四則計算の第一歩「1年生のたし算・ひき算」をどう教えるか

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大切な第一歩


1年生のたし算とひき算はその後の小学校算数の学習の基礎となる大切な第一歩であるはずです。ここがうまく指導できていなければ、落ちこぼされた子供たちが後々躓くことになります。計算がスムーズに、スピーディーにできない子供にとっては後々の算数の授業が「辛い思いをする時間」になってしまいます。特に5年生の小数÷小数の計算は非常に手数が多いです。下記リンク先の記事をご参照ください。

どのように教えられているか


では、その大切な第一歩が現場でどのように教えられているのか。こんな記事を下記ながら、申し訳ないのですが、私は小学校教師になって5年目に1年生の担任になったきり、1年生に関わることがありませんでした。その当時、どうやってたし算・ひき算を教えたのか、全く記憶にありません。
「覚えてしまえ」
と、切り捨てていたのではないかと思います。1年生の授業はたいへんゆっくりしたペースで進むので、当時は国語にしても算数にしても、どうやったら簡単な内容を引き延ばして45分間もたせることができるのかに腐心していて、「子供が理解しているのか」「習熟が測れているのか」などについてはほとんど考えていなかったように思います。
では、自分以外の教師はどうしているのか。興味があるので今まで何人かの同僚や知人教師に聞いてみましたし、子供たちにもどうやって教えられたのか、習得したのかを聞いてみました。しかし、残念なことに、「これがたし算・ひき算教授方法の定説だな」と思える答を得ることはできませんでした。ベテランの先輩に尋ねても、「うーん、具体物を操作させながら、柔軟な考え方ができるようにすればいいと思うけど・・・」といった返事しかもらえません。「どうやって計算をしている?」と、指を使って計算をしている計算が苦手な子供に聞いても、計算が得意で論理的に話ができる子供に聞いても、「自分がどうやって答えを出しているのか」を説明できないようです。大人・・・私自身も含めて、大人も「覚えているからどうやって計算しているかと言われても説明できない」という答えが多いです。
教科書・指導書、その他さまざまな解説も見てきましたが、どうも腑に落ちないことが多いです。

加数・被加数


たとえば、3+9はどう考えているのか。
●●●+●●●●●●●●●
式の意味から言うと、3(被加数)に9(加数)を足しているのだから、9を7と2に分解して、(3+7)+2となるのでしょう。
●●●←●●●●●●●●●
というのが意味的には順当ですね。
でも、こうした大きい数を動かすのは、おそらくスピード感に欠けるやり方だと思います。私たちは交換法則を知っているので、3+9も9+3も同じだという事で、3を2と1に分解して、2+(1+9)と考える人が多いのではないでしょうか。
●●●→●●●●●●●●●
瞬時に3を9に寄せるでしょう。これは、「小さい方の数を操作する」という原則が頭の中で働いていて、2+7であっても、「7の2つ上の数」と、考えるのではないかと思います。違う人もいるのかなあ。

減減法・減加法


ひき算もまた、難しいです。13-4であれば、4を3と1に分解して、13-3-1と、2段階で引きますよね。10-(4-3)と考えている人もいるかもしれません。どちらにしても、これは減減法です。引き算を2回しているわけです。ひき算なら、ひき算を2回する方がそれらしい。だから減減法を使うべきだという主張があります。
これに対して、では、13-9はどうなのかという話。
減減法であれば、9を3と6に分解して、13-3-6と、2段階でひくことになります。しかし、9は10の1こ下の数字です。であれば、(10-9)+3と考えた方が、合理的な気がします。この方法を減加法と言います。
つまり場合によって、減減法・減加法を使い分け、「小さい方の数を操作する」というのが原則なのではないかと思います。

迷える教師


この「加数・被加数」「減減法・減加法」に関しては、様々な意見があり、この2つをキーワードに検索をかけて調べてみてください。本当に様々なことが書かれています。詳しい内容の討議は、書籍やネットに譲ります。
現場ではこうした討議が詰めて話し合われることはあまりないようです。それぞれの教師が、それぞれのやり方・力かげんで、教えているようです。
たとえば、12-6。これが減減法で(12-2)-4なのか、減加法で(10-6)+2なのか、どちらが正しいかなど言い切れません(みなさんはどっちですか?私は12=6×2なのでどちらでもないような・・・)。
教科書はとても曖昧に書いていますし、指導書だって不明瞭です。すでに家庭学習であるていどの習熟が進んだうえで授業にのぞんでいる子供も少なくないので、あまりこちらの考えで、「このケースは減現法で」と教えると減加法を用いている子供を混乱させる結果になりかねません。だから、教師も迷ってしまい、教え方が曖昧になってしまうのです。

