【著書紹介】『先生を続けるための「演じる」仕事術』(松下隼司先生)

0

本記事は、2025年8月に発売された

『先生を演じるための『演じる』仕事術』(かもがわ出版)

(リンクはこちら:https://www.kamogawa.co.jp/kensaku/syoseki/sa/1380.html

を基に、著者である松下隼司先生へのインタビュー内容を編集・記事化したものです。(取材日:2025年10月31日)

目次

書籍紹介

本書では、著者が20年以上の教員生活と演劇経験の中で得た「演じる仕事術」を5つの章にわたって紹介しています。

子ども・保護者・同僚との関係や、怒りのコントロール法など日々の実践にすぐに活かせるような具体的な方法がまとめられています。

一番しんどいのは、実は「同僚との関係」

子どもや親御さんとの関係でも辛い思いがありましたが、実は同僚からのパワハラが一番しんどかったです。

怒鳴ったり机を叩いたり、自分も被害を受けましたし、泣いている先生を見ても止められなかった自分に無力感を抱きました。

個人でパワハラに歯向かうことは絶対にできないため、組織として団結して乗り越えることが大切です。

中でも、現在の勤務校の「パワハラ・セクハラチェック表」を印刷機前に掲示する取り組みが効果的だと感じています。一番人が立ち止まって、印刷待ちの時間などに自然と目に入るため、意識啓発に効き目があると思いました。

個人でできる備えとしては、録音を取る、専門の保険に加入するなどがあります。

子どもたちとの接し方が変わったきっかけ

かつて自分の感情が抑えきれず子どもに強く怒鳴ってしまい、翌日その子が学校を休んでしまったことがありました。そのことを「自分のせいだ」と感じ、後日泣きながら謝罪をしました。

そこから、アンガーマネジメントを本格的に学びました。ところが、「怒ってはいけない」という意識が強くなりすぎてしまい、どれだけ子どもが悪いことをしても落ち着いて諭すだけになってしまいました。

しかし、そのやり方は長続きしませんでした。

まず、怒りを抑え続けるので、自分がしんどくなりました。そして、子どもにも改善が見られず、むしろ好き放題するようになりました。

さらに、今まできちんとしていた子どもたちまで、私から離れていきました。

「なんで松下先生、あの子をちゃんと叱ってくれへんの?悪いことしてるのに」と子どもたちに言われたことで、この方法は間違っていて、叱るべきことはきちんと伝えないといけないと気づきました。

一方で、ガツンと叱る方法にも配慮が必要です。

クラスには30人ほどの子どもがいるため、叱られている子だけでなく、周りの子どもへの配慮も必要です。

そこで、私は「演じる」という意識を取り入れました。

「常に誰かに見られている」という意識で、叱りながらも周りの関係ない子たちのことまで考えた演出をするようになりました。

例えば、立ち位置を意識して、周りの子どもに、叱ってる私の表情が見えないようにしています。また、距離感も工夫して、近い距離で叱ることで声を大きく荒らげることも防いでいます。

このような、伝えるべきことを伝えつつ、周りの子どもたちを傷つけない演出を考えて実行するようになりました。

仕事をうまく断る演じ方

仕事を断る時には演じることが必要です。

まず、色々な仕事を頼まれることは悪いことではなく、むしろ相手が「この先生ならできる」「経験もあるし、見通しも立っている」と信頼してくれているからこそ、お願いされるのです。

反対に、できない人・受けてくれない人には誰もお願いしません。ピアノが弾けない人にピアノの伴奏を頼まないことと同じです。

昔、まだ頼まれることの意味をまだ分かっていなかった時に、「え。なんでなんですか?無理です。」と頼みを断ってしまい、信頼を失ってしまったことがありました。

そこで、仕事を頼まれることは信頼の証であり、断り方にも演じる技術が必要だと気づきました。

例えば、研究授業は、指導案の添削では細かいところまで突っ込まれたり、授業後の指導では「ああすればよかった・こうすればよかった」と言われて傷ついたり、プレッシャーで子どもにもイライラしたりと負担が多く、断りづらい仕事です。

そこで、お願いされる前に「ぜひ勉強したいため、先輩の研究授業を見せていただけませんか?」と自分から動くことが大切です。さらに、本でも書いたように「先輩」という言葉を使うこともポイントです。また、密室だと「いやいや、あなたもやってみたら?おすすめだよ」と押し切られてしまうため、職員室で言うことも重要です。周りの目があることで、変な無理強いをされることもありません。

責任を持って仕事を引き受けることはもちろん大事なことではありますが、無理をして何でもかんでも仕事を引き受けていては、自分の本当にやりたいことに取り組めなかったり、心身ともに余裕を失ったりするなど、悪い循環に陥る可能性があります。したがって、状況に応じてこのような断る技術を身につけておくことも、教師として働いていく上で必要だと考えます。

「職を演じる」ことの難しさ

先生を「演じる」ためには、まず理想の姿を持つことが必要です。そこでロールモデルの選び方について少しお話します。

年齢、地域、性格など自分の特性と全く異なる人に憧れて、その人に近づこうと演じることは難しいと思います。

そこで、おすすめなのは学校の中でロールモデルを作ることです。

セミナーなどでは良いところしか見えないため、身近な人を憧れの先生にすることで、廊下で通りかかる際などに正直な指導を見ることができます。

また、几帳面なタイプや大らかなタイプ、少し変わったタイプなど、自分と相手の特性を把握した上で憧れることが理想像に近づく上で重要だと思います。

また、憧れの先生を複数人作っておくことも重要です。

もしそのうちの一人が自分に合わなくても他の人を見ることで補えますし、様々な先生の良いところを吸収することができます。

例えば、私は学校の先生だけでなく、テレビ番組で「オフロスキー」として活躍している小林健作さんにも憧れています。小林さんは私より一回りほど年上の方ですが、年齢を感じさせないほど若々しく、楽しそうに演じる姿がとても魅力的です。授業の場面でも、小林さんのように、年齢に縛られず、楽しみながら演じる教師でありたいと思います。

先生方へのメッセージ

うまく話せない、他の先生のように明るく振る舞えないといったことから、「自分は先生には向いていないのではないか」と感じてしまう先生方にこそ、この本を手に取っていただきたいです。

「演じる仕事術」という言葉を知るだけでも、心が少し軽くなるはずです。

真面目な先生ほど「演じるなんて教師として矛盾している」「本気で向き合っていない」と感じてしまうかもしれません。しかし、学校では、演じなければ続けられないほどの業務量や心が傷つく場面が存在します。

演じることで、自分の気持ちに余裕が生まれ、オンとオフの切り替えができ、傷ついたことを引きずらないようになります。

「先生に向いていない」と悩んでいる方にこそ、「演じる仕事術」を知っていただきたいです。

編集後記

今回の取材を通して、子どもたちが安心感を持って過ごせる教室環境を作るためには、教師が意識的に「演じる」ことが不可欠であると学びました。特に、話している子どもや怒っている子どもだけでなく、その周囲の子どもや教室全体にも配慮した演出によって、全員が心地よさを感じる教室作りをするという工夫に深く感銘を受けました。教師として長年子どもと接した松下先生だからこそお気付きになる点が多く、現場の声を追う取材を今後も行いたいと改めて思いました。

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 南さくら)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次