高学年の学級経営に係活動の充実は欠かせません。
「楽しければOK」ではなく、児童が学級の仲を深め合い、自主性や創意工夫といった力を高める係活動にしていくことが重要です。
また、いろいろな力を身につけて成長してきた高学年だからこそできる係活動があります。
今回の記事では、児童の力も学級の力も高まる係活動の指導ポイントを解説します。
特別活動の要点を押さえよう
まずは、係活動が位置づけられている特別活動の要点を押さえていきましょう。
特別活動は「人間関係形成」「社会参画」「自己実現」の視点が重要
学習指導要領では、特別活動において育成を目指す資質・能力の視点として、「人間関係形成」「社会参画」「自己実現」があります。
小学校学習指導要領「特別活動編」P12~13)
- 「人間関係形成」は、集団の中で、人間関係を自主的、実践的によりよいものへと形成するという視点
- 「社会参画」は、よりよい学級・学校生活づくりなど、集団や社会に参画し、 様々な問題を主体的に解決しようとするという視点
- 「自己実現」は、一般的には様々な意味で用いられるが、特別活動においては、集団の中で、現在及び将来の自己の生活の課題を発見し、よりよく改善しようとする視点
この3つの視点が係活動を指導する大きな柱になります。
学習指導要領による「係活動」の位置づけ
係活動は小学校学習指導要領「特別活動編」では以下のように位置づけられています。
(イ) 係活動
係活動は、学級の児童が学級内の仕事を分担処理し、児童の力で学級生活を 楽しく豊かにすることをねらいとしている。したがって、当番活動と係活動の 違いに留意し、教科に関する仕事や教師の仕事の一部を担うような係にならないようにすることが大切である。
例えば学級新聞係や誕生日係、レクリエー ション係など、学級生活を共に楽しく豊かにするために創意工夫しながら自主的、実践的に取り組むことができる活動を行うようにする。
(小学校学習指導要領「特別活動編」P71)
つまり、係活動は学級を楽しい場にするための活動です。
よって、自分が楽しむだけでなく、友達(他者)を楽しませることを児童が意識して係活動できるかがポイントになります。
小学校高学年の係活動 指導ポイント
学習指導要領には高学年における係活動の指導のめやすが示されています。
- 自主的、実践的に係活動を進めたり自分のよさを生かせる係に所属したりして、継続的に活動できるようにする。
(小学校学習指導要領「特別活動編」P78)
- 高学年にふさわしい創意工夫のできる活動に重点化するなどして、信頼し支え合って、楽しく豊かな学級や学校の生活をつくることができるようにする。
指導のめやすから導き出されるキーワードは以下の5点です。
- 自主的・実践的
- 自分のよさを生かす
- 継続的に
- 創意工夫
- 楽しく豊かな学級や学校
この5点を踏まえて、係活動の指導ポイントを解説していきます。
当番活動と係活動を分けて指導する
当番活動で割り当てられる仕事は「やらなければいけない仕事」です。
つまり、当番活動をしないと学級が困るような仕事が中心になります。
一方、係活動の仕事は「自主的な仕事」です。
「クラスが楽しくなる活動」「学級のためになる活動」が係活動です。
高学年だけでなく、低・中学年でも押さえておきたいポイントです。
活動時間の確保する
係活動が機能しない原因の一つに「活動時間がないこと」があげられます。
充実した係活動には意図的、計画的かつ継続的な指導が重要です。
私は以下の2点を特に意識していました。
- 学級の時間やスキマ時間を上手に使う。
- 今後一か月の係活動の時間を児童に示しておく
高学年の児童は、活動に必要な時間が見えてくるようになり、計画的に取り組む力が芽生えてきます。
その芽をしっかりと育てるためにも、係活動をする時間を確保していきましょう。
計画の立案とふり返り
教師の計画性も重要ですが、児童の計画性も重要です。
「いつ(までに)、何をするか」という具体的な計画案を係ごとに作成させましょう。
また、計画案や活動をふり返る時間も設け、係活動をアップデートする仕組みを作っていきます。
例えば、一か月単位の指導では以下の流れが想定できます。
- 9月の計画案を月初めに作成する
- 計画案に沿って係活動をする
- 計画の立案から2週間後(月の半ば)によくできた点と改善点を中心に一度ふり返りをする
- 改善点を踏まえて、残りの2週間(月の後半)の活動を再計画する
