アスペルガー症候群の児童に対して行動と感情を切り離した指導を行った事例(インクルDB)

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作成者:Yurika Hiramoto (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

本記事は、「インクルDB(インクルーシブ教育システム構築支援データベース)」の実践事例データベースの内容を引用・加筆させていただいたものです。今回は、「感情のコントロールが難しい高等学校1年生の生徒の行動変容を促すための支援と合理的配慮」 に掲載されている事例をご紹介します。感情のコントロールが苦手な児童への対応にお悩みの先生方、ぜひご一読ください。

◎事例の概要

A生徒の学習状況は良好でしたが、感情のコントロールが難しく、一度イライラすると暴言を吐いたり、粗暴な行動をとったりすることもありました。B高等学校に入学後もさまざまな場面で問題を起こし、その都度、指導を行ってきましたが、同じような問題を繰り返していました。

そこで、出身のC中学校で行っていた合理的配慮を参考にした校内支援委員会での支援策の検討専門家チームによるケース会議を実施し、A生徒に対する支援について教職員で共通理解を図りました。

また、合理的配慮支援員による授業観察や面談の様子から、A生徒は感情が優先してしまうタイプであり、感情と行動を切り離したアドバイスが有効であるという助言をもらいました。そこで、「A生徒の行動には問題があったが、A生徒自身を否定しているわけではない」という視点を大切にしながら支援を行いました。そして、A生徒の感情を受け止めながら、A生徒との信頼関係を築いてきたことで、問題行動に対しての指導についてA生徒が納得する様子がみられました。

※EDUPEDIAには、特別支援に関する記事が他にも多数ございます。ぜひ併せてお読みください。
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2 生徒の実態

A生徒は、B高等学校に在籍する1年生です。アスペルガー症候群(広汎性発達障害の一型。言語や認知の発達の明らかな遅れはないが、何らかの脳機能障害によって、対人関係とコミュニケーションの障害、物や習慣へのこだわり、環境の変化に対する過敏性など、自閉症特有の症状を生じる。広辞苑より引用)の診断を受けています。出身のC中学校では、特別支援学級に在籍していました。

A生徒は、興味のある学習に対しては意欲的に取り組むことができ、得意な教科の試験では満点を取ることもありましたが、苦手な教科の授業に対しては、私語や居眠りなど集中力に欠ける様子が伺えました。また、生徒指導に厳しい教員の話はよく聞く一方、その他の教員の話はあまり聞かない様子も伺えました。

3 本事例に関する基礎的環境整備

  • B高等学校に入学後、気になる生徒については、生徒の出身中学校に連絡を取り情報を収集しています。その際に、校内支援委員会で作成した引継ぎシートを活用しています。
  • 支援が必要な生徒については、各学年会などの情報をもとに、特別支援教育コーディネーター(校内の関係者や関係機関との連携調整や保護者の連絡窓口となるコーディネーター的な役割を担う者。文部科学省HPより引用)が情報をとりまとめて支援の参考としています。
  • 特別支援教育に関する校内支援委員会(メンバーは、教頭、特別支援教育コーディネーター、保健主事、教務部代表、生徒指導部代表、各学年代表、養護教諭の9名で構成)を設置しています。また、巡回支援員や特別支援学校のコーディネーター、合理的配慮支援員などの校外の専門家の協力を得ています。
  • 支援が必要な生徒については、授業観察等で得た情報をB高等学校で作成したアセスメントシートに記入しています。また、個別の支援が必要な生徒については、校内支援委員会や外部の専門家チームによるケース会議を開催し、具体的な支援策を検討しています。また、個別の教育支援計画や個別の指導計画を作成して、全職員で共通理解を図っています

4 合意形成のプロセス

A生徒の保護者から、座席の配慮や対人関係によるトラブルがあった際の対処についての支援をしてほしいという申し出がありました。申し出に基づいて、校内支援委員会で、出身のC中学校で行っていた合理的配慮を参考にし、支援策の検討を行いました。また、専門家チームによるケース会議を実施し、支援の内容について保護者と合意しました。

5 合理的配慮の実際

  • イライラした時に保健室でクールダウンを行うよう指導しています。
  • A生徒が活動する実習班のメンバーを固定し、A生徒が安心して学べるように配慮しています。また、インターンシップや遠足、修学旅行については、A生徒のことを理解している生徒と意図的に同じグループにするよう配慮しています。
  • 専門家によるケース会議を実施して、A生徒の支援策について検討しました。A生徒の特性を踏まえ、支援内容と方法を整理しました。

6 本事例の成果と課題

A生徒は、B高等学校に入学後もさまざまな場面で問題を起こし、その都度、指導を行ってきましたが、同じような問題を繰り返していました。そこで、専門家によるケース会議で支援策を検討し、A生徒の実態に即した支援方法を検討しました。現在も、支援の見直しや修正を行い、教職員がA生徒について共通理解しながら対応しています。A生徒の情緒面での支援については、合理的配慮支援員から「行動と感情を切り離し指導するように」という助言があり、「A生徒の行動には問題があるが、A生徒自身を否定しているわけではない」という視点を大切にしながら支援を行いました。その結果、問題行動の指導についてもA生徒が納得する様子がみられるようになりました。今後もA生徒の人格を認めつつ、A生徒の行動変容を促していきたいと思います。

7 出典


インクルDB(インクルーシブ教育システム構築支援データベース)
http://inclusive.nise.go.jp/?page_id=13

独立行政法人国立特別支援教育総合研究所が運用するインクルDB(インクルーシブ教育システム構築支援データベース)は、子どもの実態から、どのような基礎的環境整備や合理的配慮が有効かについて、参考となる事例を紹介しています。また、研修会等での事例検討にも活用できます。

インクルDBは、各学校の先生方だけでなく、保護者の方をはじめ、広く一般の方にもご利用いただくことができます。ぜひ、ご活用ください。

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9 編集後記

アスペルガー症候群の生徒に、感情と行動を切り離したアドバイスを行った支援についての事例を紹介しました。この記事が、同じような生徒の対応に悩んでいる先生方のお役に立てば幸いです。
(編集:EDUPEDIA編集部 平本)

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