本単元で身に付けたい資質・能力
本単元では、谷川俊太郎「生きる」を読んでまとめた意見や感想を共有し、自分の考えを広げる力を身に付ける。また、福岡伸一「人間は他の生物と何がちがうのか」を読んで理解したことに基づいて、自分の考えをまとめる力を養う。そして、「中学校へつなげよう」の書く活動を通し、目的や意図に応じて、感じたことや考えたことなどから書くことを選び、伝えたいことを明確にする力を高める。
単元の評価基準
知識・技能
- 比喩や反復などの表現の工夫に気づいている。
- 詩を朗読している。
思考・判断・表現
- 「書くこと」において、目的や意図に応じて、感じたことや考えたことなどから書くことを選び、伝えたいことを明確にしている。
- 「読むこと」において、文章を読んで理解したことに基づいて、自分の考えをまとめている。
- 「読むこと」において、詩を読んでまとめた意見や感想を共有し、自分の考えを広げている。
主体的に学習に取り組む態度
- 6年間の国語学習を積極的に振り返り、これまでの学習をいかして、詩を読んで感じたことを伝え合ったり、文章に対する自分の考えをまとめたりしようとしている。
単元の展開【全3次(4時間)】
第1次(1時)六年間で身に付いた言葉の力を書く
教材:「中学校へつなげよう」
① 小学校の国語で、どんなことを学習したか振り返る
(例)
- 二年生の「お手紙」で、読み方を工夫して音読劇をした
- 四年生のときの「ごんぎつね」で、ごんの気持ちを想像しながら読んだ
- 役割やテーマを決めて、みんなで話し合った
② 単元のテーマを確かめ、学習の見通しをもつ
教師:「この単元では、『生きる』と『言葉の力』をテーマに学習を進めていきます。今日は、これまでのことを振り返って、身に付いたと思う言葉の力を書きましょう。」
③ 身に付いた言葉の力を書く
教科書p. 250を参考にさせたり、印象的な国語の授業から考えさせたりする。
④ 書いたことを発表する
第2次(2~3時)「生きる」「人間は他の生物と何がちがうのか」を読み、自分の考えをもって朗読したり書いたりする
(2時間目)教材:谷川俊太郎「生きる」
① 自分にとって、「生きる」とは何かについて考える
教師:「みなさんにとって、『生きる』とはどんなことですか。」
- 食べること
- 遊ぶこと
- 動くこと
- 息をすること
- 楽しいこと など
② 詩を音読する
③ 詩の構造をとらえる
教師:「『生きる』は、五つのまとまりに分けることができます。それぞれのまとまりのテーマは何か、考えましょう。」
(テーマを見つけるためのポイント)
第一連:(例)日常
- 「のどがかわく」「くしゃみをすること」など、体験したことがあるかどうか
第二連:(例)自分の美意識や価値観
- 「ミニスカート」「プラネタリウム」「ヨハン・シュトラウス」「ピカソ」「アルプス」に共通点はあるかどうか
- 「すべての美しいものに出会うということ」の「美しいもの」とは何か
- 「かくされた悪を注意深くこばむこと」の「かくされた悪」とは何か

第三連:(例)感情
- 「泣く」「笑う」「怒る」に共通することは何か
- 何が「自由」なのか
第四連:(例)どこかで今起こっている何か
- 文章のはじめに「いま」がついている
- 自分でない何かについて書かれている
- 「遠くで」とあるように、自分のいる「ここ」で起こっていることでない

