1 はじめに
こちらの記事は、静岡県で30年間以上続く教員サークル、シリウスのホームページに掲載されている教育実践法の一つをご紹介しています。
http://homepage1.nifty.com/moritake/
2 実践内容
<目次>
(本記事では5.までを紹介をします。6.以降は学校のまわり②~学区探検、地図づくり~(シリウス)からご覧下さい。)
- 学校の周り山の上から見える景色
- 山から見て気づいたこと
- 東西南北を知ろう
- 学区のいちおしを見つけよう
- 学区いちおしを紹介しあおう
- 探検隊を作ったよ
- 1回目の学区探険をしよう
- 2回目の学区探険をしよう
- 地図記号を使ってもっと見やすい地図にしよう
1.学校の周り山の上から見える景色
3年生の社会の授業びらきは、学区全体を見通せる高台へ出かけた。農道を登っていくと山の登山道に通じる道となる。小学校から見える左手の鉄塔のところまでいくことができる。(以下、赤字部分が教員の発問部分です。)
あの山の鉄塔のところまで歩いていこう。
この鉄塔でちょうど一時間かかった。子どもたちは歩きながら様々なことに気づいた。「どうしてたくさんのお茶畑があるの」「この鉄塔は何だろう」などなど。これらの気づきを一歩膨らませて、学習問題に発展させていきたい。
山からの眺望はそれはもう素晴らしいものだった。学区全体を一望でき、目前に大パノラマが広がっている。遙か遠くに小さく校舎が見えている。運動場には、豆粒のように小さな子どもたちが体育の授業をしている様子が見えた。
ここから見える景色をスケッチしよう。
農道の終点でお弁当を食べ、礎億からの景色をスケッチした。
[感想]
- 小学校からだいらぼうの近くまであるいて山登りをして、疲れたけれど楽しかったです。景色がすごくきれいでした。
- だいらぼうのてっぺんに行って、お弁当を食べたり遊んだり景色を描いたりして楽しかったです。
2.山から見て気づいたこと
山の鉄塔から見た景色は、とても美しくダイナミックなものであった。山の上からはスケッチをしたが、教室に戻ってから気づいたことをノートに書きだしていった。
山からから見て、わかったこと・思ったこと。
ノートへは箇条書きで書いていた。一つ書いたら持って来させ、よい気づきには○や◎をつけて、見るべき視点を教えた。
・山が大きく見えた。
・自然がいっぱいあった。
・川の形が変な形だった。家がたくさん見えた。
・川の形が蛇みたい。
・桜の花がいっぱいあって綺麗だった。
・山が見えた。車がたくさん見えた。
・川の形がぐにゃぐにゃしていて面白かった。
・田んぼがこんなにいっぱいあるとは思わなかった。
これ以外にもたくさんの気づきが黒板いっぱいに書きき出された。今度はこれらを見ながら気づいたことを整理していった。
黒板を見てごらん。どんなことが多く描かれていますか。
山、川、田んぼ、桜、家、車、などが挙げられた。私たち学区の特徴が浮かび上がってきた。
私たちの小学校の学区には、山、川、田んぼ、桜、家、車がある。
このようにノートをまとめた。
3.東西南北を知ろう
この単元では探検したことを絵地図に表していく。地図を見たり描いたりする時の基本は、東西南北であるので、方位方角について学んだ。子どもたちに目をつぶらせて
君たちは今、自動車に乗せられて山に囲まれた小さな山小屋に連れてこられました。そして、ただ一人で山小屋に置き去りにされたのです。縛られていた手が自由になったので目隠しをはずすと、山小屋の中には3日分の食料とメモが1枚ありました。
「命がほしければ、小屋から東の方へまる二日歩き続けろ。そうすれば町に出られる。」
こうやってお話を始めると、子どもたちはたちまちお話の世界に引き込まれ、被害者になってしまった。
さて君たちはどうやって東を見つけますか。
すぐに「方位磁石」という声が上がったが 「3日分の食料とメモ1枚しかありません」
どうやったら東が見つかるか、隣の子と相談しよう。
隣の子と相談させると、いくつか考えがされた。
・風の吹いてくる方向
・太陽の沈む方向
・太陽が昇る方向
・月が昇る方向
もう一度考えさせた後、月や太陽が昇る方向が東であることを説明した。他にも、切り株の年輪の見分け方を教えた。
方角には四つありましたね。そのような時、北は上でしょうか、下でしょうか。
東西南北は知っていたが、北と南についてはあいまいだったので、東に向かって右手が南で左手が北であることを教えた。
