指導者 早川博雄
1 はじめに
この実践では、自分が戦国武将になったつもりで「兜」や「旗指物」を創りました。「名をあげたい!」という気持ちを奮い立たせながら作品を作ることで、自分らしさ、自分を表現させます。
北条小の他の実践はこちらからどうぞ⇒ https://edupedia.jp/keywords/show/787
2 ねらい
(1)戦国武将になって、「兜」や「旗指物」に“戦”への思いを身近な材料や用具の特徴を生かし、工夫し表現させる!
社会科の歴史学習の中で「戦国時代」は子どもたちを惹きつけてやまない。それは、誰にでも天下をとる機会があり、一人一人の武将の姿が今を生きる子どもに魅力的だからである。また、戦の際に身につける「兜」や「旗指物」はユニークな形や奇抜なデザインのものが多く、「名をあげたい」と考える武将の思いがよく表されており、子どもたちはこれにも興味・関心を持った。
そこで、子どもたちが戦国の武将になりきって、戦に向かう思いを込めた自分だけの兜や旗指物をつくるという授業は面白いのではないかと考えた。社会科の学習をもとに形や色に込められた願いや美意識を思い、図画工作の本質を生かしながら兜の形や色に意味を持たせることにより「自分だけの」兜を制作する。
六学年の前期に「くねくねアート」で針金を材料にペンチの使い方を学び、さらに表現の方法を広げた。この時期に、このような題材を設定することで自分の創りたいものを使いたい材料からの選択・発見から始まり、材質や表現に適した用具をフルに活用することでその子らしさが見られる表現をさせたいと考える。
(2)子どもの主体性を尊重し、「試行錯誤の繰り返し」と「見合い教え合い」から自分らしさを表現する作品づくりに取り組ませる!
子どもたちが「○○のような兜や旗指物を創ってみたい」という一人一人の思いを大切にし、主体的に取り組むようにするために、まず鑑賞から学習をスタートさせる。特に、インパクトのある変わり兜や旗指物(兜:加藤清正の「長烏帽子形兜」、上杉謙信の「銀箔押張懸兎耳形兜」…他)(旗:武田信玄や上杉謙信…他)を電子黒板に映し出し、形や色には「戦勝の祈願」「縁起担ぎ」「信仰の表れ」「自然崇拝」など、誰よりも目立ち名を上げたいという戦国武将の願いや美意識が込められていることを感じ取らせる。そして、この鑑賞が自己の創作活動の手がかりとなり、イメージをもつことになる。
この学習では、兜や旗指物の工作キットなどは一切用いない。「これは○○に使えそうだ」「あれも○○に合いそうだ」と自分を取り巻く環境と関わりを持たせ、その中から必要とする材料を見出させる。そうすることで日常生活の中でイメージがどんどん広がり、材料や用具への積極的な関わりが生じてくる。また、制作にあたって、友だちと作品を見合って考える→制作しながら考える(やり直す)→制作を終えて考える。このようなサイクルで常に材料や友だちと関わり、過去の武将たちの武具とのつながりを考える。子どもたちは探究心を持ち、発想をし、拡散させ、さまざまな試行錯誤を繰り返し、さらに友だちと見合い教え合う。自分らしさへのこだわりとなり、表現の質を高めていくことになる。
図画工作科の教科の特徴として、作品を通じて話さなくても視覚を通して、ここにいる人だけでなく時間や空間を越えて分かり合えるよさがあると考える。
加藤清正の「長烏帽子形兜」
引用 http://www.hina.co.jp/5gogatuningyou/53148syousai.html
上杉謙信の「銀箔押張懸兎耳形兜)
引用 http://blogs.yahoo.co.jp/ar234bjp/folder/1783671.html
3 題材の評価
【造形への関心・意欲・態度】
- 兜や旗指物を材料とかかわりながら、楽しんで創ることができる。
【発想・構想】
- 材料の形や色・材質を生かすように工夫して創る過程を楽しむことができる。
【創造的な技能】
- 自分の思いを兜や旗指物に材料の特徴を生かし、用具を使って創ることができる。
【鑑賞の能力】
- 「兜」や「旗指物」を鑑賞し、形や色の美しさを味わうとともに、戦国武将の願いや考え方が表現されていることがわかる。
- 互いに作品に対する思いを知り合う中で、一人一人の表現の仕方やよさを見つけ、学び合うことができる。
4 題材全体プラン(10時間扱い)
5 本時の指導(9/10)
(1)本時のねらい
- 友だちと見合い、材料の組み合わせや用具の使い方などをアドバイスし合いながら意欲的に制作することができる。
- 材料の特徴や道具をうまく使って、自分の思いを形や色を工夫して表現することができる。
(2)展開
1.本時の学習のめあてを確認する。
戦国武将になって、“戦”への思いを「兜」や「旗指物」に材料の特徴や道具をうまく使って表現しよう。
2.制作途中の段階の作品を見合う。
~予想される児童の反応~
- 「ハンガーを工夫して立物ができている。」
- 「兜の色がとてもきれい」
- 「ペットボトルでつくった角が格好いい。」
~支援及び留意点~
- より良い作品にしていくために、友達のよいところを見つけさせ、手がかりとさせる。
- 兜の古色など、子どもたちが制作するにあたって選択する材料の色や質感は異なるけれど、本物づくりでなく今感じていることを表現させる。
3.制作を始める。
~児童の活動~
- いろいろな材料や色などを試し、イメージを膨らませる。
<材料>各自で用意したもの、トレイ、ペットボトル、缶、ハンガー、カップラーメン、ざる、アルミホイル、ホース、段ボール、箱、バケツ…など
<道具>ペンチ、接着剤、キリ、段ボールカッター、糸のこぎり、金づち…など
~支援及び留意点~
- 子どものイメージは制作過程の中で試行錯誤し、少しずつ広がり定まっていくので、「ほめる」「認める」の姿勢で制作を支えていく。
- 接着に関しては、さまざまな材料を用いたり接着部分が曲面だったりすることから問題にぶつかる子が出てくることが予想される。そこでプッシュボンドなどを準備したり、相談に乗ったりして子どものイメージや制作意欲を失わせないようにする。
- 安心安全に用具が使えるように、その都度指導する。
4.作品が完成した者は、学習の振り返りをする。
~予想される児童の反応~
- 「金色の飾りがきれいにでき、よく目立つ」
- 「鍬形のように強そうだ」
- 「富士山で日本一を表した」
- 「友だちに手伝ってもらって、うまくつけることができた」
~留意点及び評価~
- よかったことや次に頑張りたいことなど今日の学習を振り返る。
- 友だちと見合い、材料の組み合わせや用具の使い方などアドバイスし合いながら意欲的に制作することができたか。(活動の様子、振り返り)
- 材料の特徴や道具をうまく使って、自分の思いを形や色を工夫して表現することができたか。(作品、活動の様子)
5.次時の学習内容を知る。
- 北条コレクション2011を開き作品を鑑賞し合う。
6 編集後記
児童に自由に材料を選ばせて作らせることにより、枠にとらわれることなく自分を表現することができるのだと思う。また、作品の鑑賞を通し、今まで知らなかった友だちの一面を感じることができるので、すごく面白いと思った。
(編集・文責 EDUPEDIA編集部 宮崎雅人)
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