元学校司書発! なぜこの時代に「読書教育」が必要なのか~インタビューから学ぶ~【木下通子さん取材 後編】

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目次

はじめに

前編では、さいたま市の大場谷東小学校で行われた、「点検読書」の活動について詳しくまとめています。こちらもあわせてご覧ください。

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木下通子さんインタビュー

「点検読書」という言葉を聞いたことはありますか。アメリカの教育者である、M.J.アドラーが『本を読む本』のなかで紹介している「読書の4段階」の第2段階にあたり、「はじめに」や「あとがき」、目次、奥付などを読み込むことで、作者の主張をとらえることを「点検読書」といいます。

今回は、さいたま市教育委員会が学校に派遣する「未来(みら)くる先生」として、さいたま市立大場谷東小学校で点検読書のワークを行った、木下通子さんにお話を伺いました。40年間の高校司書勤務を経て、昨年「オフィスみちねこ」という会社を起業された木下さんは、どのような想いでこの時代の読書教育に取り組んでいらっしゃるのでしょうか。

「点検読書」や「未来くる先生」については前編で詳しく説明していますので、そちらをご覧ください

小学校で点検読書のワークを行う理由

ここからは木下通子さんのインタビューをもとに、再編成したものをお送りします。

2種類の読書

点検読書はインターネットがない時代の人たちは自然にやっていたことなので、今の子どもたちが教えないとできないことに気づいたのは、ここ何年かのことです。読書には「楽しみのための読書」と、「知識を増やすための読書」の2種類あると思っていますが、なかには「楽しみのための読書」を必要としない人もいます。それなら、運動が嫌いな人は運動しないのと同じように、無理はしなくていい。ですが、「知識を増やすための読書」はどうしても必要になります。

学校図書館をきっかけに

打ち合わせの際、先生方に、調べ学習をさせてもインターネットで調べてしまう子が多いから、本を使うきっかけを与えてほしいと言われました。それならこういうことができますと、『学校図書館を活用した楽しい読書ワーク』からいくつか提案しました。すると先生方が「この『点検読書』をしていただけませんか」と言ってくれたのです。もともとは高校生向けのものだったので、小学校の司書さんと相談しながら、子どもたちが点検できそうな本を学校図書館から選んでいきました。

スマホやタブレットを使ったっていい。けれど…

「選べる時代」に本という選択肢を

今年(2025年)は高校の司書を定年退職し、「オフィスみちねこ」を起業して1年目。「実は本って、学校図書館って、すごく使えるんだよ」ということを知ってもらう活動を一生懸命頑張ってきました。今は「選べる時代」だと思います。ですが、スマホで調べることしか知らなかったら、その世界がその人の全てになってしまいます。これはスマホで調べた方がいいよね、これは本を読んだ方がいいよねと、自分で選べる人を育てたい。 そしてもっと深く何かを学びたいとなったときに、本の世界があることを教えたいです

国語科だけの話、ではない

もう今は国語科だけが読書教育を担う時代ではないと思っています。これからは、学校全体で「読書をどうとらえるか」を考えなくてはいけません。そうなったときに、学校図書館をぜひ活用してもらえたらと思います。本の読み方を教えるのは先生ではなく、司書でもいいわけです。奥付の見方を教えたり、書誌事項とは何なのかを教えたりというのは、むしろ司書の仕事だと思っています

「オフィスみちねこ」起業の先に

教育格差を是正する「本」

今の子どもたちは「親ガチャ」だから「どうせ」となってしまいがちです。小学生になるとみんな学校で同じように勉強するけれど、地域によっては幼稚園の時点で、家庭での教育格差が目に見えてきますよね。学校図書館は、そういう問題をちゃんと掬って、読むのが苦手な子には読めるように指導し、読むのが得意な子には少し背伸びした本を紹介することができます。集団ではなく、あくまでも個に向き合える場所ですそれが、どの学校にも司書が専任でいてほしい理由につながります

1人でも多くの人に届けたい

私は社会教育士として、本と人をつなぐ活動をしたいと考えて起業しました。noteで活動を発信することで、可能性が広がりました。埼玉県内だけでなく、昨年は「信州岩波講座」で長野県の高校生と一緒に活動しました。私は本を読める子どもを1人でも増やしたいと思っています。最終的にやりたいことは、子ども食堂とかフリースクールとかにサブスクリプションで本を入れていく仕組みを作ることです。これからも、今までの司書の経験と、私のパーソナリティーを生かして活動していきたいです。

先生方へのメッセージ

先生が紹介するって、すごく響くんです」

今、先生たちは忙しくて本を読む時間がありません。だから、先生方にはなんとか読む時間を作って、おもしろいと思った本を子どもたちに紹介していってほしいです。それは別に教科関係なく、理科の先生でも数学の先生でも、これは読んでほしいという本を紹介していくことで、あの先生が言うなら読んでみようかな、と思ってくれるといいと思います。実際に本を、それもぜひ自分の学校図書館の本を紹介してください。やっぱり先生が紹介するって、すごく響くんです

ご著書紹介

プロフィール

編集後記

今や本にこだわる意味はなくなった。何かを調べるときにはタブレットを使うのが当たり前だ。しかし、だからこそ木下さんは、本を選択肢の1つとして知ってほしいと語った。そこには、長年の司書経験のなかで移りゆく本と人との関係性を、この方は常に見てきたんだなと思わせる説得力があった。これからも、「本と人をつなぐ」という想いを胸に、「オフィスみちねこ」は進み続けるのだろう。

文責・瀬戸大智 (EDUPEDIA編集部)

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