指導者 高橋宣允先生 羽鳥真史先生
も、ぜひご参照ください。
1 はじめに
学習指導要領上では、3学年から行う事となっている跳び箱運動。
3年生になった時にスムーズに取り組めるよう、遊びの要素も取り入れながら2年生の秋に、跳び箱を使った運動遊びを行いました。
7時間中5時間目の本時は、長い跳び箱を跳ぶためのポイントなどを、周りの児童と教え合いながら習得することを目指します。
2 主張(跳び箱運動の特性とそれに対する教師の目標)
(1)運動の特性
①一般的特性
- 非日常的で巧技性を特徴とした運動に挑戦し、できるようになっていく過程が楽しい運動であり、できたときの喜びが大きい運動でもある。
- 課題を解決するために技のポイントを見つけ、できばえを確かめ合うなど、仲間集団での活動が楽しい運動である。
②子どもからみた特性
- 非日常的で巧技性を特徴としている運動であるので、苦手な子にとっては跳び箱そのものが大きな障害物であり、失敗したときの痛みや恐怖を抱きやすい運動である。また、系統性を持つ段階的な運動でもあるため、どのような方法で、どのように練習をすればよいのか判断に困る運動でもある。
- 技能の個人差が大きく、課題を解決するために技のポイントを見つけ、できばえを確かめ合うなど、仲間集団での活動が楽しい運動である。
(2)指導の工夫
①跳び箱運動につながる基礎的な運動感覚を育むことを目指して
低学年段階は、基礎的な運動感覚を育てる時期であり、その育成には「跳び箱につながる運動遊び」が最適であると考える。さまざまな場や課題を設定することで子どもたちが生き生きと楽しみながら、基礎的な運動経験を育んでいけると考える。
しかし、単に楽しいだけの場の設定や課題の設定では、器械運動につながる基礎的な運動感覚づくりには不十分と考える。そこで、各コーナーでは運動の内容と期待される効果を明確にして, 跳び箱運動につながる動きを作っていきたいと考える。また、既に個人差も広がり始めていることも考えたい。跳び箱を跳び越すための基礎的な運動感覚の習得と跳び越すことについてのポイントを見つけることで技術が高まる可能性が広がる。たとえできなくても同じ学び合いの場に参加ができることで、広がってしまった個人差にも対応していけるのではないかと考える。そして、共通課題として跳び箱の開脚跳び越しを扱うことで、みんなで教え合うための技術面での素地を作っていけると考える。
②電子黒板を用いて、視覚的な理解を深める活動を目指して
電子黒板を用いて視覚的に映像を見ることができれば、低学年段階において運動に対するイメージや理解を深めることができると考えている。そして、技能の習得や向上をさせることは大切な学習の目標であるのと同時に技のポイントを見つけ、それに適しためあて学習をしていくことも重要な学習の目標であると考えている。「できてわかる」という子どもの姿が目標であるが、「できないがわかる」という子どもの姿も認めていきたい。電子黒板を用いた指導は技能にかかわらず、技のポイントを見つけていくことに有効にはたらくと考えている。
③技能の高低に関係なく、子どもたち同士がつながる活動を目指して
本単元を学習する上で、仲間とつながる活動を何より大切にしていきたい。その中で、2年生になって仲間同士で教え合いをしようとする子どもたちになってほしいと考える。
また、技のポイントを見つける活動は、できるからわかることもあれば、できないからわかることもある。また,両者を比較するからわかることもある。技能の低い子どもも活動に積極的に参加していくことが求められる。その活動を通して、技能の高低に関係なく学習が成立するということを意識させたいと考える。
3 単元の目標
【関心・意欲・態度】
- きまりを守って、跳び箱を使った運動遊びに進んで取り組むことができる。
- 進んで、仲間にアドバイスをしたり、仲間と確かめ合ったり協力したりすることができる。
【思考・判断】
- 学んだことを生かしながら、またぎ越しなどの基本的な技のポイントを考えることができる。
