地図・地理芸人 小林知之さんに聞く!生徒に地理を面白いと感じてもらえるためのコツ

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目次

1 はじめに

本記事は、2021年7月15日に小林知之さんに行ったインタビューを編集・記事化したものです。小林さんは、芸人として『火災報知器』というコンビ名で活動しながらも、地理や地図の面白さについて広める様々な活動に取り組んでおられます。

2022年に新学習指導要領が施行され、約50年ぶりに高等学校において「地理総合」が必履修化されます。そのなかで地理専門の先生の不足が問題になっています。これまで、地理歴史科のなかでは世界史のみが必履修科目であったため、高校で地理を履修していない先生も多いという現状があり、「地理総合」を歴史の先生が教えることも少なくないと予想されています。

そのため、この記事は高校で地理を履修していなかった先生に地理を身近に感じてもらうための記事となっています。

◎こんな先生におすすめ!

  • 高校で地理を履修していなかった先生
  • 地理の面白さを子どもに伝えたい先生

2 地理を好きになったきっかけ

小学生の頃から地理に興味を持ち始めたのですが、そのきっかけは主に2つあります。

お子様ランチの国旗

まず地理に興味をもったのは小学生のときでした。お子様ランチについている国旗に興味を持ち、国旗図鑑を見ながらすべての国の国旗を自分で作って遊んでいました。

そうやって遊ぶなかで、お子様ランチによくついているアメリカや日本などの国だけではなく、世界には自分の知らないたくさんの国があり、それぞれの国に国旗があることに気づき、地理に興味を持ち始めました。

高校の地理の授業

次に地理に興味を持ったきっかけは、高校の地理の先生がすごく面白い授業をしていたことです。その先生の授業は、教科書をまったく使わない授業でした。地理は暗記科目だと思われがちですが、その先生は自身がこれまでに行ったことのある場所を面白く紹介し、その場所と同じ特徴を持つ別の地域を地図を用いながら説明してくれました。この地理の授業を受けて、自然と自分から地図帳を見て調べるようになりました。

高校の地理歴史科は、地理・世界史・日本史の3つを1つの免許で教えることができるぶん、地理が専門ではない先生が地理を教えることがたびたびあります。しかし、教える側としても自分の専門ではない科目を教える際には、暗記重視の授業になってしまいがちです。

そのため、暗記科目としての地理ではなく、地理を専門とする先生に生きた地理を教えてもらったことも、地理が好きになった大きな要因になっています

3 地理の魅力を広めるために

現在の活動

高校を卒業してからは、大学に通いつつ芸人をやっています。中学・高校の社会科の教員免許を持っていますが、教員として地理の魅力を広めるよりも、第三者の立場から地理の魅力を発信していく方が自分には向いていると思っています。

東京カートグラフィック(地図会社):広報や商品開発・イベントの企画などを担当

番組の構成作家として番組企画

アジアンドキュメンタリー:広報活動やオリジナル番組の制作などを担当

本の出版

NPO法人を立ち上げながら、地域の活性化にむけて観光ガイドのお手伝い
など、一度きりの人生だからやりたいことをやっておきたいという想いで、芸人だけではなく様々な仕事を行っています。

こんなことをやりたい!

観光マップが好きなので、将来は、日本全国の観光マップを取り扱っているカフェを作りたいと思っています。地元にある観光マップにはインターネットでは得られない情報が書かれており、とても魅力的ですが、実際にその地に行った人しか見ることができないため、日の目を見ずに捨てられてしまうのがとても残念だなと長年感じていました。

もし、47都道府県の観光マップが置いてあるカフェがあれば、現地に行かなくても旅行気分を楽しめるだけではなく、実際に現地に行きたくなる人も増えると思っています。

4 地図・地理の魅力

ー目に入るものはすべて地理

地理は、目に入るものすべてだと思っています。地理は自然と人間の両方の側面について学ぶことができるので、地理を勉強していると衣食住が楽しくなります。例えば、うどんでも地域によって作り方は違います。それは小麦がその地で穫れるからなのか、うどんが保存食だったからなのか、それとも塩がとれるからなのかなど、自然や文化の様々な要因が考えられます。

他にも、散歩をしているときに「この道を下ると川があるかもしれない」や「川があるってことは、近くにクリーニング屋さんがあるかもしれない」などと考えながら歩く楽しさもあります。