自分ならどうするか


難しいです。もし自分が1年生の担任になったらどうしましょうか??私はまず、1年担任は希望はしないし(したことがない)、管理職もお片付けが苦手な私(苦笑)を1年担任にしようとは思わないと思います。でも、もし、自分なら。
MAX40人を相手に、具体物で操作すると言っても、これはなかなか難しいと思います。ここに対して、次々に具体物を準備するのは大変です。算数セットの中にあるおはじを6+7の状態に置かせることは、多分もう、耐えられない面倒さだと思います。たとえ、百玉そろばんをクラスの人数分用意ができたとしても、実際に全員に6+7を準備させるのは面倒だと思います。動作の遅い子供が、この「準備」の段階で、こぼれていきます。さらに、6+7を(6+4)+3と動かすのか、3+(3+7)と動かすのかで混乱する子供はたくさん出るでしょう。一斉授業はテンポがよくなければ子供はついてきません。想像するだけでげっそりします。
もし、GIGAスクールで1人1台の状況ができ、エクセルが使えるなら、画面上に図で「おはじき問題」をたくさん作って準備して、ドラッグさせて移動させる作業を繰り返したいなと思っています。GIGAスクール端末にエクセルが入っていなければお絵かきソフトで切り取ってドラッグでもいいですが・・・どんどんおはじきを動かすことによって、「小さい方の数を操作する」イメージが身につくと思います(2+7で7を動かすのは面倒だから)。

習熟用ビデオ


教え方、教える過程の話は置いておいて、習熟の過程のために、ビデオを作ってみました。YOUTUBEにかなりの数の動画をアップしています。「小さいほうの数を操作する」を原則にしています。スモールステップを設定して、だんだんとスピードを上げるように作っています。これがどれほどの効果があるのかは、一斉授業で使ってみたことがないので、GIGAスクール端末の登場を待たなくては証明できません。たし算・ひき算の苦手な子供にいくらかやらせたところ、けっこう効果があったように思います。百ます計算と同時進行したので、この動画が功を奏したのか、百ます計算が功を奏したのか、判定ができないからです。もし、やってみた方がおられましたら、コメント欄にでもご連絡ください。
多分、「限定的なイメージを刷り込むのはよくない」というご意見(お叱り)もあると思います。
でも、普通の1年生の授業ではたし算・ひき算のスピードが十分に身につかず、いつまでも指を使ってしまい、後々の算数の学習で苦しむ子供を見捨てるよりかは、こちらからイメージを提供してあげるのはそんなに悪いことでもないと思います。
GIGAスクール端末の導入が近づいています。
誰もが無料でこの動画にアクセスでき、学校でも家庭でも、合理的なイメージを基に計算力を向上させることに少しでもお手伝いができれば幸いです。

YOUTUBEにスモールステップ教材をアップ


今回は、動画を作ってみました。GIGAスクール構想が進められる中、素朴ですがこのような動画があれば、個別学習支援ツールとして使える教材になると思います。


これ↑↑↑を見ながら答を言う練習をすると、たし算・ひき算のイメージがつかめるようになってきます。スモールステップを設けていますので、だんだんスピードが上がってきます。スピードについていけたら、次のステップに進みます。LEVEL0a→0b→1a→1b→・・・→5a→5bと、順に進んでいってください。
①たし算の繰り上がりなし
②たし算の繰り上がりあり
③ひき算の繰り下がりなし
④ひき算の繰り下がりあり
の4種類を準備しました。
各種類で全部で45パターンあるので、22と23に分け、aとbの2系統に分けました。各レベルでaとbにして、和が1~10になる1桁のたし算を網羅しています。+LEVEL *aと+LEVEL *bはセットと思って、両方を学習してください。「+LEVEL 5b」↓↓↓になると、無茶苦茶速いですよ。


0aと0bには答が表示されますが、その後は表示されません。

ビデオは全部で48本あります。ビデオの元になっているパワーポイントもアップしています(授業でも使えると思います)。詳細は、下のリンクをご覧ください。
1桁のたし算・ひき算をイメージして覚える【教材】【動画】

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