【運動の技能】
- 両足で踏み切り、腕で体を支えるまたぎ乗りやまたぎ下り、またぎ越しが大きな動作でできる。
- 一連の動作をスムーズに、跳び乗りや跳び下り、跳び越しができる。
4 単元について
(1) 単元全体プラン(7時間扱い)
(2) 予備的運動について
以下の番号は、
①内容
②期待される効果
③つながる技
を指します。
馬跳び(ペア)
①さまざまな馬の高さで、ペアになり馬を跳び越える。
②跳ぶ人と馬を作る人の役割を明確にし、跳び箱を跳ぶ前の前段階としての役割を体験することができる。
③切り返し系
あしかの拍手
①腕立ての姿勢で手を突き放し、何回拍手できるか挑戦する。
②力強く手を突き放したり、ひじを曲げて勢いよく突き放したりできるようになる。
③切り返し系、回転系
あざらし歩き
①両腕で体を支えて移動する。
②両腕で体を指示する感覚をつかむ。
③切り返し系、回転系
(3) コーナー学習(北条ジャングル)について
滝つぼジャンプ
①短い助走から両足同時に踏切、離れたセーフティーマットの上に身体を投げ出す。
②ロイター板を思い切り踏み切り、身体を前方へ投げ出す感覚をつかむ。第一空中局面での勢いをつける。
③ すべての技
ピラニアリバー
① 壁に足、床に両手をつきながら体を支えたり、横移動をしたりする。
② 腕の支持と体のしめの感覚をつかむ。おしりより頭が低い状態を体験できる。
③ すべての技
一本橋
①ビールケースの端から端まで何回手を着いたら渡れるか、できるだけ少ない回数で渡れるようにする。
②しっかり腕に体重をかけ、肩を前に乗り出す感覚をつかむ。
③切り返し系
島跳び
① フラフープを使って連続ウサギ跳びや、ラインを跳び越すウサギ跳びを行う。
②「足で蹴って、手で受け止め、足で下りる」という跳び箱の基本動作の習得を行う。
③すべての技
岩山跳びつきジャンプ
①両足同時に踏み切り、両足同時に跳び箱を上がる。跳び箱からジャンプして着地する。
②両足踏み切りと両足着手を意識して行い、同時に体を支える感覚をつかむ。高さに慣れながら着地動作の感覚を身につける。
③切り返し系、回転系
(4) 場の設定
5 本時の指導
本時のねらい
- 学んだことを生かしながら、長い跳び箱をまたぎ越すポイントを考えることができる。
- きまりを守って、仲間と協力したり、友達にまたぎ越しのアドバイスをしようとしたりすることができる。
展開
支援及び留意点(・及び○) 評価の観点(☆)
1.学習の場づくりをする。
- 事故の防止に配慮し、子どもたちと一緒に場づくりをする。
2.あいさつをし、準備運動をする。
- 全体を観察し、子どもたち一人一人の様子を観察する。
3.予備的運動をする。(上記参照)
- 教師が全体に指示を出しながら、テンポ良く行うようにする。
○ポイント
予備的運動は主運動につながる大切な役割を担っているため、全体でポイントをしっかりと確認しながら行った。
学級の実態から、馬跳びは難易度が高いと判断し、カエル跳び、あしかの拍手、かえるの足打ちに変更した。
4.コーナー学習をする。(上記参照)
- 主運動につながるような予備的運動とコーナー学習を取り入れ、それぞれの場で意識させたいポイントについて声をかける。
○ポイント
コーナー学習は、子どもたちがいきいきと活動でき、楽しみながら活動ができていたと感じる。
前時で短い跳び箱をまたぎ越すポイントを確認してきたので、本時の前半にも長い跳び箱を飛ぶ前に、短い跳び箱でポイントを確認しながら行うよう設定した。
5.本時のめあてを確認する。
めあて:長い跳び箱をまたぎこすポイントって、なんだろう?
- 前時に、短い跳び箱をまたぎ越すポイントを考え練習したことを想起させ、本時につなげる。
- 跳び箱をまたぎ越せる子とまたぎ越せない子の動きを比較した写真を見せ、その違いを考え、技をイメージさせる。
6.グループでまたぎ越しの練習をしながら、ポイントを見つける。
◆跳び箱が長くなったから、両足で踏み切らなきゃいけないかな?
