元学校司書発! 読むべき本は「点検読書」で見えてくる~大場谷東小学校活動ルポ~【木下通子さん取材 前編】

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目次

はじめに

この記事は、40年間の高校司書勤務を経て、昨年「オフィスみちねこ」という会社を起業された木下通子さんが、さいたま市教育委員会が派遣する「未来(みら)くる先生」として行った、「点検読書」の活動レポートです。

点検読書とは

アメリカの教育者、M.J.アドラーが『本を読む本』のなかで紹介する「読書の4段階」の第2段階にあたり、「はじめに」や「あとがき」、目次、奥付を読み込むことで、作者の主張を捉えることを「点検読書」といいます。

未来くる先生とは

「夢工房 未来(みら)くる先生 ふれ愛推進事業」は、さいたま市が教育基本振興計画の中に掲げるキャリア教育の推進活動です。さいたま市にゆかりのある文化芸術及びスポーツ等の専門家を未来(みら)くる先生として講師登録し、市内の小・中・高校へ派遣をする事業を長きにわたり行っています。


2025年12月18日、今回木下さんが「未来くる先生」として訪れたのは、さいたま市立大谷場東小学校です。すぐ隣には大場谷東中学校があり、両校は2001年に小・中学校一体型校舎に改築され、小・中連携の教育等、一体型校舎を生かした独特の教育活動を行っています。「ふみくら」と命名された学校図書館は、小・中学生が同じ本を読める仕組みになっています。

〈大場谷東小学校・中学校の取り組みはこちら〉

プロフィール

活動レポート

今回の活動を、3つのステップに分けて説明していきます。

STEP
体育館で本について学ぼう

まずは6年生3クラスが体育館に集まり、本を点検する際に知っておくべきことを学びます。本の仕組みや奥付の見方、ISBNコードなど、普段学ぶことのない専門用語に子どもたちは興味津々でした。

「本を読むのが好きな人」と子どもたちに問いかける木下さん

〈実際に使用されたスライド〉

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STEP
教室で実際に本を点検してみよう

教室に戻ると、木下さんが司書の方と学校図書館から事前に選んだ本が、ランダムに一人一冊配られました。スマホの使い方からパンの焼き方まで、多種多様なジャンルの本を手にした子どもたちは、次から次へとページをめくっていきます。木下さんから改めて点検読書の方法について説明があったのち、ワークシートに沿って進めていきます。

実際に点検された本(一部)は以下の通りです。。

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『ネットが最強のパートナーになる ネット・スマホ攻略術 1時間で一生分の「生きる力」1』

著/山崎聡一郎

発行/講談社

『ヤワな大人にならない! 生きかたルールブック』 

監修/齋藤 孝     絵/林 ユミ

発行/日本図書センター

『捨てないパン屋の挑戦 しあわせのレシピ』

著/井出留美

発行/あかね書房

『自分を好きになれない君へ』

著/野口嘉則 

発行/小学館

点検読書のワークフローは以下の通りです。

点検読書のワークフロー
  1. 書名を書こう(しょめい・本のタイトル)
  2. 著者名を書こう(本を書いた人の名前)
  3. 出版社を書こう(本を出した会社の名前)
  4. 出版年を書こう(本がいつ出版されたか)
  5. ISBNコードを書こう
  6. 目次を読んでみよう!
  7. 請求番号を書こう(本のラベル)
  8. 「はじめに」と「あとがき」を読んで、作者が伝えたいことをそのまま書き出してみよう(引用)
  9. この本を続けて読んでみたいですか? その理由も書きましょう。

このような流れで、著者が言いたいことを大まかにとらえていきます。目的は「この本は自分が読みたい本なのか、そうではないのか」を判断することです。これは、調べ学習のときに自分が知りたいことが書いてあるかどうかを見定める練習にもなります。

配られた本を黙々と読み込み、ワークシートを埋めていく子どもたち

〈実際に使用されたスライド〉

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STEP
点検した結果をディスカッションしよう

最後に2人1組になり、点検結果を共有しました。「本のタイトル」「著者」「本の内容」「この本を読みたいか、読みたくないか」を2分間で相手に発表します。特に最後の、「この本を読みたいか、読みたくないか」の部分では、多くの子どもたちが「読みたい」と答えていたのが印象的でした。

ディスカッションをしてみて

山崎聡一郎著『ネットが最強のパートナーになる ネット・スマホ攻略術』を点検した女の子の相手をさせていただきました。絵を描くことが趣味の彼女は、「普段本は読まないけど、これはマンガなので、内容が入りやすくて読みたくなりました」と話してくれました。

「点検読書」を体験した子どもたちの感想

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先生の話を聞いて、面白くなさそうで読みたくない本も、どんどん読むようにして、これからの人生で良い本に出会えるようにしたいと思いました

説明している人が楽しそうなので、やるときに楽になれました。ノンフィクションのほうも読めるようにがんばります。もっと本が楽しくなれるように!

普通に本を借りに行ったり、買いに行ったりすると、絶対出会わない本を読む時間を作ってくれてありがとうございましたと伝えたいです。楽しい時間をありがとうございました。

普段あまり学習することのない本の大きさ、別の呼び方や奥付の見方、ISBNコード等の本に関することをわかりやすく教えてくれたので、今日のことを忘れずに本を読みたいです。

先生を通して、僕は本に対しての正直な感想となぜを大事にしようと思いました

木下さんのご感想

こういうことを必要だと感じてくれる子も多いんだなと

普段、高校生や大人向けに点検読書をやらせてもらうことが多かったのですが、小学生でも集中してやってくれるんだというのが新鮮な驚きでした。もっとつまらなそうに活動するかなと思っていたのですが、子どもたちが、本の仕組みを知ることに意外と喜びを感じてくれて、こういうことを必要だと感じてくれる子も多いんだなと思いました。改めて、現場に入っていくきっかけとして「未来くる先生」になることができてとても良かったと思います。読書教育をやりたい学校さんに、来年(2026年)はもっと呼んでもらえたらと思っています。

編集後記

この本は自分が読むべき本なのか、そうではないのか。本と出会い、手探りで読み込んでいく「点検読書」は、現代の子どもたちにとって貴重な経験であることがわかった。ランダムに配られた一冊の本にも、子どもたちの好奇心はとどまることを知らない。タブレットで調べればなんでもわかる今だからこそ、子どもたちには本という選択肢を持ち続けてほしいと感じた。

文責・瀬戸大智(EDUPEDIA編集部)

後編では、木下通子さんにこの時代の読書教育への想いについてお話を伺いました。こちらもあわせてご覧ください。

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