「読書しない」読書会、なのに本を好きになる理由~活動レポートと感想から学ぶ~【田辺市立図書館取材 前編】

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目次

はじめに

この記事は、pokke株式会社代表の三田剛広さんと、和歌山県教育庁の松本能さんが中心となり、和歌山県の田辺市立図書館で行われた、「読書しない読書会」の活動レポートです。


「なにか、子どもたちが本を読みたくなるような活動ってないの?」(現役中学校教員からの質問)

そんな悩みに応えるのが、今回紹介する「読書しない読書会」です。

「読書しない読書会」とは

「読書しない読書会」は、普段は読まないジャンルの中から本を選び、「なぜこの本を選んだのか?」をシェアすることで、自らの興味関心の幅を広げていく活動です。事前に本を読み込んだり、持参したりする必要がないため、普段読書をしない人でも気軽に参加できるのが魅力です。

〈詳細・お問い合わせはこちら〉

2026年2月8日、和歌山県の田辺市立図書館で、「令和7年度 読書を楽しむ習慣づくり事業」として「読書しない読書会」が開催されました。「読書しない読書会」の考案者であるpokke株式会社代表の三田剛広さんと、和歌山県教育庁で働かれている松本能さんが中心となり開催され、14人の参加者が新たな本や人との出会いを楽しみました。

読書を楽しむ習慣づくり事業について

和歌山県教育委員会では、読書の素晴らしさを再認識する機会の創出を目的とした「読書を楽しむ習慣づくり事業」を行っています。

プロフィール

三田剛広(Mita Yoshihiro)

pokke株式会社代表。2015年に「読書しない読書会」を立ち上げ、現在も都内を中心に、月に一度のペースで開催中。「Peatix コミュニティアワード2025」にて「ユニークコミュニティ賞」受賞。大学や教育機関での開催実績もあり、幅広い世代との対話を通じて、学びと感性を磨く場を提供している。(2026年3月時点)

松本能(Matsumoto Chikara)

和歌山県教育庁紀南教育事務所社会教育課。社会教育主事兼指導主事。元中学校教諭。「読書を楽しむ習慣作り事業」の事業目的である、「普段本を手にしない人が読書をするきっかけづくり」に着目し、2024年度から和歌山県内で「読書しない読書会」を過去5回開催。社会教育の視点から地域コミュニティを豊かにする活動を行っている。(2026年3月時点)

「読書しない読書会」in 田辺市立図書館 活動レポート

STEP
どの書架に行くかを決めよう

まずは5人ずつのグループに分かれ、ルーレットで自分がどの番号の書架から本を選ぶかを決定します。その際、普段から読み慣れているジャンルの書架となった場合は、再度ルーレットを回すことも可能です。

〈実際に使用されたスライド〉
STEP
本を選ぼう

ルーレットで当たった書架へ向かい、本を選びます。30分という時間の中で、自らの興味関心と向き合い、心の赴くままに書架へ手を伸ばします。1冊に絞り切れない場合は、最大2冊まで選ぶことが可能です。

本を選ぶ参加者
STEP
その本を選んだ理由をシェアしよう

選んだ本を図書館で借りた後、グループで「なぜこの本を選んだのか」を1人ずつシェアします。

「なぜこの本を選んだのか」を話し始める参加者たち

また、今回は運営キットとして、質問が書かれた「ほんねカード」と進行用の「ゲームのしおり」が導入されました。これは、誰でも安心してファシリテーターができるように設計されたツールです。

「ほんねカード」(左上・下)と「ゲームのしおり」(右上)

「ゲームのしおり」には、このパートの進め方が5段階でまとめられています。

スクロールできます
  • 本との出会いを楽しもう
    スマホや検索機をお休みして、感性の赴くままに書棚を散策。「いいな」と思った気持ちをそっと覚えておく。
  • 選んだ理由を話そう
    本を並べて、なぜその本を選んだのかをみんなに伝える。
  • 本と仲良くなろう
    カードの問いをきっかけに、本の新しい良さを見つける。
  • 本と自分をつなげてみよう
    本を、毎日の新しいともだちにする。
  • 本と一緒に、新しい毎日へ
    「選ぶ」ことから、もう読書は始まっている。

