子どもに関する統計調査解説【21世紀出生児縦断調査(平成22年出生児)】

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目次

1 はじめに

本記事は厚生労働省のホームページを基に、21世紀出生児縦断調査(平成22年出生児)について解説したものです。統計結果に基づく子どもの実態把握をする際の参考資料として、ぜひご活用ください。
(最終閲覧日:2020年9月11日)

2 21世紀出生児縦断調査(平成22年出生児)とは

厚生労働省が年1回、全国の平成22年(2010年)5月10日~24日の間に出生した子どもを対象に行う縦断調査です。主な調査項目は、家族構成、子育て感、父母の家事・育児分担状況、子育ての負担や悩み、子育ての悩みの相談先、父母の就業状況などがあります。また、21世紀の初年である平成13年に出生した子どもを継続的に観察している21世紀出生児縦断調査(平成13年出生児)との比較対照等を行うことで、少子化対策等の施策の企画立案、実施等のための基礎資料を得ることを目的としています。

3 第9回調査

ここからは、2019年5月25日に実施された、21世紀出生児縦断調査(平成22年出生児)の第9回調査について解説します。なお調査時点の子どもは9歳(小学校3年生)です。

3-1質問項目

質問は複数のテーマごとに設けられており、全部で26問あります。各テーマの主な質問内容は以下の通りです。

【ご家族について】
同居者、単身赴任中か、祖父母や近隣住民との関わり方

【平成22年5月生まれのお子さんについて】
登校日と土・日曜日ごとの起床時間と就寝時間、朝食・夕食の有無、約1年の間に診察を受けた病気やけが、身長・体重、性格、子どもにさせているお手伝い

【学校生活・放課後について】
学校生活のようす、下校~午後6時ごろまでの過ごし方、下校~就寝まで一人で過ごす時間、お小遣いの有無、テレビ視聴時間、ゲーム利用時間

【1ヶ月間にお子さんにかかった費用について】
平成31年4月の1ヶ月間に、平成22年5月生まれのお子さんにかかった全ての費用(学童保育料、医療費、食費、衣料費、学校や習い事等にかかった費用など)

【家庭学習について】
1日の学校以外の学習時間、父母の家庭学習への関わり方

【習い事等について】
習い事経験や種類・頻度 

【子育てについて】
子どもがいて良かったと思うこと、負担だったこと

【お母さん、お父さんについて】
就業状況、一緒に過ごす時間、喫煙状況、食習慣、年収

詳細はこちらをご覧ください。
出典:「第9回21世紀出生児縦断調査票(平成22年出生児)」(厚生労働省、最終閲覧日:2020年9月11日)

3-2調査結果

厚生労働省は、調査結果を1母の就業状況の変化、2子どもの生活の状況、3父母の喫煙状況に分けて公表しています。

また、「同居者」「就業状況」については以下のように定義されています。

(1)同居者

次の者は含まない。

① 長期(概ね3か月以上)にわたって不在にしている者。② 現在不在で不在期間が長期にわたることがわかっている者。ただし、①、②の者で途中定期的に帰宅する者は同居者としている。

(2)就業状況「有職」勤め(常勤)、勤め(パート・アルバイト)、自営業・家業、内職、その他を合わせたもの。育児休業中等の休業を含む。

「勤め(常勤)」事業所の所定労働時間を通じて勤務する者。

「勤め(パート・アルバイト)」同一事業所の一般の労働者より1日の所定労働時間が短い又は1日の所定労働時間が同じでも1週の所定労働日数が少ない者。

「無職」家事(専業)、無職、学生を合わせたもの。

出典:「用語の定義」(厚生労働省、最終閲覧日:2020年9月11日)

調査全体の詳細は概況版をご覧ください。(厚生労働省、最終閲覧日:2020年9月11日)

1 母の就業状況の変化 

〇母が有職の割合は75.0%(平成13年出生児比+11.2ポイント)

母が有職の割合は、出産1年前の62.0%が第1回調査(出産半年後)で 35.4%に低下しましたが、その後は年々上昇し、第9回調査(小学3年生)では 75.0%となり、平成13年出生児(第9回)の 63.8%に比べて11.2ポイント高くなっています。

母の就業状況の変化をみると、「勤め(常勤)」の割合は、第1回調査(出産半年後)の 25.1%から第9回調査(小学3年生)の 27.0%までゆるやかな上昇傾向であり、「勤め(パート・アルバイト)」の割合は、第1回調査(出産半年後)の 5.9%から年々上昇し、第9回調査(小学3年生)では 40.9%となっています。(図1)