- 再計画案に沿って係活動をする
- 9月の最後に一か月のふり返りをし、翌月の計画案を作成する
計画(Plan)をしたら実践(Do)し、実践のふり返り(Check)をして次の活動に生かす(Act)といったPDCAサイクルを係活動の指導に生かしましょう。
毎月継続することで、児童の計画力や実践力が少しずつ身についてきます。
「児童の個性」と「低学年・中学年で得た力や経験」を生かす
係活動は児童の個性(児童のよさ)が生きる活動です。
例えば、イラストを描くのが得意な児童はその力を生かして、係活動で活躍できます。
話す力がある児童は、お楽しみ会などの司会で力を発揮できます。
児童の個性が生かされる係活動は、学級の温かい雰囲気を形成することになります。
また、高学年の児童は低・中学年で得た力や経験がたくさんあります。
これまでに培った力や経験を高学年の係活動で生かせるように指導していきたいところです。
「4年生の時の新聞係が面白い記事を作成していて楽しかった」
「レク係が企画したドッジボールはルールが工夫されていてよかった」
というような経験は、高学年の係活動をより充実させるためのヒントになります。
児童の個性と経験を引き出す指導を心掛けましょう。
他者評価を適宜取り入れる
独りよがりな係活動にならないようにするのも、高学年の係活動では重要です。
中には、自分たちだけ楽しめればよいといった自己満足的に係活動をする児童が出てくる場合があります。
そのような場合は、以下のような他者評価を取り入れてみましょう。
- 係活動コーナーに要望箱や目安箱を設置する
- 係ごとにアンケートを取って学級の要望を聞く
- タブレット端末を活用して相互評価をする
適切な他者評価を取り入れると、児童は他者の要望や気持ちを考えた係活動を意識します。
つまり、自己満足の活動から、他者貢献の活動へと変化します。
そして、互いによい評価をし合い、係活動の質を高め合うことで、学級の仲はグッと深まっていきます。
楽しい係活動になるように
係活動は楽しい学級にするための活動です。
しかし、活動が滞っている係、アイディアが浮かばない係など教師が狙っていた姿とは異なる児童の姿を見ることもあります。
そのような時は、教師の出番です。
自主的な活動を保障しつつ、教師からの提案という形で児童に助言をしましょう。
「A係とB係のコラボレーションとか、おもしろそうだね」
「大会形式にしたら盛り上がるかもね」
「ささやかな景品があると、みんなうれしいかも」
と、係活動が楽しくなりそうなヒントを軽く背中を押すように伝えてみましょう。
仲が良いからよい仕事ができるのではなく、よい仕事をするから仲が良くなる
上記の言葉を年度初めの係活動スタート時に伝えます。
楽しい学級にするために、仲を深め合う学級にするために係活動があることを児童に意識してもらいたいからです。
係活動に限らず、児童は仲良しの友達と活動をしたい気持ちが強いです。
特に高学年の児童は顕著です。
しかし、仲良しの友達だけと過ごす状況を許してしまうと、学級の力は高まらず、よい学級づくりはできません。
グループ化が進み、いびつな人間関係が形成される可能性があります。
そのような負の状況を予防し、「いい係活動にする意欲」「いい学級にする意欲」を高めるために、「よい仕事をすると仲が良くなること」を伝えていきます。
年度初めだけではなく、活動が上手く進んでいる係や、企画が成功した係にも上記の言葉を掛けていくと有効です。
学級の仲が深まっていくのを児童が実感できます。
自主的・自治的な学級を目指して
冒頭でもお伝えしましたが、自主的・自治的な学級づくりに係活動の充実は欠かせません。
また、学級づくりは1年に及ぶ長期間の取り組みです。
そのため、教師は自主的・自治的な学級づくりを目指して、係活動をどのように指導していくかという方針・計画を明確にしていく必要があります。
解説してきた指導ポイントを参考に、係活動を充実させ、よりよい学級づくりをしていただきたいと思います。
執筆者プロフィール
マー
小学校教員を15年務めた後、フリーのWEBライターに転身。教員時代は安全主任、体育主任、生徒指導主任、学年主任を担当。現在は「物事のよさをより多くの人に」をモットーに教育系記事、金融系記事を主に執筆。趣味は野球観戦とランニングで、野球やマラソン・駅伝を応援するブログを運営している。
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