本単元で身に着けたい資質・能力
本単元では、具体物を操作しながら時刻を表す単位に着目し、日常生活で時刻を読むことができる能力の素地を養う。また、児童が生活するうえで必要な時刻を意識することにより、主体的に生活の予定を考えたり、時刻の見通しをもって行動したり、時刻を守って楽しく生活しようとしたりする態度を育む。
単元の評価基準
- 知識・技能:時計を見て何時、何時半かを読み取ったり、時刻に合わせた時計を表したりできる。
- 思考・判断・表現:時計の長針と短針の違いに着目して考えることができる。
- 主体的に取り組む態度:日常生活でも時刻の読み取りを積極的に行おうとする。
本実践の意図
本時は身近な内容だからこそ、児童が何を分かっていて何を分かっていないのか明確にしたうえで授業に臨まなければならない。ここでは以下の視点に立って授業実践を考えることにする。
- 分かっていること
- 1から10までの整数が存在すること
- 分かっていないこと
- 整数の間には(無限の)数が存在していること
- 短針と長針の表す意味の違い(時計の読み取り方)
授業実践では、ストップウォッチを用いた数における連続性の概念に触れさせたい。例えば8時00分から8時59分までが8時台であり、その直後9時に変わることに気付かせる。つまり次の画像は9時の手前だから8時台と表してよいことを確認する。
ただし、先述の通り本単元を習う段階の児童は、まだ整数の間に無限の数が存在をしていること(小数等や細かい単位)を学んでいない。そのため、ストップウォッチを用いた学習は発見型学習ではなく、受容型学習(教えられたものを理解し納得するための学習法)とする。
授業実践
1.導入
「今日のテーマはこれだ!」と言って針のない時計を提示し、児童の興味関心を引くとともに針に注目をさせる。
ここでは以下の2点を確認しておくことが肝要である。
- 針には短針と長針があること。
- 時計は必ず右回りであること。
2.「なんじ」の学習
まずは「なんじ」の決まりを教えるため、以下の画像はそれぞれ1時、2時、3時と読み取れることを教える。
ここで、共通している特徴について話し合う時間を設け、長針が12を指しているときには「〇時(短針の指す数字)」と答えれば良いと気付かせる。
練習問題として時刻の読み取りをさせるだけでなく、「みじかい はりを かきましょう。」等の時刻から時計を表す問題も必ず行う。
最後に、長針が一周すると短針が1つ進むことを動画で見せ、時計の針の動き方を教える。
3.「なんじはん」の学習
最後に見せていた動画を30分になったタイミングで止め、再度時刻について考えさせる。
以下の手順で児童の思考を進める。
- 長針を12のところまで戻すと何時になるか。→8時
- 長針を12のところまで進めると何時になるか。→9時
- 8時から長針が1周すると9時になるが、半分のところで止まっている。
この状態を「〇時半」と読むことを教える。ここで長針の役割は終えたことは強調しておくとよい。
8時と9時の間にあるので、答えの候補は8時半と9時半に絞られることを確認したのち、8時から9時になる手前だから「8時半」と呼ぶことを教える。
時計の読み取り方を2、3回練習したのちに、ストップウォッチを用いて教えたことの根拠を示す。
ストップウォッチを前に映し、児童とともに時間を数える。このとき、「いーち」と数えず1が表示されたタイミングで「いち」と短く言うように注意する。ゲーム性を持たせることで、児童の集中力も持続させられると良い。
カウントしているときに、数と数には間隔(待ち時間)があることに気付かせる。
「皆で『いち』と言ってから『に』というまでにストップウォッチには何の数字が表示されていますか?」と1桁目の数を指さしながら質問すると、皆「いち」と答えることができるだろう。
2秒と3秒の間は2秒台、3秒と4秒の間は3秒台と順に確認をし、時間でも同じように、8時と9時の間は8時台として良いことに気付かせる。つまり、8時と9時の間にある時刻は8時半であると分かる。
4.演習
演習ではICTを用いた画像付き簡易計算ドリル(以下、「めくりドリル」と呼ぶ)を行うことが有効である。めくりドリルとは、問題カード(⇒解説カード)⇒答えカード⇒問題カード⇒……(以下繰り返し)となるように並べたICT上の計算ドリルのことである。
本授業実践では、画像を挿入することで時計をみて時刻を答えさせる問題と、指定された時刻に合う時計の針を答えさせる問題の両方を出題できる。時計の読み取りは日常生活の中でも瞬間的に答えが出せるようになる必要がある。そこで時間制限を設けためくりドリルの活用や読み取り競争を行い、はやさと正確さを意識させた授業展開が有効的だと考えられる。
めくりカード例1
めくりカード例2
「〇時半」が苦手な児童には、短針が指している箇所に色をつけて支援するなど、必要に応じて解説カードをうまく利用すると良い。
執筆者
まき先生
中学高校で数学を教えている。体系的に教えるためには算数から学びなおす必要があると感じ、算数の授業案についても学習をすすめている。
実践的かつつながりを意識した授業案の作成に努める。
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