格差によって苦しむ子どもにも可能性を開く教育とは【一般社団法人HASSYADAI.social】

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作成者:Ken Kamishima (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

本記事は、2020年5月27日(水)に行った、一般社団法人HASSYADAI.socialの代表理事である勝山恵一さんへのインタビューを編集・記事化したものです。日本の若者に迫る格差の問題に対して、現場の教員にできることは何なのか、その問題の本質に迫った記事となっております。

2 一般社団法人HASSYADAI.socialとは

一般社団法人HASSYADAI.social(以下「HASSYADAI」)は、若者の選択格差を是正することを目的に、全国の少年院・児童養護施設・高校などでCHOOSE YOUR LIFE(自分の人生を自分で選択する)プログラムを無償で提供して、若者の総合キャリア教育支援を行っています。

創設された背景としては、学歴・経済・地域・情報格差、これらの格差を是正することを目的に、2015年5月に「株式会社ハッシャダイ」として、「ヤンキーインターン」というプログラムの運営を始めたことが関係しています。そのプログラムでは、非大卒の若者に仕事・食事・住居を無償で提供し、その後の東京での半年間の研修を経て、彼らが社会へ出るための選択肢を獲得できるように支援しています。 現在、プログラムの卒業生は550名を超えて、学歴や生まれ育った環境に関係なく、若者達が選択肢を獲得して、自身の選択力を育て、社会に羽ばたいていきました。

この取り組みを続けていく中で、HASSYADAIは「18歳の進路選択」「格差の再生産」に対する課題意識を持つようになりました。 日本には大きな社会階層の分断が存在していて、 生まれた家庭・環境で大きく変わる年収・健康・学歴・職業など、自分自身ではどうにもならない外的要因が理由で可能性に気づけていない若者、未来に希望をもてない若者が多く存在しているのが現状です。

HASSYADAIは、社会階層が低いから不幸せで、高いから幸せかというと、そのようなことは全くないと考えていますが、日本で同じくして社会の枠組みで生きる人達の中で、機会の平等性が担保されていないことに大きな課題意識を抱えています。この「選択格差」という非常に大きな課題には、より多くの方々のご協力がなくては取り組めません。そして、機会の幅を広げるには営利団体ではなく、非営利団体でないと難しいところがあります。 そのため、HASSYADAIは一般社団法人となり、今まで人との出会いや一歩を踏み出すきっかけがなかった若者達に機会を提供して、日本の若者達が自分の人生を自分で選択していける社会を必ず作りたい、 という思いで現在活動しているそうです。

3 教員の選択格差へのかかわり方について

学校の先生方が、格差の影響によって苦しんでいる生徒たちに対して今すぐできることはありますか。

3つほどあると思います。

1つ目は、生徒一人ひとりがなぜそのような行動をするのかを、表面的にではなく、それぞれの生徒のバックグラウンドや周りの環境から理解しようとする姿勢を持つことです。この社会には選択格差が存在しているという事実を知ることから始め、生徒一人ひとりに合わせたサポートを行うことが重要だと考えています。

2つ目は、生徒の話を「ただ聴く」ことです。格差の課題によりマイナスな影響を受けている生徒の多くは、自分の居場所を求めているケースが多いと考えられます。そのため、先生方にただ話を聴いてもらえるだけでも、自分にとって安全な場所を手に入れられることができ、彼らの将来の可能性はより広がるのではないかと考えています。

3つ目は、より多くの大人に出会う機会をつくることです。これは全ての若者に対して言えることだと思いますが、10代の頃に、自分にとってのロールモデルに出会えるかどうかで、人生は大きく変わると思っています。私たちとしても、学校に直接お伺いしたり、外部の社会人を呼び授業をしていただくようなプログラムを提供しています。そのように外部のサービスをどんどん使っていただきたいなと思っています。

生徒指導の際、プライバシーの観点などから過度に家庭環境に踏み込めないことがあります。様々な家庭環境を背景に持つ子どもたちと接するうえで、学校の先生は何に気をつけるべきでしょうか。

非常に難しい課題ですが、1つ言えるのは「先生だけで解決しようとしないこと」だと思います。

現在、様々なソーシャルセクターが若者向けのサービスを提供しています。例えば、NPO法人DxPさんのオンライン相談サービスや、カタリバさんの「アダチベース」など、様々な外部のサービスがあります。弊団体でも無料で参加できるオンラインスクールを実施し、若者の居場所づくり、学べる環境を提供しています。

