「 わたしと小鳥とすずと」「夕日がせなかをおしてくる」(光村図書 3年上国語) ~詩の読み方も「みんなちがって みんないい」~

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目次

「わたしと小鳥とすずと」「夕日がせなかをおしてくる」について

「わたしと小鳥とすずと」は金子みすゞの詩である。金子みすゞの詩の中でも有名で、「みんなちがって みんないい。」のフレーズは先生でなくても耳にしたことがある人も多いだろうし、全校児童に見えるようにこの詩を掲示してある学校もあるだろう。

このフレーズは子どもたちにとってとてもしっくりくるフレーズである。

学校は多くの子どもたちが集まって学ぶ場所である。3年生になると学力にも差があらわれ、個性も今まで以上にはっきりしてくる。算数で習熟度別学習を取り入れるのも3年生が多い。この詩を学ぶことで「みんなちがって みんないいんだよ。」と、先生は丸ごと子どもたちを受け入れていることをしっかりと知らせてほしい。

「夕日がせなかをおしてくる」は、「さよなら」という言葉がなんども使われる。「さよなら」は別れの言葉だが、この詩の「さよなら」はとてもあたたかい。明日につながる「さよなら」だからである。

学校でこの詩を学ぶ場合、夕日は先生であるともいえる。先生は、そのような気持ちでこの詩を読んでほしい。

どちらの詩も曲がついて歌になっている。機会があれば音楽や学級活動の時間に聞くと、さらに学びが深まるだろう。

単元で身に付けたい資質・能力

本単元では、二つの詩を読み比べて味わい、気づいたことや考えたことを友だちと話し合う単元である。

本単元の学習を通し、文章全体の構成や内容の大体を意識しながら音読することができる能力、登場人物の気持ちの変化や性格、情景について、場面の移り変わりと結び付けて具体的に想像することができる資質を身につけさせる。

本単元では2つの詩を学習する。どちらも有名な詩であり多くの研究がされているが、詩の解釈を子どもに押しつけることなく、思ったことや感じたことを自由にのびのびと話し合わせる。そして「わたしと小鳥とすずと」に「みんなちがってみんないい」とあるように、詩の感じ方はそれぞれ違ってよいことを伝える。

単元の評価基準

【知識・技術】文章全体の構成や内容の大体を意識しながら音読している。

【思考・判断・表現】「読むこと」において、登場人物の気持ちの変化や性格、情景について、場面の移り変わりと結び付けて具体的に想像している。

【主体的に学習に取り組む態度】進んで文章全体の構成や内容の大体を意識しながら音読し、学習課題に沿って詩を読んで思ったことや感じたことを話し合おうとしている。

「わたしと小鳥とすずと」「夕日がせなかをおしてくる」2つの詩を比べて読む楽しさ

この単元では「わたしと小鳥とすずと」「夕日がせなかをおしてくる」の2つの詩を同時に学習する。どちらの詩も1連目と2連目が繰り返しで構成されておりリズム感もいい。詩で使われている言葉もわかりやすく、話しかけるような表現も使われている。子どもたちにとって親しみやすく、情景も想像しやすい詩である。

授業では詩の構成について説明したあと、子どもたちに2つのうちどちらの詩が好きかをたずね、なぜ好きかを話し合わせる。当然自分と違う意見が出てくるだろう。話し合うことで、友だちから自分が考えもつかなかった考え方が出てきたり、友だちの新たな一面を発見したりすることもあるだろう。二つの詩を丸ごと味わい、味わったことを比べ合う活動を楽しんで展開したい。

単元の展開【全2時】

第1時 2つの詩を音読する

2つの詩を音読する

詩の中の言葉のかたまりを「連」ということを教える。連の区切りは1行あいていることを教える。「わたしと小鳥とすずと」は3連からなる詩、「夕日がせなかをおしてくる」は2連からなる詩ということを確認する。どちらの詩も1連目と2連目は繰り返しであることも気づかせる。

