しい中、子どもたちが未来のことを勉強する時間を取るために、学習効率の研究を始めました。

Qubenaとは?

Qubenaとは、AI(人工知能)が子どもたち一人ひとりの得意・不得意を分析し解くべき問題を誘導するAI型タブレット教材です。Qubenaの学校現場への導入は、2018年から始まりました。塾への導入は、2016年からです。Qubenaのメリットは、通常授業の2倍くらいの速さで学ぶことができるところです。

知識・技能の側面から見ると、Qubenaを使えば中学校では1学年平均28時間の学習で修了します。つまり、学習時間を7分の1に圧縮することができるのです。

Qubenaを活用するときの先生の役割

このようなサービスを始めると「先生はもう必要ないですよね」とよく言われます。私は先生が必要ないとは思っていません。

QubenaのようなAI型タブレット教材のテクノロジーによって、子どもたちに知識や技能を提供することは可能です。しかし、子どもたちが自ら学ぶ態度や思考力を養うためには、先生が子どもたちと関わり合う中で養われていきます。教育現場で人間にしかできないことは人間がするべきだと思っています。

Qubenaを使うことによって、生徒たちはお互いに教えあいながら授業を進めることができます。一方、先生は生徒からの質問対応に専念することができます。これにより、主体的で対話的な学びをすることもできます。先生は、リアルタイムでラーニングマネージャーとして、進捗が遅れがちな生徒をサポートすることができます。

Qubenaの活用事例

Qubenaは経済産業省「未来の教室」実証事業でも取り上げられました。例えば、千代田区立麹町中学校では、従来よりも学習効率を上げ、余分に28時間作ることができました。よって、18時間を次の学年の授業に当て、残りの10時間分をSTEAM教育の時間に当てることができました。

3 質疑応答

新型コロナウイルスによる休校について

中原さん:新型コロナウイルス感染症の影響により、現在世界では15.7億人(188ヶ国で学生総人数の91.3%)が休校措置に直面しているという国連のデータがあります。(2020年4月16日時点)

神野さん:一斉休校の措置として、世界では分散登校も始まっています。例えば、デンマークでは小学校の低学年は登校させて、高学年は登校させていません。小学校1年生から3年生までは、オンライン教育をするのは難しいと考え、登校させています。オンライン教育には、知識・技能を身につけるのは向いているのですが、学ぶ姿勢を作る段階にはオンライン教育は向いていません。

参加者からの質問:休校の間、先生はどうすればよいでしょうか? 学校の役割はどう変わってくると思いますか?

神野さん:今まで、学校現場が虐待、生徒の家出、少女の妊娠を食い止めていました。先生が毎日子どもたちの顔を見て、判断していました。もちろん、遠隔教育によって、知識・技能を子どもたちに提供することはできるのですが、子どもたちや保護者との対話や関わり、学びの姿勢を養うことはできません。だから、子どもたちや保護者との対話は先生たちに何とかお願いしたいと思っています。

参加者:オンラインでの学習コンテンツは多く存在しますが、学習意欲が高い子と低い子がいると思います。もし、可能であれば先生が子どもたちに電話をしたり、インターネットを介したコミュニケーションをしたりするのが大切だと思っています。

Qubenaでも、先生は子どもたちが間違えた瞬間にリアルタイムで分かります。間違えた瞬間に「今、間違えたでしょ」とかを言ってあげると、子どもたちの学習意欲を上げることができると思います。

中原さん:現場の先生がChromebookを導入するのは難しいですよね?

神野さん:大多数の自治体はICT等の先進校を作ることを敬遠します。教育委員会は公正公平な学びを実現しなければいけないのに、一校だけ先進校を作ると住民から苦情が押し寄せることになるからです。従って大多数の教育委員会は先進校を作らないようにしています。小金井市の前原小学校がICTを積極的に導入することができたのは、教育委員会と市長が住民にていねいに説明し、住民理解があったからです。

参加者からの質問:授業動画を作る学校もありますよね?

神野さん:担当しているクラスの空気感の中で伝えることがあるとすれば、授業動画を撮るべきだと思っています。しかし、教科書に基づく単元を進めるための教育は、既にインターネット上に存在するYouTubeを使えばよいと考えています。あえて先生が独自に動画を作成する必要はないと思っています。インターネットをあまり知らない世代の先生は、YouTubeなどに既に動画が存在することを知らないのです。

先生自身が授業動画を作る場合、目の前にいる生徒に対して何か伝えたいことがある場合は撮る必要があると思います。しかし、それ以外の目的での授業動画は世の中に溢れています。

中原さん:既にどのようなオンラインコンテンツが存在し、何が使えるのかを現場単位で判断し、目の前にいる生徒に提供するためのコンテンツをどのように用意するのかを考えていく必要があります。

池田さん:先生が動画を撮ることが悪いというより、動画を撮ること自体が目的化してしまってはよくないということですよね。手段と目的を取り違えないよう、先生方が「何のために?」という点を議論できるとよいですよね。

そして目的に応じて、「これは私がやったほうがよい」「これはインターネットで探したほうが使える」というコミュニケーションを取れるような職員室になればよいと思います。

神野さん:コロナ禍において、職員室のコミュニケーションや意思決定や変わることもあるのですか?

池田さん:今までは、1~2年目の先生は積極的に何かを提案をすることはあまりできませんでした。しかし、コロナ禍において、管理職の先生から若手の先生にオンラインツールの導入の方法を聞くなど、組織のあり方は変わってきていると思います。

これからの学校教育について

中原さん:『人工知能時代を生き抜く子どもの育て方』という本を出された経緯や思いは?