防災の観点からも、「ここは地盤が緩いんじゃないか」と気がついたり、電車に乗っていても、丸の内線の茗荷谷や四ツ谷のように「谷」が付く部分は地上に出るんだな、と発見があったりします。

このように日常生活のなかで身近にある様々なことが地理に結び付けられるので、地理を学ぶと日々の生活が楽しくなります。そして、地理の魅力は、このように頭の中で謎解きのように考えた空想を、現実に落とし込んでみんなと共有できるところにあると思います。

5 地理に興味を持ってもらうために

ー魅力ある先生

面白い人の特徴は、「考えていることにこだわりがある人」だと思います。自分の芯をしっかり持っている人だと、その人のフィルターを通して自分の考えを貫けると思います。そのような人は、周りから見ると「面白いね」「変わってるね」などと感じてもらえるため、特別面白いことを言っていなくても、考え方が面白いと思ってもらえます。

先生自身が面白くて魅力的だと、その先生から発せられることは生徒にとっても「面白い」と感じるものだと思います。教科書通りではないオリジナルの授業であれば、その先生の考え方がそのまま授業に反映されるので、その先生自身が面白いと授業も自然と面白くなると思います。

ー潜在的にみんな地理好き

気づいていないだけで、みんな地理が好きだと思います。「地理」という言葉が学生にとって難しいイメージがあるから拒否反応がでるだけで、例えば、『アド街ック天国』や『世界ふしぎ発見!』、『ブラタモリ』など、テレビ番組も地理で溢れています。

そのため、「気づいていなかっただけで様々なところに地理が溢れている!」ということに気づいてもらうのが大事だと思っています。

簡単なゲームで地理に興味を持ってもらう

食べ物全国制覇ゲーム

47都道府県の食べ物を誰が一番早く制覇できるか競うゲームです。スーパーで買った食べ物のパッケージについている産地のシールを白地図に貼ったりファイリングしたりすると、「自分が日本のいろんな地域で生産されたものを食べている」や「この地域の食べ物ばかり食べている」などの様々な発見があると思います。

漢字集めゲーム

駅や地名の写真を撮り、より多くの漢字を集めた人が勝ちです。「谷」や「山」など、「山」に関する漢字を集めたらポイントがアップするようなルールを加えてもよいかもしれません。

地理の授業で地図を扱う

授業以外でも地図を使ってもらわないと学生は地理を好きにならないと思います。

そのため、地理の授業の中でスーパー地形などの手軽で身近なアプリを利用し、学生が「学校外でもアプリを使ってみようかな」などの気持ちになると地理を好きになる学生は増えると思います。

このようにアプリだけでなくても、ディズニーランドの地図やゲームのマップなども十分に地図として授業のなかで使用できます

例えば、ディズニーランドには、真ん中にシンデレラ城があり、その周りが水で囲まれているのはお堀に見えます。このようにディズニーランドを「城下町」のように見ると、ビッグサンダーマウンテンという山が遠くにあったり、山と城の間にはお土産屋さんを開く商人がいたりします。このような特徴は、「皇居の周りはお堀になっているんだ」や「城と山の間には商業が栄えるんだ」という気づきにもなります。

そのため、学生の身近なところで興味を持てる地図を利用することも大切だと思います。

6 プロフィール

小林知之(こばやしともゆき)

子供のころから国旗が大好きで地理に興味を持ち、日本大学文理学部地理学科に進み、高校社会の教育免許を取得するも、お笑いの道へ。現在は太田プロダクションに所属しながら、ライブ、コラム、構成作家など多方面で活動。好きな地図地理を活かし、国土地理院などでも子供向けのイベントを開催。地図地理芸人として、地図関連の仕事も多数おこなっている。

(2021年7月24日時点のものです。)

関連情報

◎小林知之さんのTwitterはこちら

◎東京カートグラフィックについてはこちら

◎お笑いコンビ『火災報知器』についてはこちら

◎アジアンドキュメンタリーズについてはこちら

◎小林知之さんの書籍についてはこちら

7 編集後記

地理は、日常生活の様々な場面から学ぶことができる教科だということを再認識しました。私自身も、小林さんのように様々な形で地理の楽しさや重要性を広めていきたいと思いました。

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 辻・安藝)

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