実際に方位磁針で確かめてみよう。
今度は方位磁針を使ってみることにした。本校の校舎は、ほぼ東西南北の向きで建てられていることを確かめた。最後に
安心したと思ったのもつかの間、また目隠しをされて手を縛られてしまいました。目をつぶったまま言われた方を向きなさい。
「えー!」
なんだか嬉しそうな悲鳴が聞こえてきた。「東、南、西、東」と私が言った方角に体の向きを変えていく。子どもたちは目をつぶって、今習ったばかりの方角の方へからだを向けていった。まだしっかり方角をおぼえていない子は、ときどきそっと目を開けて、体の向きを直しているのが、微笑ましい。
最後にようやく正しい東の方を向いて脱出することができた。
4.学区のいちおしを見つけよう
自分たちの学校の周りにはどんなものがあるかを紹介しあった。学区の目印になるものを紹介しあい、興味を持った事柄についてはさらに詳しく調べる活動へ発展させていった。まずは、自宅の周りの一押しの場所を紹介した。
自分の家の周りにあるもので、みんなに紹介したいところ、知らせたいものがありますか。学区いちおしカードに書いてみよう。
すぐに、一押しの場所が出てくると思ったのだが、子どもたちは「うーん」と頭をひねっていた。普段見ているものでもあまり気にとめていなかったのかもしれない。こうして改めて学区のものを見つめさせることで、家の周りにあるものが見えてくるようだ。
子どもたちがあげた“いちおし”は、このようなものだった。
・川の土手:春の桜がとってもきれいだし、川もきれいでいいよ。
・お寺:お葬式のときに使う所だよ。あと花を置きに来る人もいるよ。
・保育園:小さな子どもたちが明るく元気よく外で遊びます。
・水車小屋:水車が回転していて、水を入れて水槽の中には魚がいる。
・スポーツ広場:広場に大きなブロック(消波ブロック)がある。
5.学区のいちおしを紹介しあう
これまで“学区のいちおし”の場所を一人2枚ずつでカードに表してきた。これらのカードを位置関係がわかるように教室の床に並べた。
学区いちおしカードを教室の床の上に並べてみよう。
子どもたちが一押しの場所としてあげたのは
・神社 ・お寺 ・保育園 ・桜橋
・川の土手 ・製茶工場 ・記念の石 ・ガソリンスタンド
・駄菓子屋さん ・スポーツ広場
カードをあっちへ持っていったり、こっちへ持っていきながら、位置を合わせた。まだ地図の概念が十分でないため、最初は大分混乱していたがなんとか収まった。
カードを見せ合って、よくわからないところ、もっとよく知りたいところを教えあおう。
あちこち出歩いて、カードを描いた人に「ここはどんなところ?」と話を聞いた。
さてこうしてお互いの情報を交換した後にグループ作りをした。
自分の地区(町内)以外で、もっと詳しく知りたいところはどこですか。
学区内を4つに分けて、どこをもっと知りたいか選ばせた。これが探検隊のグループになる。
6.以降は学校のまわり②~学区探検、地図づくり~(シリウス)に続きます。
3 プロフィール
静岡県教育サークル シリウス
1984年創立。
「理論より実践を語る」「子どもの事実で語る」「小さな事実から大きな結論を導かない」これがサークルの主な柱です。
最近では、技術だけではない理論の大切さも感じています。それは「子どもをよくみる」という誰もがしている当たり前のことでした。思想、信条関係なし。「子どもにとってより価値ある教師になりたい」という願いだけを共有しています。
4 書籍のご紹介
「教室掲示 レイアウトアイデア事典」(明治図書2014/2/21発売)
「学級&授業ゲームアイデア事典」(2014/7/25発売)
「係活動システム&アイデア事典」(2015/2/27発売)
「学級開きルール&アイデア事典」(2015/3/12発売)
5 編集後記
地域を見渡せる山に登って、自分の住む地域の全体像をつかんだり、地域のいちおしを考えることで、普段過ごしている自分の地域のことを知るきっかけになります。また、どのようにしたら東西南北を知ることができるか、方位磁石を用いないで子供同士に考えさせることで、生きるための知恵も身につきます。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 水島淳)
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