大人気教育系YouTuber・葉一さんから学ぶ!授業動画作成のコツと学校に求められる今後の役割とは

GOOD!
129
回閲覧
0
GOOD

作成者:徳田 美妃 (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

この記事は、2021年3月17日に行った、教育系YouTuber・葉一(はいち)さんへのオンラインインタビューを記事にしたものです。葉一さんは、まだ教育系YouTuberが少なかった2012年から活動を始めて、今(2021年6月時点)ではチャンネル登録者数150万人を超える大人気YouTuberの方です。YouTubeでは、幅広い校種・学年の授業動画を投稿しています。YouTubeでの学びを「新たな学びの選択肢」となるような願いもこめて活動を続けています。

今回のインタビューでは、多くの子どもたちから視聴されるYouTuberならではの、話し方や板書、動画制作のコツと教育や行政についてお話を伺いました。

2 葉一さん直伝 学校で使用する授業動画作成のコツ

YouTube動画内の板書や映像についての工夫やこだわり

板書について

動画を開いたときの最初の印象として綺麗と思ってもらえるように工夫しています。板書に対するこだわりは誰よりも強いです。バランスを考えるため、一文字ずつ定規で測っています。2ミリずれたら書き直すほどです。また、文字幅や行間もこだわっていて、板書案を考える際に文字情報の多さによって変えています。板書には、書き直しを含めて30分~1時間半かけています。

映像について

集中力の継続のため、動画1本に対して板書1本を徹底しています。また、映像の長さは基本的に15分を超えないように作成しています。オンデマンドは対面の授業に比べて非常に集中しづらいと思っています。ホワイトボード1枚分で授業内容を完結させることで、子どもたちに授業の全体像とゴールを把握させ、集中力の持続を図っています。「ここまで頑張れば終わるんだ」と分かっている方が勉強に対するモチベーションが上がると考えています。

話し方で心掛けているのは間延びしないこと

--話し方の工夫はありますか?

現在はそこまで気を使っていませんが、2012年にYouTubeへの動画投稿を始めた頃は、学年が下になればなるほど少しゆっくり話したり、わざとタメ口を多くしたり、飽きさせないような工夫をしていました。授業動画は編集を入れないことをポリシーとしているので、基本的にカットはしないようにするため間延びしないようにしています。文字数が多い答えを書くときは、書いているときに間延びするので喋りながら書きます。だから、私の授業動画では間延びしているシーンはほとんどないと思っています。

事前に授業案をしっかり組み立てることで授業のよさが決まる

--話すことや台本は頭の中に入っていますか?

頭の中である程度、全部台本を作ってから完璧な状態で授業をしています。東京学芸大学卒業後、先生にならず営業マンをしていました。今と全然関係ない仕事をしていましたが、営業マンのときの仕事が今でも大変活きています。家へ営業するとき、インターホンを押した後にお客様の気を惹くため間延びせず飽きさせない話し方を心がけていました。営業は準備が9割と言われ実践していたことも今活きています。板書や話し方含めて授業案を事前にしっかり組み立てているかで授業のよさが決まると思っています。

動画作成の秘訣は集中力を保てる長さ

--休校期間に授業動画を撮られた先生も多かったと思います。授業動画を作るうえで学校の先生がすぐに使える技などはありますか?

そもそも対面授業のノウハウと映像授業のノウハウは全く異なるものです。しかし、休校期間に授業映像を配信することになった時にそのことを子どもたちや保護者の方々はあまり理解していませんでした。対面授業のノウハウがそのまま映像授業にも適用されると考え、映像授業の経験のない学校の先生方に過度な期待が寄せられていました。その風潮はよくないことだと思います。その時期には多くの学校の先生から相談がありました。そこでよくお話ししていたことは、「45分の動画を撮ることはやめてください」ということです。対面授業より映像授業は集中力が持続しにくいと言われています。対面授業の時間に合わせて動画を撮ることは先生にとっても子どもたちにとっても苦痛です。また、三脚を使って授業動画を撮影した方がよいとアドバイスしました。三脚を立てずに他撮りする先生方もいらっしゃいましたが、映像がぶれてしまい、画面酔いしてしまうのでできれば避けた方がよいです。加えて、可能であればピンマイクも使用できればよいです。今の子どもたちはデジタルネイティブの世代なので、目と耳が大変肥えており、読みにくい、聞きにくい動画を視聴することに苦痛を感じます。教室は空間が広く、反響してしまうので、ピンマイクがあるだけで音質ははるかによくなります。本当に小さいことですが、大切な部分です。

3 葉一さんが教育に対して考えていること

目の前の子どもたちと真剣に向き合う先生方の後押しを

--今の立場から教育に対して思うこと、考えていることを教えてください。

コロナ禍でより一層「教育は変革期である」と言われていますが、教育現場の変革は本当に大変だと思います。先生方と交流する機会も多くありますが、例えば教育現場は社会の変革からひと世代ふた世代遅れているとよく聞きます。今までは学校に行くことが当たり前とされる世の中でしたが、学校に登校できなくて悩んでいる不登校の子も多くなっています。私の願望としては、学校に通う以外の色々な選択肢も容認される世界になってほしいと思っています。学校に通うスタイルが合っている子はそれでよいですし、合っていない子はオンラインで家から参加する選択肢もあってよいかと思います。そのような制度を整えていくことが大切です。

