中学歴史〜倭寇と勘合貿易〜(自主学習用教材「こころの窓」第17回)

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目次

1 はじめに

本記事は、東近江市の元中学校校長で現在は小学校講師を務める雁瀬徳彦さんが作成した「こころの窓」の内容を引用・加筆させていただいたものです。「こころの窓」は中学生向けの日本史教材で、不登校の生徒や、学校に登校できても教室に居られず別室で過ごす生徒が一人で勉強できるように作られています。雁瀬さんの取り組みに関しては、こちらの記事もご参照ください。

本記事では、第17回「倭寇と勘合貿易」の内容について紹介しています(教材の本文は編集せずに掲載しております)。ほかの単元の記事をご覧になりたい方はこちら

2 「こころの窓」について

教材の一枚目を見ていただくと分かりますが、教材の文章を読むと歴史の流れがよく分かります。現在使用されている学校の教科書は写真も多くとても見やすいように思いますが、初めて歴史を学ぶ子どもたちにとって、とても難しい写真や資料です。また、教科書の文章には事実が羅列されているだけなので、歴史の事象がドラマティックであることや、当時の武将がどんな思いで戦いや政治を行っていたかという感動が伝わってきません。だから、不登校の子どもたちが学校の教科書だけを使って一人で勉強しようと思ってもなかなか続かないのです。

そこで、子どもたちが一人で楽しく歴史の勉強ができるようにプリントを作成しました。また、次のページには復習問題があります。ほかの教材だと、「794年に何がありましたか」という語句を答えさせる問題が主流です。このプリントには語句を答えさせる問題ではなく、「なぜ、都を奈良から京都に移したのですか」という問題が載っており、起こった事実に対して、その原因や結果について子どもたちに考えさせる問いになっています。

解説編

こんにちは。元気にしてましたか。

では、今日もはじめていきましょう!

今日のお題は「倭寇(わこう)と勘合貿易(かんごうぼうえき)」です。

3代将軍足利義満(よしみつ)は、南北朝が対立して争っている間に、幕府のお金がなくなってきましたので、明(みん・・・中国の元に変わってできた国です)との貿易を通してお金儲けをしようと考えました。しかし、その当時、日本と中国や朝鮮との間の海で、倭寇(わこう)と呼ばれた海賊が暴れていたのです(下の絵)。倭寇は日本人だけではなく、中国人や朝鮮人もいたそうですが、明の国王は、「私の国と貿易がしたいのなら、まずこの倭寇を取り締まってください」といってきたのです。そこで、義満は倭寇を取り締まることを約束して貿易を始めました。

しかし、取り締まるといってもいつもいつも倭寇の船を追いかけてばかりいられませんので、日本の船と明の船が貿易をする時に、倭寇でないことを確かめるために、勘合符(かんごうふ)という合い札を使ったのです。下の図がそれです。一枚の札を半分に分けて、お互いが持っているのです。そして、貿易をする時にこの合い札を見せ合って、正式な貿易船であることを確認してから貿易をしたのです。新しいアイデアですね。この合い札を勘合符(かんごうふ)と呼んだので、この貿易を勘合貿易(かんごうぼうえき)ともいったのです。こうして、義満は、この貿易でたくさんのお金儲けをしたので、室町幕府の力は揺るぎないものとなっていったのです。義満さんはすごい将軍ですネ。

それからもう一つ有名なお話ですが、一休(いっきゅう)さんを知ってますか。この一休さんのお話に出てくる将軍様というのが、足利義満さんのことなんですよ。将軍様と一休さんがよくトンチ合戦をしていましたね。いじわるな将軍様が、「屏風(びょうぶ)の中の虎(とら)が毎日いたずらをするので、捕まえてほしい」と頼むと、一休さんは「分かりました。では、今すぐ捕まえるので、屏風の中から虎を出してください」と言うと、将軍様は、何も言い返せなかったというお話です。一休さんも実在したお坊さんですが、義満さんとトンチ合戦をしたというのは、本当のお話かわかりません。

今日の歴史はどうでしたか。

では、いつもの復習問題にチャレンジしてください!

復習問題

1.倭寇とは何ですか。あなたの言葉で説明してください。

日本と中国や朝鮮の間の海で、暴れ回っていた海賊のことです。倭寇は日本の海賊という意味ですが、実際には中国人や朝鮮人もたくさんいました。

2.義満は、何のために日明貿易(勘合貿易)をはじめたのだと思いますか。貿易の目的をまとめてください。

長い間の南北朝の戦いで、たくさんのお金を使っていたので、室町幕府にはお金がありませんでした。そこで、義満は、お金儲けをするために日明貿易(勘合貿易)をはじめたのです。

3.貿易をする時に、なぜ勘合という札を使ったのですか。勘合符のしくみと、札を使った理由をまとめてください。

日明貿易(勘合貿易)を、倭寇が邪魔をしたので、日本や明の正式な貿易船と倭寇の海賊船を区別するために、勘合符という合い札を使ったのです。勘合符は、四つの漢字が半分に割ってあって、二つの合い札を合わせて一致すると、倭寇でないことが証明できるようになっていたのです。

3 ダウンロードはこちらから

こころの窓 第17回「倭寇と勘合貿易」

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4 おわりに

不登校の子どもたちにとって一番大切なことは、何が何でも学校に登校させることではなく、家であろうが別室であろうが自立の力をつけてあげることだと考えます。誰かに言われて取り組む学習を重ねるのではなく、自分で考えて自分で学習できる力をつけることが大切です。その上で、学力をつけていくことが「生きる力」につながっていくと思います。

この「こころの窓」は、一人で勉強するために作ったプリントです。閉ざした『こころの窓』を開けて、社会に出て行くための勉強をがんばってほしいと考えてこの題名をつけました。

不登校に悩む子ども達の力になることを祈っております。

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