神野さん:今後、その時代において必要とされる力は変わってくると思います。今は STEAM教育が必要とされていると言われますが、 STEAM教育の「T」つまりテクノロジーは時代によって変わります。したがって、40年前に行われていたから、今も同じようなことが起こると考えるのではなく、未来はどうなるのかを考えてそこから逆算して教育を行うのです。未来はこうなるであろうというところから考えて、その未来に対し子どもたちを連れて行くにはどうすればよいかがこの本で一番言いたかったことです。今の子どもたちが考えている職業のあり方もどんどん変わっていきます。それを実例に書いています。

何か一つを極めること

中原さん:また、その本で書かれている「子どもたちとの接し方を変え、人工知能時代に親子で適応する」という内容は、どのようなことを指していますか?

神野さん:今後、変化の激しい社会で生きていくためには何か一つを極める力が重要になってきます。何か一つを極める力として好奇心が大切だと思っています。 生まれた瞬間の子どもたちはとんでもない好奇心を持っています。

しかし、小学校になると、 自分の内発的な動機よりも外発的な動機によって子どもたちは動いてしまうことになります。 例えば子どもたちがテストでいい点をとると褒められたり、物をもらえたりします。子どもたちは本当はサッカーをやりたいと思っているかもしれないのに、勉強をしたほうが親や先生に褒められるから勉強を選んでしまいます。

これでは子どもたちが本来やりたいことを失ってしまいます。そこで、子どもたちにある好奇心を守るためという意味で「子どもたちとの接し方を変え、」という言葉を使っています。

中原さん:今までは、子どもはよい点数を取ったり、親が進んでほしい学校に進学したりすると喜ばれました。しかし、人が本来学ぶための過程は、他者からの評価によるものではなく、子どもたちの自発的な過程や経験が大切ということですね。

一方で、子どもたちが自発的に「やりたいことだけやればいい」というのとは少し違うと思います。「自由」と「勝手」では異なっているように、神野さんの中で、子どもたちが何かを極める上で大切にしていることはありますか?

神野さん:子どもたちが本当に大切にしているものを一緒に探したり、見極めたりすることが大切と考えています。子どもたちに何を極めたいか聞いたときに、子どもたちのやりたいことを聞いて終わりにするのではなく、「なぜやりたいのか」を言語化してもらうようにしています。

大人は、子どもたちの言語化によって、その子の中に宿っている人間らしさや人への愛を見つます。そのとき、「君そういうの好きなんだね」とあえて言ってあげるとよいと思っています。

4 登壇者のプロフィール(敬称略)

神野元基【ゲストスピーカー】

株式会社COMPASS ファウンダー
慶應義塾大学総合政策学部在学時より起業家として活動、2012年に学習塾COMPASSを創業。2019年中央教育審議会 臨時委員に就任。
著書に『人工知能時代を生き抜く子どもの育て方』。

中原健聡【聞き手】

Teach For Japan代表理事・CEO
1987年大阪生まれ。大学卒業後、スペインのサッカーリーグ(4部〜2部B、1部の練習生)で選手として活躍し、2014年に帰国。その後日本の教育機関で「自分の人生の切り拓き方」を講演して回る。
多くの子どもと関わる中で、日本の教育を発展させる学校を作りたいという目標を抱き、その目標の実現のため、自身で学校現場を経験すべく、2015年からTeach For Japanのフェロー3期生として奈良県内の公立小学校に赴任し、教師として勤務。2年間のプログラム修了後、2017年4月から、札幌新陽高等学校で校長の右腕として赴任。2019年4月からは、Teach For JapanのCEOを務める。

池田由紀【聞き手】

Teach For Japan 選考・研修担当 / 第3期フェロー
1987年東京生まれ。2010年早稲田大学教育学部卒業後、伊藤忠商事株式会社に入社し物流・用船事業に従事。2013年5月、教員免許取得のため同社退職後、文部科学省非常勤職員や教育系NPOでの非常勤職員などを務めながら通信制大学にて教員免許を取得。2015年4月より認定NPO法人Teach For Japanの第3期フェロー(教師)として奈良市内の公立小学校に赴任。教室では「子どもたちと社会、世界を繋ぐ」を軸にした実践を行い、地域では子どもたちとダンスクラブを立ち上げたり、映画上映イベントや教育関係者が交流できる場づくり・ワークショップの企画をしたりと、学校内外で様々な活動に取り組んだ。2018年4月より拠点を東京に移し、教育ベンチャー企業や私立学校でのパラレルキャリアを経て、2020年4月からはTeach For Japanの選考・研修を担当。

5 主催団体の概要

認定NPO法人Teach For Japan
認定NPO法人Teach For Japanは、世界53ヵ国に広がるグローバルネットワーク「Teach For All」の加盟団体で、「すべての子どもが素晴らしい教育を受けることができる世界の実現」というビジョンのもと、教育への情熱や社会課題の解決に対する意欲をお持ちの方々を、教員免許の有無にかかわらず2年間教員として公立小中学校の現場に配置する「フェローシップ・プログラム」を運営しています。
多様な人材を教育現場に送り込み、一人ひとりの教員(フェロー)が目の前の子どもたちと向き合うことで、生まれた地域環境や家庭環境にかかわらず、教育によって人生を切り開くことができ、それぞれの可能性が最大化されることを目指し、挑戦を続けてきています。
「教室から世界を変える」ーそれが私たちのミッションです。詳しくは上のURLをご覧下さい。

6 編集後記

子ども達はオンラインを通して知識・技能を身につけることは可能であるが、学びの姿勢を養うことはできないということが印象に残りました。これまで当たり前とされてきた「みんなで学校の教室で学ぶ」という教育の形だけでなく、これからはタブレットなどを通したオンライン学習を一つの選択肢として捉えることが大切だと考えました。

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 清川美空)

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また、EDUPEDIAで以前紹介されたQubenaに関する記事も併せてご覧ください。

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