前編では、和歌山県の田辺市立図書館で行われた「読書しない読書会」の活動や、参加者の感想について詳しくまとめています。こちらもあわせてご覧ください。

2026年2月8日、和歌山県の田辺市立図書館でpokke株式会社代表の三田剛広さんと、和歌山県教育庁の松本能さんが中心となり、「読書を楽しむ習慣づくり事業」の一環として「読書しない読書会」が開催されました。
この記事では、お二人が学校に「読書しない読書会」を取り入れてほしい理由についてまとめています。過渡期を迎える学校現場において、「読書しない読書会」が果たすべき役割は一体どこにあるのでしょうか。
プロフィール

三田剛広(Mita Yoshihiro)
pokke株式会社代表。2015年に「読書しない読書会」を立ち上げ、現在も都内を中心に月に一度のペースで開催中。「Peatix コミュニティアワード2025」にて「ユニークコミュニティ賞」受賞。大学や教育機関での開催実績もあり、幅広い世代との対話を通じて、学びと感性を磨く場を提供している。(2026年3月時点)

松本能(Matsumoto Chikara)
和歌山県教育庁紀南教育事務所社会教育課。社会教育主事兼指導主事。元中学校教諭。「読書を楽しむ習慣作り事業」の事業目的である、「普段本を手にしない人が読書をするきっかけづくり」に着目し、2024年度から和歌山県内で「読書しない読書会」を過去5回開催。社会教育の視点から地域コミュニティを豊かにする活動を行っている。(2026年3月時点)
なぜ、学校でやってほしいのか?
「読書しない読書会」の強みはどの部分ですか。教員目線で考えられるメリットがあればお聞きしたいです。
私はもともと中学校の社会科の教員でしたが、社会教育をやり始めてからは、図書室の利用を促す時間を取れないのがもったいないと感じていました。子どもたちに図書室を有効に使ってもらうためにも、「読書しない読書会」は最高のツールだと思っています。

三田さんはどうお考えですか。
私は教員ではないので現場の実情を詳しくは知りませんが、「本を選ぶ」という行為は、学校教育ではあまり教わらないことだと感じています。本を読むことは教わっても、本を選ぶことは教わらない。だからこそ、「本を選ぶ」ことを軸に、この会を続けています。本を読んで「これはこういうものだ」と理解することも大切ですが、「自分はこう思った」「自分はこの本を読みたい」といった一人ひとりの感覚や考えを大切にすることも、同じくらい重要ではないかと考えています。いつの日か、国語の授業の1コマに取り入れてもらえることを目標にしています。
やはり受験や生徒指導で、そこまで手が回らない学校も多いです。ただ、「読書しない読書会」は国語の授業以外にもやれるので、学校に入り込む余地は十分あると思っています。
自己を確立し、夢中になれる活動
ITやAIを活用していく時代に、子どもたちが「読書しない読書会」をやる意義はどこにあるとお考えですか。
まず、この先は能動的でない限り、AIを使うこともできずに使われてしまう恐れがあると思っています。その上で、自分で選び、なぜ選んだのかを言語化し、人に伝えることができれば、それは自分を確立することにつながります。AIが言ったことを鵜呑みにするのではなく、自分がやりたいことに対してAIを使えるようになるのは大きな変化です。

以前、県立高校で行われた「読書しない読書会」についてお聞きします。ここでは、どのような感想があがりましたか。
「自分の新しい興味関心を発見できた」「読書量を増やしていきたいと思った」というような、能動的な行動につながる感想がたくさん出ています。「図書室に行きましょう」と言われても、それを本当に行動に移す子どもはごくわずかです。どれほど良い指導をしても「夢中より強いものはない」と思うので、感想からそれが伝わってきたのは嬉しかったです。
新たに開発された「運営キット」
今回から取り入れた「運営キット」についてお聞きします。「ほんねカード」や「ゲームのしおり」を作った動機や、お二人のなかで工夫されたことはありますか。
以前の「読書しない読書会」で、松本さんがファシリテーターをやることに不安を感じていて、それを解消したいというのがきっかけでした。「ほんねカード」には小学校高学年をイメージした質問が書かれており、現場の先生が使いやすいように工夫をしています。

元教員の実感として、「運営キット」の存在についてどう思われますか。
かなり大きいと思います。授業には指導案があるように、「ゲームのしおり」も重要な指針になりますから。「ほんねカード」についてはまだ改善の余地がありますが、子どもたちの興味関心を確実に引き出してくれるツールです。
正直、「ほんねカード」がなくても盛り上がるのが「読書しない読書会」です。ただ、こうしたツールがあるだけで、「やってみよう」と不安なくスタートしてもらえるといいのかなと思います。
先生方へのメッセージ
最後に、先生方へのメッセージをお願いします。
指導する、教え込むといったことには限界があります。教員の仕事は、子どもたちの興味関心を応援し、能動的な行動を促すことです。生徒児童の全員が「読書しない読書会」に立ち止まってくれるとは思っていませんが、中には活動を通じて興味関心の幅を広げてくれる子どもがいます。そこに、「読書しない読書会」を学校で行うことの可能性があると思うので、ぜひ一度やってもらえたら嬉しいです。
読書教育に取り組んできた方からすると、少し意外な取り組みかもしれません。読書会やビブリオバトルも、本への興味を育てる素晴らしい場だと思っています。「読書しない読書会」は、そういった取り組みと並んで、知識量や経験に関係なく誰もがフラットにつながれる、一つの選択肢になれればと考えています。学校もそういったフラットなつながりを大切にしている場所だと思いますので、ぜひ一度試してみてください。「運営キット」があれば、どなたでも運営していただけます。もし必要であれば伺いますので、お気軽にご連絡ください。
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編集後記
この会の魅力には「相互理解」があると思う。本を選ぶという行為には、その人の普段の思考が前面に現れる。そして「読書しない読書会」には、それを話したくなる仕掛けがいくつも施されている。他者を深く知れる有用なツールとして、新学期のレクリエーションにもおすすめだ。
文責:瀬戸大智(EDUPEDIA編集部)

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