第五連:(例)当たり前なこと、本質
- 自分たちの「鳥は」「海は」「かたつむりは」を考えてみる

④ 好きなまとまりを選び、朗読する
教師:「詩を読んで、みなさんにとっての『生きる』は変わりましたか。同じですか。自分の考える『生きる』が伝わるように、詩を朗読しましょう。」
第一連から第四連までの中から好きなまとまりを選んで読み、第五連は全員で読むなど決めて、一斉に朗読する。
教師:「特に大事にしたい言葉や文章はどこですか。ポイントを押さえて、その部分の読み方を工夫してみましょう。」
(朗読表現のポイント例)
- 間の長さ(長い、短い)
- 読む速さ(はやい、おそい)
- 声の大きさ(大きい、小さい)
- 声の高さ(高い、低い)
- 声の強さ(強い、弱い)
(3時間目)教材:福岡伸一「人間は他の生物と何がちがうのか」
⑤ タイトルについて、思いついたことを話す
教師:「みなさんは、人間は他の生物と違うと思いますか。また、その違いは何だと思いますか。」
⑥ 教材を読む
⑦ タイトルに対する、筆者の主張を探す
教師:「まずは、筆者が、人間が他の生物とちがうと考える特性を探しましょう。」
問:人間は他の生物と何がちがうのか。
答:種の保存よりも、個体の命を最重要に考えているところ。
教師:「筆者は、人間だけがこのような考え方に達することができた理由を何だと言っていますか。」
理由:進化の過程で、人間だけが言葉を発明できたから。
教師:「筆者が伝えたかったことは何でしょうか。」
主張:人間と他の生物とのちがいの根源は、言葉である。言葉の力を磨き、言葉で世界を解き明かしていってほしい。
⑧ 自分の考えを書き、発表する
教師:「みなさんは、筆者の主張や『言葉の力』に対してどう考えましたか。」
(例)
- 言葉があるから、楽しいことや悲しいことを伝え合えるのだと気づいた
- いろいろな不思議がたくさんあって、それらを言葉で表すから『分かる』になるんだ
- もっと言葉の力を身に付けたい など
第3次(4時)身に付いた言葉の力を、これからどんなときに活かしたいか書く
教材:「中学校へつなげよう」
① 単元を振り返る
教師:「この単元では、『生きる』と『言葉の力』をテーマに学んできました。」
1時間目:これまでのことを振り返り、身に付いた言葉の力を書いた
2時間目:生きることについて考え、『生きる』の朗読をした
3時間目:言葉の力に対する筆者の考えを読み、それに対して自分はどう考えるのかを書いた
教師:「今日は、身に付けた言葉の力を、これからどのように活かしていきたいか考えましょう。」
② 言葉の力をこれからどう活かしていくか、文章にする
(補助プリント例)

(文章例)
- 伝えたいことと、そう思った理由を簡潔に話せるようになりました。みんなの前で発言するときに、もっと自分の意見を分かってもらえるようにしたいです。
- 登場人物の心情の変化に気をつけながら、物語を読めるようになりました。これからも、たくさん読むことを楽しみたいです。
- 自分と他の人の考えを比べて、自分の考えを広げられるようになりました。これからも、みんなで話し合いをするときに活かしたいです。 など
③ 自分の考えを発表する
おわりに
本授業は、小学校の6年間でどれくらい成長したのかという児童の自己成長の自覚を目的に組み立てた。自身の成長を知るためには、「こんな力が身に付いた」という既習事項の振り返りと、作品のメッセージや友だちの発言をきっかけに変容していく自己の自覚が必要である。前者では、自分と向き合う「書く」という活動を、後者では、作品や友だちと対話する「読む」「話す」という活動をメインに、教師はそれらを織り交ぜながら児童らの考えをより深める指導をしてほしい。
参考・引用図書
光村図書『こくご 六下』
参考・引用URL
参考:光村図書「年間指導計画・評価計画資料」(2025年3月6日)
https://assets.mitsumura-tosho.co.jp/2017/1031/3959/06s_k_nenkei6_03.pdf
執筆者
MUKOせんせい
元小学校教諭としての経験を活かし、中学・高校でも講師として教壇に立つこと多数。現在は、子育てに奮闘しながら、現場で働く先生方をサポートするウェブライターとして活動中。
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