個々のキャリア発達を踏まえた「教師」の働きかけ(文部科学省)

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目次

1 はじめに

この記事は、国立教育政策研究所ホームページに掲載されている、「キャリア教育・進路指導に関する総合的実態調査」パンフレットを転載させていただいています。

↓転載元はこちらです。↓
「語る」「語らせる」「語り合わせる」で変える!キャリア教育ー個々のキャリア発達を踏まえた“教師”の働きかけー

この記事では、先生方が「語る」、子どもに「語らせる」、子どもたちに「語り合わせる」の3つの意図的な働きかけをキーワードに、個々の発達を踏まえたキャリア教育について記載しています。

キャリア教育とは

キャリア教育は、「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」のことを指します。[*1]

[*1] 中央教育審議会「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について(答申)」(平成23年1月31日)

子どもたちが将来、社会の中で自分の役割を果たし、自分らしい生き方を実現するための力を身につけさせるべく日々の教育活動を展開することこそがキャリア教育です。

したがって、これは教育活動内にある、子どもたちのキャリア発達を促すのに有効な諸要素(学習内容や指導方法、生活・学習習慣、体験的な活動)を意図的に相互につなげながら、学校の教育活動全体で進められるものです。

2 個々の発達を踏まえたキャリア

日常の生活でキャリア教育なんてできるの?

「日常の生活でキャリア教育なんてできるの?」そのような疑問をお持ちの先生方も少なくないでしょう。しかし、先生方は日頃子どもたちと接する中で、例えばこのような対応をしていないでしょうか。

「明確な目標を決められず自信がもてない」という高校生の現状を踏まえ、夢や目標は発達や経験によって変わることがあってもかまわないことを気づかせようと意図した対話です。このような働きかけが個々の発達を踏まえたキャリア教育です。

このように考えると、日々の学校生活や教科等の授業、体験活動、行事を経験する中で、その子なりに学んだことや考えたこと等の積み重なりに着目することが大切ではないでしょうか。一人一人異なる積み重なりを意識しつつ、まだ言葉や文章になっていない子どもたちの気づきを言語化できるように支援することが、個々の発達を踏まえたキャリア教育を行なっていく上でのポイントになります。

自らの生き方に関わるキャリア教育の充実

子どもたちは学校を卒業したあと、自ら判断し、自立し、自分の人生を生きていかなくてはなりません。しかしながら、自立して生きていくことは急にできるようなものではなく、準備を必要とします。
そのため、学校にいる間から、子どもたちが自分の思いや自分を取り巻く人たちの願い、自分の置かれている環境などを見つめ、自らの生き方を考える経験をしておくことはとても重要になってきます。

『自らの生き方に関わりキャリア教育の充実』が重要であることは、多くの先生方が実感していることが明らかになっています。

『だからこそ、先生方の働き方が問われています。』

目の前の子どもたちの一人一人の今までの経験が状況を捉えてきた先生方こそが、子どもたちが成長し、未来に向かって学んでいくことの手助けをする絶好の位置にいます。先生方が見た子どもたちの状況を積極的に生かして、個々の発達を踏まえながら働きかけていきたいところです。

個々の発達を踏まえて働きかける方法

個々の発達を踏まえて働きかける方法の一つであるキャリア・カウンセリングを取り上げます。データからは、小学校、中学校及び高等学校の特徴が見えてきます。

上のデータを見るとわかるように、小学校と中学校、高等学校の間に本当にこのような違いがあるのでしょうか。一人一人を大切にしているのは、どの学校種でも同じではないのでしょうか。

『小学校には中学校、高等学校の二者面談・三者面談のような進路相談の機会はありませんが、自己を理解する学習は積極的に行っています。』

一方、中学校、高等学校では、二者面談・三者面談のような進路相談のときだけではなく日常生活のさまざまな場面で、個々の発達を踏まえた働きかけを意図的、計画的に行うことが大切となります。

3 個々の発達を促す「語る」「語らせる」「語り合わせる」

子どもたちが将来自立して生きていけるよう自分の生き方を見つめ、主対的に考えられるよう、個々の発達を踏まえて働きかけるには、どのようにすればよいのでしょうか。

先生方が「語る」

子どもたちにとって自分の生き方を考える上で、先生が「語る」ことは重要です。だからこそ、伝える内容と伝え方の双方に気を付ける必要があります。「あなたはどうしてそう思うのかな?」というように、子どもたちの思いや考えを引き出すよう、意図して働きかけることが大切です。

子どもに「語らせる」

まだ言葉や文章にしていない自分の思いや考えに気付くきっかけになります。そのため、子どもに「語らせる」ときは、耳を傾けて受け止めるよう心がけることが大切です。

子どもたちに「語り合わせる」

他者の思いや考え方を知るとともに、自分自身の思いや考え方を明確にしたり、整理・再構築したりすることにつながります。意図的に、自他の違いに気付き、それを受け入れるよう促していくことが大切です。

「語る」「語らせる」「語り合わせる」ときに大切なこと

「語る」「語らせる」「語り合わせる」ことは、決して単なる会話や対話ではありません。ましてや、指示的に話しかけたり、思いや考えを押し付けたりすることでもありません。

先生方が一方的に指示した場合、もしくは意図もなく子どもたちに話し合いをさせた場合であっても、一時的になら子どもたちに変容が見られるかもしれません。しかし、それは成長・発達につながるとは限りません。

大切なのは、子どもたちは自ら気づくことを促し、主対的に考えさせ、それを成長・発達へとつなげていくことです。また、どの場面であっても、相手と自分の双方を尊重する、あるいは相手を傷つけず、自分のことも犠牲にしないようにすることが重要です。

4 事例1:小学校での1/2成人式

自分の成長を実感させ、未来を思い描けるように促す

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意義

「1/2成人式」は、生きることのすばらしさや自身の成長に気づく絶好の機会です。この気付きを将来の目標につなぐという視点から、自分の可能性や理想の未来を思い描くように促します。

ポイント

無理に夢を持たせることを目的とするのではなく、どんな大人になりたいかという目標をもたせることを大切にしましょう。その際には、今までの成長を実感する手掛かりを与え、共感しながら「子どもたちの思い」を引き出し、言葉や文章にする支援を積極的に行っていきましょう。

5 事例2:中学校での職場体験活動

子どもたちに不安を乗り越えさせ、新たな学びを促す

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意義

日々の学習意義を感じさせる場として、職場体験活動は有効です。しかし、中学生だからこそ、新たな学習に不安を感じたり、想像との違いを感じたりする子どもたち出てきます。子どもたちの不安や疑問を受け止め、新たな学習に取り組めるよう促します。

ポイント

子どもたちが未経験の事柄に直面したときに、どのような点で不安を覚えるのかは様々です。上記の例のように、職場体験の直前で、具体的な検討に入ってきたときこそ、受容・共感、提案などの複数の対応方法を子どもたちの能力や適正、状況を見極めて使い分け、働きかけることが重要です。

今回紹介した事例の他にも、いくつかの事例が紹介されています。こちらも併せて御覧ください。

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7 編集後記

私は、この転載を通して、キャリア教育のイメージが変化しました。日常の生活で子どもたちの「気付き」を促し、主体的に考えさせ、子どもたちの行動や意識の変容につなげることを意識することが大切だと思いました。

この記事を読んだ先生方が御自身の取り組みを変える際の参考になると幸いです。
(EDUPEDIA編集部 辻)

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