また、「ほんねカード」は5色あり、色ごとに質問のはたらきが異なっています。

役割
ブルー選書理由を言葉にする
例)「この本を見て、パッと『気になった』ことは何ですか?」
ピンク直感を掘り下げる
例)「この本の『見た目』のどこに、一番心が反応したのでしょうか?」
グリーン連想を広げる
例)「この本が『扉』だとしたら、その向こうにはどんな景色が広がっている予感がしますか?」
パープル参加者同士をつなげる
例)「他の人が選んだ本を見て、『実はそれも気になっていたんだ』と共鳴したポイントはどこですか?」
イエロー未来の自分とつなげる
例)「10年後にこの本を棚で見つけたとき、今のあなたにどんな言葉をかけると思いますか?」
「ほんねカード」の色ごとの役割と質問例

これらの運営キットによってファシリテーターの負担は減り、参加者どうしの会話は活性化していきました。

「ほんねカード」に書かれた質問に答える参加者たち

参加者の感想

今回参加していた小学2年生の女の子と、小学校で働かれている方の感想を紹介します。

小学2年生

楽しかった!! なんかめっちゃしゃべった。みかんの白いすじは、アルベド。『モノの名前じてん』おもしろかった。友達に、本ってこんなにすごいんやでって教えたい。

小学校で働かれている方

今日は楽しい会に参加できて良かったです。本を選ぶ楽しさを再認識できました。小学校でもやってみたいです。図書の時間に時間とってもらえるかな~。

その他の方々の感想はこちら

ただただ、楽しかったです。読書は苦手ですが、選択するという第一歩は踏み出せたと思います。

みなさんの個性溢れるお話に、ああこんな考え方があるんやなぁと感心しっぱなしでした。とても有意義な時間を共有できて楽しかったです。

参加者の方、進行の方との会話がとても弾み楽しかったです。本を選んだ理由を言語化すると、あら、自分はこんなことを考えているの? と発見がありました。

普段本を読みません。図書館で本を選ぶこともありません。今日、真剣に本を選びました。自分と向き合って、自分の好き嫌いが分かりました。

三田さん・松本さんの感想

今回主催されたpokke株式会社代表の三田さんと、和歌山県教育庁の松本さんの感想を紹介します。

三田さん

どのテーブルも楽しそうに盛り上がっていて良かったです。また、新しく開発した運営キットのおかげで、ファシリテーター未経験の方でも安心して運営できることが確認できました。これからも、教育に関わる方や本に触れる機会を増やしたい方が「自分もやってみたい」「誰かに広めたい」と思えるような会にしていきたいです。

松本さん

参加者の100%のアンケート回答率が、この会の満足度を表していると思います。また、運営をしながら感じたのは、「運営キット」があることで安心してファシリテーションができる実感でした。小学2年生の感想からは「読書しない読書会」の可能性を強く感じました。この会を開催できたこと、三田さんに出会えたことを嬉しく思います。

編集後記

従来の読書教育は、主に本の内容を読み込むことが目的だった。しかし「読書しない読書会」は、本を選ぶことを通じて、新たな興味関心と対面することが目的である。本が「読むもの」ではなく「選ぶもの」になった途端、書架の見方がガラッと変わる体験は、ぜひ多くの方に味わってほしい。

文責:瀬戸大智(EDUPEDIA編集部)

〈詳細・お問い合わせはこちら〉

後編では、pokke株式会社代表の三田剛広さんと、和歌山県教育庁の松本能さんに、過渡期を迎える学校に「読書しない読書会」を取り入れるべき理由について伺っています。こちらもあわせてご覧ください。

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