◆体を前に投げ出すのは怖いぞ。
◆助走のスピードは早い方がいいかな?
◆手を巻く位置は、跳び箱の前のほうがいいかな?
- 「跳べているときと跳べてない時とは、どこが違う?」と、跳べている子の跳び方に注目させ、考えさせる。
- 「安全に気をつけているか」「お互いに見合ったり、声をかけようとしたりしているか」を確認しながら、各グループをまわる。
- 見つけたポイントを、その場で模造紙に記入していき、視覚的に理解させる。
7.全体でポイントを話し合う。
◆足でしっかり踏み切らないと、前に手が着けないぞ。
◆テープより前に手を着くといいぞ。
◆両手は同じ位置にバーでつかないとだめだ。
◆ひじを伸ばして、手よりも肩を前に出す。
- 跳び越せる子の跳び方を全体で見合い、どんな跳び方をしているか気づかせる。
☆学んだ事を生かし、長い跳び箱をまたぎ越すポイントを考えることができたか。(観察)
☆きまりを守って、仲間と協力したり、アドバイスしようとしたりすることができたか。(観察)
○ポイント
電子黒板を使って視覚的に理解できた。全体でポイントを確認しながら行うことで、見る視点や教え合うポイント等も確認することができ有効だった。
低学年段階ということもあり、ポイントは①手を前に!②頭を前に!など短い言葉でポイントを示したことで、教え合いの活動の中でも、そのような言葉がアドバイスとなって発せられていた。
理解度の異なる児童同士でグループを組ませたことで、自分が跳べるからいいではなく、跳べない子のために教えてあげるという雰囲気もできていた。
しかしながら、児童の運動能力の実態をしっかりと把握した上で、より緻密なグループ分けが必要だったと思われる様子も若干見られたため、その点は反省している。
8.話し合ったポイントを踏まえて、再度練習をする。
- 「安全に気をつけているか」「お互いに見合ったり、声をかけようとしたりしているか」を確認しながら、各グループをまわる。
9.本時の振り返りをする。
- 頑張っていた人、上手にできた人、協力していた人等を発表させる。仲間のいいところをいつけられたことを認め、称賛する。
10.整理運動をし、あいさつをする。
- 体の具合や、ケガ等がないか確認する。
11.後片付けをする。
- 事故の防止に配慮し、子どもたちと一緒に後片付けをする。
6 実施した教師よる主張と考察
跳び箱を使った運動遊びを通して、3年生から行う器械運動に向け、2年生の後半で技のポイントを友だちと協力しながら見つける活動を実践した。
今回はまたぎ越しの習得をメインにし、「どこを見ればポイントがわかるのか?」「どのような手段でポイントを見つけるか?」など、器械運動的な授業となった。2年生段階においても、十分な教え合い活動や見合う活動が実践できたと感じている。
しかし、授業内容が2年生の運動遊びを通した授業ではなく、3年生からの器械運動の授業の色が濃かったと他の先生より指摘があった。授業の前段階にコーナー学習(北条ジャングル)で思いっきり遊ぶ活動を実践しながら、後半には教え合い活動を進めたことで、前段と後半の温度差を感じたというご指摘もあった。私としては、子どもたちが前段の遊びから、後半の器械運動の学びへと変わっていったのだと考えている。2年生段階でもこういった活動が必要であると考えていたが、「運動遊びの延長として様々な動きを体験しながら学習していくスタイルの方が実態に合う」と、他の多くの先生に助言された。このプランを実践するにあたっては、学習指導要領に示された領域で活動を工夫し、思い切り遊ぶ活動を通して跳び箱運動の基礎的な動き等を遊びの中で習得し、3年生からの器械運動へつなげていくのも良いのではないかと感じた。
添付ファイル
7 編集後記
器械運動は、得意な児童と苦手な児童にはっきりと分かれてしまうことが多いですが、このように児童同士で教え合う形式にしたり、跳ぶためのポイントを確認したりすることで、苦手な児童も抵抗感なく取り組んでいけるのではないかと思いました。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 薗田誠也)
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