今村久美さんインタビュー【関西教育フォーラム2021 今こそ、教育格差を語ろう。】

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作成者:miku kiyokawa (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

本記事は、2021年11月21日にYouTube Liveで配信したNPO法人ROJE主催の関西教育フォーラム2021「今こそ、教育格差を語ろう。− “誰ひとり取り残さない”を目指す、with ICT 時代の教育とは −」後に行われた、認定NPO法人カタリバ代表の今村久美さんへのインタビューを記事化したものです。

本取材では、主に教育格差是正に向けたNPOカタリバの取り組み(保護者支援や学校・地域との連携)について今村久美さんにお話を聞きました。

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2 教育格差について

「格差」という言葉への違和感

「格差」という言葉が「どちらかが正しくて、どちらかが正しくない」というニュアンスを含んでいるのではないかと感じています。つまり、「教育格差」という言葉が「『よい教育』の形があり、その教育の形に当てはまっていない子どもたちをどのようにしますか」という発想になっているのではないかと思います。

「よい教育」を受けてきたと思っている人のなかには、「よい教育」の形が固定観念としてあると感じています。保護者にも保護者の悩みがあって、保護者なりに悩みながら子どもを育てていると思うので、その教育が正しいか正しくないかは子どもが大人になってから分かってくると思うのです。

たとえば、教育の中心に勉強を置いているご家庭もあれば、遊びをより重視しているご家庭もあり、教育において何を重視するかは様々だと思います。世の中には「正しい教育」のあり方があるという前提のもとで「教育格差がある」と主張することには違和感を覚えます。

3 学校や地域との連携

また、NPOカタリバの活動の一環で、経済面での困難をお抱えのひとり親世帯への支援活動もしています。募集の段階で、メディアやSNSだけでは届きにくい方たちには行政や学校から紹介していただいたり、各々のケースに応じてオンライン学習の場や物資の支援、地域の支援団体に接続したり専門家に相談できるような仕組みを整えつつあります。学校や自治体との連携は、今後ますます進めていく必要性を感じています。

しかし、子どもがオンラインの学習に意欲的ではあるものの、保護者が前向きではない等家庭によって抱える課題や事情は違うため、様々なセグメントの方々に対してやらねばならないことはまだまだあると考えています。

4 学校教員ができること

自分と異なる境遇を持つ人びとへの想像力

自分の人生は1回きりで、自分の経験は限られたものであるので、(教育格差を経験したことがない人が教育格差を)想像できないのは大前提にすべきだと思います。しかし、そうだからといって「自分が経験していないから支援をする権利はない」ということは決してないと思うんですよね。

どちらかというと、自分の経験等を正しいと思うことよりも、教員は「これからどんな社会ができるんだろう」「この子の現在地は今どこにあるんだろう」「この子にとっての一歩先はどんな機会なんだろう」と考えるべきです。ただ自由にすればよいとかではなく、「この子にとって、この子の最大限を伸ばすにはどうすればよいんだろう」ということを考えるのが大切だと思います。

教員は学校の授業だけではなく、様々な社会から集めてきたリソースや色々な機会を駆使しながら、今目の前の子どもにできることをみんなで考え、一生懸命やっていくということが全てかなと思います。

学校教員が心がけること

教育格差の是正のために何ができるかではなく、どんな子どもたちにも必要な個別最適化された教育を追究することが大切であるということを念頭に置くべきだと考えています。教育に金銭をつぎ込むことが正しい教育のあり方とは言えない一方、教育に費やした金銭の額が学力に正比例しているというデータが散見されますし、学力が高いことがよいことなのかは、子どもが大人になってみないと分からないと思います。

また、教育に多額の金銭を費やしても、教育の結果には子ども本人の能力や興味関心もある程度影響しますし、学力面でよい成績を収めることのできる子どもが人間的に豊かな人物であるかどうかを測ることはできないと思います。限られた時間のなかで子どもを幸福な将来へと導くにはどうしたらよいかを考えるのが重要ではないかと考えます。

5 プロフィール

今村久美さん

認定NPO法人カタリバ代表理事、公益社団法人ハタチ基金代表理事

慶應義塾大学卒。2001年にNPOカタリバを設立し、高校生のためのキャリア学習プログラム「カタリ場」を開始。2011年の東日本大震災以降は子どもたちに学びの場と居場所を提供、2020年には、経済的事情を抱える家庭にPCとWi-Fiを無償貸与し学習支援を行う「キッカケプログラム」を開始するなど、社会の変化に応じてさまざまな教育活動に取り組む。ハタチ基金代表理事。地域・教育魅力化プラットフォーム理事。文部科学省中央教育審議会委員。経済産業省産業構造審議会臨時委員。
(2021年10月時点のものです。)

NPOカタリバについて

どんな環境に生まれ育っても、未来を自らつくりだす意欲と創造性を育める社会を目指し、2001年から活動する教育NPOです。高校への出張授業プログラムから始まり、2011年の東日本大震災以降は子どもたちに学びの場と居場所を提供、2020年からは経済的事情を抱える家庭にオンライン学習支援を行うなど、社会の変化に応じてさまざまな教育活動に取り組んでいます。

*NPOカタリバの詳細はこちら

6 編集後記

「教育格差」という言葉が「どちらかが正しくて、どちらかが正しくない」というニュアンスを含んでいるのではないかという指摘が大変印象に残りました。「教育格差」を大して経験していない人で教育を享受できたと考えてしまう人ほど、いわゆる「エリート」の発想や立場で思考し、彼らの考える「よい教育の形」の固定観念に縛られてしまう可能性が高いと考えました。
 
 インタビューの際も、子ども一人ひとりに合った教育(個別最適化された教育)を行うことが重要だとおっしゃっていましたが、「どのような教育がよい教育なのか」ということを常に自分自身が受けてきた教育経験を相対化しながら考えていくことが大切なのではないかと思いました。

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 清川、金田)

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