また、先生方は大変責任の伴う仕事をしているのにもかかわらず、先生の社会的地位が落ちているように感じます。言葉を悪く言えば、落とされているとも感じます。例えば、ニュース等で報道される先生関係のものの多くは不祥事のものです。素敵な取り組みをしている先生も多くいらっしゃるのにそのようなニュースはなかなか取り上げられません。保護者と学校の先生の立場の差があるようなことも増えて、先生の働き難さを助長している親御さんもいらっしゃいます。それは、大変不幸なスパイラルです。自分の身を粉にしてでも目の前の子どもたちのために働きたい先生が多くいらっしゃいます。そのような先生方はおそらく、自分の目標とする教師像があり、それをかなえるために先生の道を選ばれた人だと思っています。その想いをかなえることができる体制をつくることは、それぞれの先生らしさが出る授業が増えることにもつながりますし、子どもにもよい影響を与えます。

学ぶ選択肢を増やすことと先生方の社会的地位の向上は学校外の立場にいるからこそ貢献できることも多くあると思っています。学校の先生をより憧れの職業にすることへ尽力していきたいです。

GIGAスクール構想の動きを効果的に進めるために

--GIGAスクール構想の動きが進んでいますが、何か思うことはありますか?

学習用端末の導入が宝の持ち腐れにならないようにすることが求められると思います。学習を補助するようなよいシステムは多くありますが、先生方が使い方を知らないとその効果を十分に発揮できません。適切な説明書や端末の使用をサポートする体制が求められます。先生の業務を減らそうとして行っていることが、実際には業務を増やしてしまい、先生方の負担になることもあります。行政と学校現場がより連携して進めていくことが大切です。

4 葉一さんの今後の抱負

学校の先生と何かをすることが今年の目標です。学校の先生をYouTubeに巻き込んでいきたいとも思っています。近い将来、先生の普段の授業動画をYouTubeにアップすることが普通という感覚になるとよいと思います。オーストラリアで数学を教える現役の先生で、授業を教室の後ろから撮影しただけの動画をアップしてチャンネル登録者が100万人以上いるチャンネルを持つ人がいます。もちろん、日本でするには個人情報の関係等難しいところはありますが、子どもたちが映らないような画角で撮るなど、工夫すれば不可能ではないと思います。正直なところ子どもたちにとって、画面越しでしかつながれない私の授業を受けるよりもよく見知った先生の授業を受ける方がよいと思っています。学校に通えず悩んでいる子どもにとっても、よく知っている先生や友人が受けている授業を受けることができれば多少劣等感は薄まると考えています。

また、積極的にメディアへ出ることで先生や保護者の方の信頼を得て、YouTubeで授業を受けることに対する抵抗感を無くしたいと考えています。YouTubeが子どもの頃になかった今の親御さんの世代からすると、子どもがYouTubeで勉強することに多少違和感をもつ方もいらっしゃいます。しかし、このチャンネルを通じ、我が子の変わった姿を肌で感じ、かつこのチャンネルがメディアでも取り上げられていると、「わが子がよいと言っていたものがテレビに出ている」と思い、YouTubeの授業動画に対する見方が変わると期待しています。

5 現場の先生に向けて

フィールドは違いますが「子どもたちの為に」というベクトルは同じだと思っております。水と油では無く、化学反応が起きる関係だと思っておりますので、よろしくお願い致します!

6 プロフィール

東京学芸大学を卒業後、営業職、塾講師を経て独立。2012年にYouTubeチャンネル「とある男が授業をしてみた」を開設。小学校3年生から高校3年生対象の授業動画や、学生の悩み相談にこたえる動画を投稿している。チャンネル登録者150万人超え、再生回数は4億回を超える。著書に『塾へ行かなくても成績が超アップ! 自宅学習の強化書』(フォレスト出版)などがある。(2021年8月時点のものです。)

関連情報
◎葉一さんのYouTubeチャンネル
『とある男が授業をしてみた』チャンネルはこちら
◎葉一さんのTwitterアカウントはこちら
◎著書

『合格に導く最強の戦略を身につける! 一生の武器になる勉強法』

『塾へ行かなくても成績が超アップ! 自宅学習の強化書』

7 編集後記

葉一さんはYouTuberとして新たな学習の仕方を確立されているだけでなく、教員の魅力化への貢献など多岐にわたる活動をされています。教育系YouTuberの先駆者として苦労を乗り越えながら新たな活動をされていて、現代は様々な立場の人が学校教育をよりよくするために互いに協力する時代であると改めて感じました。

また、取材を通して葉一さんの話し方や取材者への問いかけからも優しい人柄が感じられました。その点も多くの児童・生徒から多く視聴される秘訣であると思いました。

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 松田珠璃、徳田美妃)

コメント

コメントはまだありません

    より良い実践のためには、あなたの励ましや建設的な対案が欠かせません。
    ログインして、ぜひコメント欄をご活用ください。