先生だけでそのような課題を解決する必要はなく、先生方が情報のハブとなり、適切なサービスを生徒に伝えられるだけでも、生徒指導の幅は広がるのではないでしょうか。

学校の先生は格差の影響で苦しんだ経験がないことが多いです。そのため、格差を受けている生徒に先生方が心から寄り添うことは難しいと考えられます。その難しさを乗り越える方法はありますか。

学校の先生方が無理して生徒との接点を合わせて指導するより、私たちHASSYADAIのような、生徒と共感の接点を合わせて、格差を受けている生徒にキャリアについての話をすることや進路についてアドバイスを提供できる団体との外部連携を強める方がよいのではないでしょうか。「若者の選択格差を是正する」とはいいながらも、HASSYADAIだけで日本の格差を是正できるわけではありません。そこで、他の団体(学校を含む)と連携して、共通の課題意識に対してどのように取り組むかということが大切になってきます。

学校の先生方は、自身の活用できる社会資本をたくさん持つべきという立場に私は立っています。そして、その資本を生徒の課題解決のアドバイスに役立てることが重要です。先生が全てを解決しようとする必要はないと考えています。

学校の先生を目指す学生が現代の教育に対応していくために、今勉強すべきことは何ですか。

もし今、私が先生を目指す学生だったとしたら、3つのことをすると思います。

1つ目は、できるだけ多くの、様々な立場の人に出会い、価値観を広げることです。学校に多様な生徒がいるように、社会にも多様な生き方をしている大人がたくさんいます。そのような大人と多く出会い、自らの価値観を広げることで、生徒の可能性をより広げられると思います。

2つ目は、格差について知ることです。これに関しては、早稲田大学の松岡亮二先生の著書である「教育格差」を一度は読むことをお勧めします。様々なデータから、格差の課題のことを紐解いていて、私としても学ぶことが多くありました。

3つ目は、カウンセリングやコーチングの知識を学ぶことです。生徒とのコミュニケーションの質が、教育課程においてこれまで以上に重要になると考えております。授業で上手く伝える能力はもちろん、生徒の話をしっかりと「聴く力」を伸ばすことができるとよいと思います。

最後に、勝山さんから日本全国の先生方に伝えたいことはありますか。

私たちが取り組んでいる格差の課題を解決するために、学校の先生方のお力が、より重要になると思います。「先生は天才の第一発見者だ」という言葉を聞いたことがありますが、まさにその通りだと思っています。現場の先生方こそが、生徒一人ひとりに寄り添い、可能性を発見し、伸ばすことのできる存在だと思っています。

しかし、まだまだ現在の社会には、外部要因が原因で将来への可能性を閉ざしてしまったり、可能性に気づけなかったりする若者がたくさんいます。これは自己責任論で終わらせることができません。自己責任論で終わらせないためにも、若者を社会とつなぐ接点を作らなければなりません。よりよい社会をつくるために、私たちも学校の先生方と協力し、少しでもお力になれればと考えております。もし、進路指導やキャリア教育プログラムに悩まれている学校の先生方がいらっしゃいましたら、ぜひ私たちへ連絡していただきたいです。

4 勝山恵一さんのプロフィール

1995年生まれ24歳。

一般社団法人HASSYADAI.socialの前身である「株式会社ハッシャダイ」が提供するサービス「ヤンキーインターン」のモデルになった人物。

株式会社ハッシャダイ創業から「ヤンキーインターン」の立ち上げ、カリキュラム開発を行い、現在は一般社団法人HASSYADAI.socialを立ち上げ、2年間で計120校の高校でHASSYADAI.social教育プログラムを実施。その他少年院、児童養護施設、法人向けと幅広い層に日本の若者達が自分の人生を自分で選択できるキッカケを提供する為に活動を行っている。

(2020年5月27日時点のものです。)

「一般社団法人HASSYADAI.social」のホームページはこちら https://social.hassyadai.com/

5 編集後記

日本の教育の中で広がっている「選択格差」の問題に対してどのように取り組んでいくべきか、考えさせられる内容となっています。簡単に解決できる問題ではありませんが、問題を分析し、今すぐできることから実践していくことが問題解決に向けて重要となってくるでしょう。

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 安間夏希、上島憲、来間れいな、千葉菜穂美)

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