〇出産1年前の就業状況が「勤め(常勤)」の母のうち、第1回調査から第9回調査まで継続して「勤め(常勤)」の母の割合は、37.5%(平成13年出生児比+10.9 ポイント)

出産1年前の就業状況が「勤め(常勤)」の母について、第1回調査から第9回調査までの就業状況の変化をみると、平成22年出生児の各回における「勤め(常勤)」の母の割合は平成13年出生児よりも高い割合で推移しています。さらに、第1回調査から第9回調査まで継続して「勤め(常勤)」の母の割合は平成22年出生児では 37.5%で、平成13年出生児の26.6%に比べて10.9ポイント高くなっています(図2)。

出典:「母の就業状況の変化」(厚生労働省、最終閲覧日:2020年9月11日)

2 子どもの生活の状況

(1)放課後に過ごす場所

〇「学童保育」の割合は 26.3%(平成13年出生児比+12.3 ポイント)

平成22年出生児について、放課後に過ごす場所(複数回答)をみると、「自宅」が 77.2%と最も高く、次いで「習い事、スポーツクラブ、学習塾等」が 40.7%、「公園」が 34.6%の順となっています。また、平成13年出生児と比較すると、「学童保育」の割合は 12.3ポイント高くなっています(図3)。

平成22年出生児について、第7回調査(小学1年生)から第9回調査(小学3年生)までの放課後に過ごす場所(複数回答)の変化をみると、学年が上がるにつれて「学童保育」の割合が低下している一方、「自宅」、「子どもの友だちの家」、「習い事、スポーツクラブ、学習塾等」の割合は上昇しています(図4)。

(2)習い事等

〇「習い事等をしている」割合は 87.7%で、学年が上がるにつれて上昇

平成22年出生児(第9回)の「習い事等をしている」割合は 87.7%であり、平成13 年出生児(第9回)の85.4%に比べて2.3ポイント高くなっています。

第7回調査(小学1年生)から第9回調査(小学3年生)までの習い事等の有無の変化をみると、平成22年出生児、平成13年出生児のいずれも、学年が上がるにつれて「習い事等をしている」割合が上昇しています。(図5)

また、平成22年出生児について、性別にみた習い事等の種類(複数回答)によると、男児では「水泳」が 40.0%と最も高く、次いで「サッカー」が 21.1%、「学習塾」が 20.4%、「通信教育」が 19.0% となっています。女児では「音楽(ピアノなど)」が 39.6%と最も高く、次いで「水泳」が 34.2%、「通信教育」が 22.0%、「習字(硬筆を含む)」が 21.9%となっています。(図6)

(3)母と一緒に過ごしている時間

〇平日における最も長い「6時間以上」の回答は 26.1%、休日における最も長い「10時間以上」の回答は 65.9%となっており、学年が上がるにつれて低下

平成22年出生児(第9回)について、母と一緒に過ごしている時間をみると、平日の最も長い時間帯の「6時間以上」は 26.1%、休日の最も長い時間帯の「10時間以上」は 65.9%となっています。第7回調査(小学1年生)から第9回調査(小学3年生)までの平日−休日に母と一緒に過ごしている時間の変化をみると、平日、休日ともに、学年が上がるにつれて長時間(平日は「6時間以上」、休日は「10 時間以上」。以下同じ。)の割合は低下しています。(図7)

また、平成13年出生児と比較すると、いずれも長時間の割合は高くなっています(図8)。

出典:「子どもの生活の状況」(厚生労働省、最終閲覧日:2020年9月11日)

3 父母の喫煙状況

〇母・父がたばこを「吸っている」割合は、平成13年出生児(第9回)と比べて低下

平成22年出生児について、父母の喫煙状況をみると、母がたばこを「吸っている」割合は7.2%で、平成13年出生児の 14.4%より7.2ポイント低く、父が「吸っている」割合は34.0%で、平成13年出生児の 44.7%より10.7 ポイント低くなっています(図9)。

また、平成13年出生児と平成22年出生児の第1回調査、第5回調査及び第9回調査の推移を比較すると、母はいずれも第5回調査で上昇していますが、その割合は母・父ともに平成13年出生児よりも平成22年出生児は低い割合で推移しています(図10)。

出典:「父母の喫煙状況」(厚生労働省、最終閲覧日:2020年9月11日)

4 編集後記

子どもの生活習慣や保護者の収入など、学校生活のみならず家庭環境にも言及された既存のデータを発信したいという思いで執筆しました。本記事を、子どもの家庭環境を把握する際の一つの指標として役立てていただけたら幸いです。(編集・文責:EDUPEDIA編集部 来間れいな)

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