2つの詩を連ごとに区切り、様子を思い浮かべながら音読する。

「わたしと小鳥とすずと」を読む

最後の行「みんなちがって みんないい」について話し合う。

どうして「わたし」は「みんなちがって、みんないい」と言っているのかを考え、話し合う。子どもから意見が出にくければ「『みんなおなじで みんないい』じゃだめなの? 」とたずねる。多くの子どもは驚き「ちがうから、いいんだよ。」と言うだろう。

「みんな同じ3年○組のお友だちでしょ。同じ組だよ。ちがう? 」とさらに問う。子どもたちは口々に異議を唱えるだろう。「ちがうよさ」について考える絶好の機会であるので子どもの言葉はなるべく黒板に書き、学級全体で目でも「ちがうよさ」を確認できるようにする。

「夕日がせなかをおしてくる」を読む

繰り返し出てくる「さよなら」に着目する。1連目と2連目の「さよなら」を言っているのは誰か、どうしてかを考え、話し合う。

どちらの詩が好きか、どうして好きかを考えさせる

どちらの詩が好きかを子どもたちにたずね、選ばせる。

選んだ詩を1人で音読し、音読を終えた子どもから詩の行の右側に感じたことを書き込む活動を行う。書き込み方は細かく指示せず、好きな言葉に○を付けたり好きな理由や感じたことなどを自由に書き込ませる。

書き込みは教科書やワークシートなど、実態に合わせて使いやすい方を選択する。タブレット端末は3年生にとって細かい字の書き込みには不向きであるため、鉛筆での手書きを推奨する。

第2時 友だちと自分の好きな詩について交流する

自分の好きな詩について交流し、友だちに好きなところが伝わるよう音読する。

なぜ、この部分が好きか、どうして好きかを交流させる。交流は最初から学級全体でさせたいが、実態に応じてグループやペアでさせた後に学級全体での交流としてもよい。

交流後、自分の好きなところが友だちに伝わるよう、工夫して音読する。

音読は、ただ元気に読むだけでなく「好きな気持ちがお友だちに伝わるように、工夫して音読しよう。」と呼びかける。元気な声で読むことがすべてよいのではない。特に好きなところをささやくような声で読んだり、強調して読んだり、子どもたちなりの工夫があらわれる。そのちがいをしっかりと認めてやる。

単元全体の流れを示した板書例

おわりに

筆者が「夕日がせなかをおしてくる」の授業をしたときのことである。

1連目の「『さよなら さよなら さよなら きみたち』は夕日の声。」いう意見が大半を占める中

「3つのさよならはぜんぶ夕日じゃないと思う。1回目は夕日、2回目はぼくたち、3回目は夕日。夕日とぼくはかわりばんこに言ったと思う。だからわたしはこの詩が好き。」

と発言した子どもがいた。子どもの自由な発想に感心した。詩の解釈は一つではない。作者の意図とずれたとしても、このような発想こそ大切にしたいと思った。

本単元の学習では、2つの詩を同時に味わえるよう教室には2つの詩を拡大して貼る。拡大した詩には、詩を読んで感じた子どもたちの言葉を書き込んでいく。書き込んである言葉を頼りに自分の考えを言語化できる子どももいるため、子どもたちの考えはできるだけ書き込み、学級全体で交流できるように工夫する。

詩をひとつずつ丁寧に学ぶことも大切だが、今回のように2つの詩を比べるやり方は子どもたちにとって「楽しい」学び方である。詩を丸ごと味わう経験を、たくさん積ませてやりたい。

参考URL:https://www.mitsumura-tosho.co.jp/kyokasho/s-kokugo/material2nen

(光村図書webサイト)

執筆者プロフィール

もりはな先生

元公立小学校教諭。「みんなで聴き合う・つながる授業」をモットーに、考えたくなる課題作りに取り組んできた。現在は、忙しい先生たちや子どもたちを応援するwebライターとして活動中。

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