【小1道徳】「あめが あがって……」~感性を豊かに育む授業を目指して~

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目次

1 はじめに 感動、畏敬の念」の授業のポイント・注意点

本教材「あめが あがって……」は、小学校学習指導要領解説「特別の教科 道徳(平成29年7月)」の内容項目D「感動、畏敬の念」に該当する教材です。

「畏敬」とは、「崇高なものや偉大な人を、おそれうやまうこと」です。

「畏敬」という言葉の難しさからも、感動、畏敬の念」の内容項目は難易度が高いと感じる先生方も多いのではないでしょうか。

また、「感動、畏敬の念」の授業は「子どもたちに何を学ばせるのか?」「子どもたちに何を残すのか?」というねらいを明確にできず、フワフワとした授業になりがちです。

授業のねらいを明確にして授業を構想・実践することがポイントになってきます。

ところで先生方は最近、自然のものでも人工のものでも感動したことはありますか?

私は福井県の東尋坊に、強い感動を覚えました。

自然の力によってできた断崖絶壁。断層に並ぶ不思議な模様。

「世の中にこんな景色があるのか……」と自然の偉大さに敬服しました。

「感動、畏敬の念」の授業を実践するにあたって、先生方の感動する心・感性もポイントです。

感動した経験がない(少ない)先生にとっては、授業をするのが難しい内容項目になるからです。

ちなみに私が授業者であれば、「感動、畏敬の念」の授業の終末には、この東尋坊の写真を使った説話を計画します。(プライベートの旅行が授業アイディアにつながることがあります。特に資料や写真は積極的に収集しておきましょう。)

学習指導要領に掲載されている「感動、畏敬の念」の指導の要点は4点。

  1. 「美しいものや清らかなものに素直に感動する心」を育むこと
  2. 児童が美しいものに触れて感動した思いを先生方が大切にすること
  3. 児童の感動を広める働きかけをすること
  4. 感性を豊かに育むこと

学習指導要領にある指導の要点を押さえて授業を構想すると、授業のねらいを大きく外さなくなります。

授業づくりに困ったら学習指導要領という原点に立ち返ってみてください。

2  教材、あらすじ、授業のねらいについて

  • 小学校1学年 道徳科 主題名 「うつくしい もの」
  • 教科書 東京書籍 『新しい道徳』「あめが あがって……」
  • 内容項目 D-(19)感動、畏敬の念

あらすじ

東京書籍の「あめが あがって……」には、授業のねらいに関係する7枚の写真が掲載されている。最後の写真は大きな虹の写真であり、虹から感じられる美しさについて話し合う教材となっている。

ねらい

美しいものや清らかなものに感動する心情を育てる。

3 授業の工夫

「虹」を見た経験や美しいものに触れた経験の差が大きいと予想されます。

経験の差に配慮しながらも、効果的な指導方法を考える必要があります。

虹を見た経験に配慮したら……

「あめが あがって……」の授業は、「虹から見える美しさ」を中心に話し合うのが基本的な流れです。

ところで、先生方は最近、「虹」を見たのはいつですか?

ふと思い返してみると、かなり昔に見た方がほとんどではないでしょうか。

条件がそろわなければできない虹は毎日見られるものではなく、貴重な自然の産物です(加えて、虹はすぐに消えてしまいます)。

だからこそ、虹に対して「感動、畏敬の念」が湧くのです。

大人が「ああ……、きれいな虹だな……」と言いながら、虹を写真などに残すのは、「自然の産物である虹の貴重さ・美しさ」を理解しているからです。

しかし、1年生の児童はどうでしょうか?

1年生は6~7歳です。

「たった6~7年しか生きていない1年生が、実際に虹を見た経験は少ないのではないか?」

ねらいに迫る、深い話し合いを目指した道徳の授業づくりには、上記のようなふと浮かんだ疑問が授業を工夫するヒントになります。

「児童は実際に虹を見た経験が少ないのではないか?」

この疑問から考えられる授業の工夫は、

  • 虹の動画を見せる
  • 虹のでき方に触れる
  • 虹以外のものから考えさせる
  • (学級開きから)虹を見られるチャンスにアンテナを張っておく
  • 虹以外のものをクラスのみんなで「きれいだね~」と見ておく

できれば、実物の虹を見せて考えさせたいところですが、こればかりは難しいです。

虹とは違う他のもので、「感動、畏敬の念」について考える授業展開も選択肢として用意しておきましょう。

「美しいと思う感性を共有する授業」として考えると、授業のアイディアがさらに膨らんでいきます。

美しいと思う感性に共感し、共有する授業

1年生が「美しい」「きれい」と感じる身近なものは何でしょうか?

  • 紅葉
  • 夜景
  • イルミネーション
  • クリスマスツリー など

自然物と人工物が混在していますが、まずは「美しいと思う感性・心」に共感しましょう。

学習指導要領では、「自然のもの、人工のものと区別するのではなく、美しいもの、清らかなもの、気高いものに接したときの素直な感動を大切にすることが求められる。」とあります。

T「美しいな、きれいだなと思ったものはありますか?」

C「春に咲いた桜がきれいだなと思いました。」

T「桜、きれいだよね」

桜の美しさに共感する対話をしましょう。

そして、

T「みんなはどうかな?」(美しさの価値を共有する発問)

T「桜はなぜきれいに咲くのだろう?」(桜の美しさの理由を考える発問)

T「桜のようにきれい、美しいと感じたものは他にありますか?」(他の視点を考える発問)

などの発問で、桜の美しさを共有したり、他の美しさに広げたりした授業を展開すると、美しいと思う感性に共感し、共有する授業になっていきます。

もしかすると、「それは美しくない」「きれいじゃない。気持ちが悪い」という意見が出てくるかもしれません。

マイナスな意見も道徳の授業ではとても価値があります。

「Aさんは桜をきれいではないと言うけれど、Aさんは何がきれいだと思いますか?」と、Aさん自身の感性を引き出す発問を意識して、Aさんにある「感動、畏敬の念」という道徳的価値を引き出してあげましょう。

そして、Aさんの感性をクラスのみんなで共感的に受け入れ、共有する授業にしていけると、「感動、畏敬の念」を多面的・多角的に児童が考えるようになります

執筆者プロフィール

マー

小学校教員を15年務めた後、フリーのWEBライターに転身。教員時代は安全主任、体育主任、生徒指導主任、学年主任を担当。現在は「物事のよさをより多くの人に」をモットーに教育系記事、金融系記事を主に執筆。趣味は野球観戦とランニングで、野球やマラソン・駅伝を応援するブログを運営している。

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