1 はじめに
本記事は、東近江市の元中学校校長で現在は小学校講師を務める雁瀬徳彦さんが作成した「こころの窓」の内容を引用・加筆させていただいたものです。「こころの窓」は中学生向けの地理教材で、不登校の生徒や、学校に登校できても教室に居られず別室で過ごす生徒が一人で勉強できるように作られています。雁瀬さんの取り組みに関しては、こちらの記事もご参照ください。
本記事では、第22回「アメリカ合衆国の農業」の内容について紹介しています(教材の本文は編集せずに掲載しております)。ほかの単元の記事をご覧になりたい方はこちら。
2 「こころの窓」について
教材の一枚目を見ていただくと分かりますが、教材の文章を読むと歴史の流れがよく分かります。現在使用されている学校の教科書は写真も多くとても見やすいように思いますが、初めて歴史を学ぶ子どもたちにとって、とても難しい写真や資料です。また、教科書の文章には事実が羅列されているだけなので、歴史の事象がドラマティックであることや、当時の武将がどんな思いで戦いや政治を行っていたかという感動が伝わってきません。だから、不登校の子どもたちが学校の教科書だけを使って一人で勉強しようと思ってもなかなか続かないのです。
そこで、子どもたちが一人で楽しく歴史の勉強ができるようにプリントを作成しました。また、次のページには復習問題があります。ほかの教材だと、「794年に何がありましたか」という語句を答えさせる問題が主流です。このプリントには語句を答えさせる問題ではなく、「なぜ、都を奈良から京都に移したのですか」という問題が載っており、起こった事実に対して、その原因や結果について子どもたちに考えさせる問いになっています。
解説編
こんにちは。今日もこころの窓を開けてくれてありがとう。
では一緒に勉強をはじめましょう。
今日のお題は「アメリカ合衆国の農業」です。
アメリカ合衆国は、適地適作(てきちてきさく)で農業が行われています。たとえば、ロッキー山脈のふもとでは牛を放牧し、気温の低い五大湖付近では酪農を行い、気温の高い南部では綿花の栽培をするというように、その地域の気温や降水量や自然条件に適した農業が行われているのです。こうすることで、作物を効果的に栽培しているのです。
では、下の地図を見てください。緑色で表したグレートプレーンズといわれる大きな平原が広がっているのが分かりますか。ここではセンターピボットという方法で小麦やトウモロコシが栽培されています。右下の絵を見ると分かりますが、センターピボットとは、400mもある長いホースで地下水をくみ上げて、コンパスの円を描くように回転しながら水をまく機械です。すごい機械でしょう。これなら雨がほとんど降らないところでも作物を作ることができますね。でも、そうとうたくさんの地下水が流れていなくてはできない方法ですね。
話しをもどしますが、このグレートプレーンズの東側(右側ですね)には、プレーリーといわれる大きな草原があります。ここではおもに小麦を栽培しています。
アメリカ合衆国は、とにかく土地が広いのですが、働く労働者が少ないので、大きな機械が使われているのです。たとえば、種や肥料をまく時は小型飛行機が使われているのです。また、トラクターや収穫機械も、びっくりするくらい大きな機械を使っているのですよ。
また、牛を放牧している農地の近くには大きな食肉工場があり、飼育された牛をすぐに加工し、大都市や海外に出荷できるようになっているのです。このように農家と企業(工場を経営する会社)が協力して行われている農業を、企業的な農業といいます。日本のような個人的な農業とだいぶ違いますね。大企業と農家が手を組んで、大規模な経営をしているのがアメリカの農業の特色です。だから、肉や小麦やトウモロコシなどが、とても安く出荷することができるのですヨ。
お疲れ様でした。では、復習問題に進んでください。
復習問題
1.アメリカの適地適作農業について、具体的な例を上げて説明してください。
ロッキー山脈のふもとでは牛を放牧し、気温の低い五大湖付近では酪農を行い気温の高い南部では綿花の栽培をするというように、その地域の気温や降水量や自然条件に適した農業が行われています。これを適地適作農業といいます。
2.グレートプレーンズと、そこで行われている農業についてまとめてください。
アメリカの中央部にグレートプレーンズといわれる大きな平原が広がっています。ここではセンターピボットという方法で小麦やトウモロコシが栽培されています。センターピボットとは、400mもある長いホースで地下水をくみ上げて、コンパスの円を描くように回転しながら水をまく機械です。このように、雨が少ないところでも作物が栽培できるように工夫されているのです。
3.企業的な農業とはどんな農業ですか。
たとえば、牛を放牧している農地の近くには大きな食肉工場があり、飼育された牛をすぐに加工し、大都市や海外に出荷できるようになっているのです。このように農家と企業が協力して行われている農業を、企業的な農業といいます。日本のような個人的な農業ではなく、大企業と農家が手を組んで、大規模な経営をしているのがアメリカの農業の特色です。そのために、肉や小麦やトウモロコシなどが、とても安く出荷することができるのです。
3 ダウンロードはこちらから
こころの窓 第22回「アメリカ合衆国の農業」
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4 おわりに
不登校の子どもたちにとって一番大切なことは、何が何でも学校に登校させることではなく、家であろうが別室であろうが自立の力をつけてあげることだと考えます。誰かに言われて取り組む学習を重ねるのではなく、自分で考えて自分で学習できる力をつけることが大切です。その上で、学力をつけていくことが「生きる力」につながっていくと思います。
この「こころの窓」は、一人で勉強するために作ったプリントです。閉ざした『こころの窓』を開けて、社会に出て行くための勉強をがんばってほしいと考えてこの題名をつけました。
不登校に悩む子ども達の力になることを祈っております。
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